第20話 永遠の誓いと魔法の終焉-1

就職の内定を得てからというもの、葉山悠斗の頭の中は、葵へのプロポーズのことでいっぱいだった。どこで、どんな言葉で伝えれば、彼女は最高の笑顔を見せてくれるだろうか。レストランを予約するのか、それとも二人にとって思い出の場所が良いのか。どんな指輪を選べば、葵は喜んでくれるだろう。あれこれ想像するだけで、胸の高鳴りが抑えきれない。この人生の一大イベントを前に、期待と同時に、大きな緊張も生まれていた。


そんな悠斗の決意を、夜の夢はさらに強く後押しした。彼は夢の中で、葵との結婚後の夫婦生活を、まるで現実のように体験していたのだ。穏やかな休日の朝。温かい日差しが差し込む寝室で、悠斗は目を覚ます。隣には、柔らかな髪を枕に広げ、安らかな寝息を立てる葵がいた。その寝顔は、高校の図書室で眺めていた彼女と寸分違わないほど、悠斗の心を満たした。そっと腕を伸ばし、彼女を抱き寄せる。目覚めると、二人で他愛もない会話を交わしながら、簡単な朝食を準備し、食卓を囲む。トーストが焼ける香ばしい匂い、コーヒーの苦み、そして葵の淹れてくれる紅茶の甘い香り。そのすべてが、悠斗の五感を満たした。


休日は、二人で家事をしたり、共同で料理を作ったりする。一緒に洗濯物を畳んだり、掃除機をかけたりするささやかな共同生活。葵が、料理中に彼の背中にそっと体重を預けてくる。その温もりが、悠斗の心を深く癒した。ソファで寄り添いながら映画を見たり、近くの公園を散歩したりする。手を繋ぎ、肩を並べて歩く。そのすべてが、幸福に満ちた日常だった。疲れて帰ってきた悠斗のネクタイを、葵が優しく緩めてくれる。仕事の愚痴を聞いてくれる彼女の存在は、何よりも悠斗の心を軽くした。時には、悠斗が葵の好きなデザートを買って帰ると、彼女は子供のように無邪気な笑顔を見せる。その笑顔を見るたびに、悠斗の心は温かいもので満たされた。


夢の片隅で、ふと、幼い笑い声が聞こえることがあった。あるいは、小さな足跡が床に残されているのを見つける。それは、決してはっきりとした像を結ばないけれど、将来への確かな希望を、悠斗の胸に深く抱かせた。この夢は、悠斗にとって「未来予知的な将来の関係の暗示」だった。現実での結婚への決意が、この夢によって、揺るぎない確固たるものになっていくのを感じた。


しかし、夢の中の幸福感が大きくなるにつれて、悠斗の胸には、拭い切れない不安も芽生え始めていた。「いつまでこの夢が共有できるのだろうか」。そんな漠然とした葛藤が、彼の心を支配し始めた。水晶のお守りの力は、いつか役目を終えてしまうのではないか。あるいは、この夢の共有が、ある日突然、終わってしまうのではないか。夢の中で葵と築き上げた完璧な幸福が大きければ大きいほど、現実でのまだ満たされない部分とのギャップが、この不安を増幅させた。夢の存在は、悠斗にとって、切なく、儚いものとして意識され始めた。この特別な時間が、いつまでも続くわけではないことを、悠斗は心の奥底で予感していた。もしこの夢がなくなったら、現実の自分たちはどうなるのだろうか。その根源的な問いが、悠斗の胸に重くのしかかった。


毎朝、目覚めると、枕は汗でじっとりと湿っていた。


肌にはいつも薄っすらと寝汗が滲み、時には股間が濡れて、下着が夢精による粘り気のある熱を帯びた液体で汚れている。心臓は朝から激しく脈打ち、しばらく動悸が治まらなかった。サッカー部で鍛えられたはずの自分の体は、かつてないほどの性的興奮によって体液が分泌されたような痕跡も残していた。


夢のリアリティと現実の乖離に戸惑いながらも、悠斗は、葵との未来を強く信じていた。夢の中の彼女の存在が、現実の彼の生活を、そして精神を、確かな形で支えている。それが、この不思議な夢の力なのだと、悠斗は確信していた。


そして、プロポーズの日は来た。


夜景の見える、少し高台にあるレストランを予約した。テーブルには、きらめくキャンドルが灯り、窓の外には宝石を散りばめたような街の灯りが広がっていた。悠斗の心臓は、これまでのどんなサッカーの試合よりも激しく高鳴っていた。食事が終わり、デザートが運ばれてきたタイミングで、悠斗は意を決して、膝をついた。


「葵。高校生の時、君が図書室で倒れたあの日から、君は俺の夢の中に現れた。そして、俺は夢の中で、君と恋に落ちた。君の優しさも、強さも、そして誰にも見せない甘い一面も、すべて夢の中で知った。現実の君との恋は、遠回りだったかもしれない。でも、夢の中で君と築いた絆は、俺にとってかけがえのないものだ。この人生を、君と生きていきたい。佐倉葵さん、俺と、結婚してください」


悠斗の声は、震えていた。ポケットから取り出した指輪の箱を、そっと開く。

葵の瞳は大きく見開かれ、次の瞬間、瞳いっぱいに涙が溢れ出した。彼女は、何も言わずに、ただ頷いた。その顔は、喜びと感動で、まるで夜景よりも輝いていた。悠斗は、震える手で指輪を葵の左手の薬指にはめた。指輪が、彼女の細い指に吸い込まれるように収まる。


葵は、涙で濡れた瞳で悠斗をまっすぐに見つめた。そして、小さく息を吸い込むと、悠斗の瞳から決して目を逸らさずに、静かに、しかし確かな決意を込めて言った。


「悠斗くん……」


言葉は、それ以上続かなかった。葵は、悠斗の顔に両手を伸ばし、自らの唇を、彼の唇へと重ねた。それは、プロポーズへの返答であり、そして、現実世界での初めての、そして真の結合への、無言の誓いだった。その熱いキスの後、葵は、悠斗の腕を強く掴むと、彼を導くように、二人が今日のために用意したプライベートな空間へと誘った。


部屋の明かりは落とされ、窓から差し込む月の光が、二人の体を優しく包む。悠斗は、葵の瞳に、深い愛情と、すべてを委ねようとする強い意志が宿っているのを見た。彼女の震える手で、悠斗のシャツのボタンが一つ、また一つと外されていく。肌に触れる空気がひんやりと感じられ、背筋に甘い悪寒が走る。ブラウスがはだけ、その下から淡いピンクのブラジャーが露わになる。悠斗の視線が、葵の胸元に吸い寄せられた。彼の掌が、ブラジャーの薄い布越しに葵の胸を包み込んだ瞬間、熱い電流が体中を駆け巡った。それは、夢の中で幾度となく体験した甘い痺れと、自分でも戸惑うほどの激しい衝動が混じり合った感覚だった。乳輪のあたりが微かに粟立ち、乳首がピンと硬く張っていくのが分かった。解放された胸がふわりと揺れ、悠斗の視線を釘付けにした。それは、完璧な解放と、究極の無防備さの現れだった。彼の唇が、硬く盛り上がった乳首を優しく含んだ時 、葵の体は全身の力が抜け、ただ甘い吐息を漏らした。吸い上げられるような刺激が、体の奥底から波のような快感を呼び起こす 。悠斗の温かい手が、葵のスカートの裾から忍び込み、太ももの内側をゆっくりと撫でる。その繊細な触れ方は、まるで体の奥底にある神経を直接刺激するかのようだった。肌はじんわりと熱を帯び、汗がにじむ。それは、葵の体が彼を求めている、正直な反応だった。彼の手が、下着の縁をなぞるように鼠径部のくぼみに触れた時、葵の体がビクリと震え、呼吸が浅くなった。それは、根源的な部分に触れられたような、抗いがたい羞恥と、そこから始まる快感への期待が混じり合ったものだった。


悠斗は、そっと葵のショーツに手をかけた。淡いピンクのコットンのシンプルなレギュラーショーツ は、葵のヒップを優しく包み込んでいた。触れると、コットンのさらりとした感触が指に心地よかった。彼の指がショーツの脇の紐に触れる。それが外された時、肌に直接触れる布の少なさ が、葵を甘く震わせた。


全ての衣服が取り払われ、二人は月の光の下、互いの裸体を晒し合った。葵の瞳には、羞恥よりも、悠斗への深い信頼と、すべてを委ねようとする強い意志が宿っていた。夢の中で幾度となく重ねた肌の記憶が、今、現実の五感を通して悠斗の全身に押し寄せる。現実ならではの生々しい熱と、確かな重み、そして触れ合う肌の感触は、夢を遥かに超える感動と充足感をもたらした。悠斗の体が、葵の体の上に優しく、しかし確かな重みで覆いかぶさる。視線が絡み合い、互いの吐息が混じり合う。その密着感は、心と体が同時に溶け合うような、深い一体感 をもたらした。


彼の熱い先端が、潤んだ柔らかな入口にそっと触れた瞬間 、葵の体は微かに震え、呼吸が浅くなった。それは甘い痛みと、新しい世界が開かれるような、抗いがたい予感 が混じり合う感覚だった。悠斗は、ゆっくりと、しかし確実に、その秘められた奥へと進んでいく。一瞬、奥でわずかな抵抗 を感じると同時に、甘い痛み が走り、葵の体はびくりと震えた。それは、新しい世界への扉が開かれた ような感覚だった。彼のものがその障壁を越えた瞬間 、葵の呼吸が詰まり、全身の毛穴が広がるような、内側からの解放感に襲われた。体の奥から温かいものが溢れ出し、内側がじんわりと彼を受け入れていく。


完全に一つになった瞬間、葵の心に深い安堵と、この上ない充足感 が広がった。彼のものがゆっくりと、しかし確かにその奥深くへと収まった時 、葵の内側が、熱く、吸い付くように彼を包み込んだ。二人の間にあった境界線が曖昧になり、世界から音が消え失せた ような、究極の一体感 に満たされた。夢の中の体験が、現実という五感を通して昇華していく。


悠斗の腰がゆっくりと、しかし確実に奥深くへと動き始めるたび 、葵の内側は甘く、粘り気のある潤いで満たされ、吸い付くように彼のものを包み込んだ。その摩擦と密着感 が、葵の思考を奪い去り、ただ快感に溺れさせていく ようだった。快感の波が嵐のように押し寄せ、葵の体は激しく震え、背筋が弓なりに反った。手足の指先がピクリと痙攣し、喉の奥から絞り出すような甘い呻き声が漏れ続けた。もう、理性の全てが吹き飛んだ。そこには、ただ純粋な快楽と、究極の解放 だけがあった。魂まで揺さぶられるような、絶対的な幸福が全身を駆け巡った。悠斗の腰が激しく打ち付けるたび 、葵の体は小刻みに痙攣し、深い吐息が何度も漏れた。内臓が持ち上がるような激しい快感 が全身を貫き、瞳は半ば閉じられ、顔は陶酔に歪む。全てが弾け飛ぶような、意識を失いそうなほどの甘美な瞬間 が訪れた。そして、悠斗の熱い解放の波が押し寄せ、彼の全てが葵の中に注ぎ込まれる。温かく、生命の息吹を宿したものが、葵の体内にゆっくりと広がっていく感覚。それは、二人が完全に一つになった、深く、静かな誓い のようだった。快楽の奔流が引いていくと、二人の体は汗ばみながらもぴったりと寄り添い、静寂に包まれた。悠斗は、葵の胸に顔を埋め、深い充足感と、そしてこの温もりが永遠に続いてほしいという願い を、心の中で繰り返した。

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