第7話 環境
(それなら次は、環境の違いを作る所からか。……それこそ神の出番では?)
「おーい、ノムス〜」
『んんん、ハジメくんから呼び掛けられるのは初めてだね。何かあったかい?』
声は出ないけれど、心の中で呼び掛けようと念じれば届いたようで、ノムスの声が返ってきた。
「地上の草の種類が増えないんだ。これって環境適応がもともと最適だからだろ?なら、環境を変えてみてやれば良いんじゃないかって思うんだけど、ノムスはできる?」
『……きみ、私を誰だと思ってるの?創造神ノムスだよ?』
「でも、生き物作るのは挫折したじゃん」
『うぐっ、まあ、そうなんだけど…』
苦虫でも噛んだかのような声が聞こえたけれど、俺は気にせずに続けた。
「地形の変化で良いんだよ。山があって、谷があって。そこから海まで流れる川があれば。途中に池や湖を作るのでも良いな。そうすれば、高山、川辺、湿地帯——いろんな環境に適応した植物が増えるだろ?」
『……なるほど。同じ環境ばかりなのも良くないんだね』
地形を変える方が生物を作るより楽だ、とか神様っぽい事を言って、ノムスの声が止む。
しばらく待つと、ゴゴゴゴゴ…と音を立てて遠くの地面が隆起し、その間から蛇行した川が流れて海へとやってくる。その途中には、大きな湖ができていた。
「おおおお!神様っぽい!!」
『いや、最初から神様だからね?私』
ひゅるり。
流れる風の向きが変わった。
今までは一定の方向に、一定の強さの風が吹いていたのが、山という障害物ができた事により動きが変わる。
山に当たって上昇気流となった風が、雲を引き寄せ、やがてぱらぱらと小さな雨粒を落とし始めた。
(おお……“天気”ができた……!)
今までの空は、ただの青い背景だった。
日が差し、風が吹く。海面から上がった水蒸気を集めたノムスが手動で雨を降らせていたが、それも均一すぎて生態系の変化には繋がらなかった。
だけど、元からあった海に、山や川、風が合わさればそれぞれ違う“気候”が生まれる。
川辺は湿度が高く、山の裏側には雨が少なく、湖の周囲は水分豊富な土壌になる。
「ありがとう、ノムス。これで植物たちにも“差”ができる」
『良かった。でもそっか、地形を変えるだけで、わざわざ手動で雨を降らさなくても良くなるんだね』
感嘆の声が俺の耳をくすぐる。
これからそれぞれの環境に適応した植物たちが、その場その場で繁殖していくだろう。
(まだ熱帯や寒冷地なんかの差は無い。それでも充分な変化だ)
『どうする?火山とかも作れるけど、作っちゃう?』
「あー、それも作れるのか…。じゃあ一緒に考えられる時に考えちまおうぜ!」
『ああ!どんな世界になるか、楽しみだよ!』
俺は知らない。
海と陸の差くらいで平らだった世界地図を広げていたノムスが、山を、川を、湖を。そして火山や氷雪地帯を作ることで、立体的になっていく世界地図に興奮して目を輝かせている、なんて事を。
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