第21話 永遠の誓いと魔法の終焉-2
目覚めると、全身に満ち足りた充足感と、昨日までの緊張から解放されたような幸福感が広がっていた。隣で穏やかな寝息を立てる悠斗くんの顔を見つめ、私はそっとその頬に触れた。昨晩の出来事──彼の真剣なプロポーズと、それに続く私たちの初めての結合が、まるで夢のように甘く、しかし確かに私の体に刻まれている。痛みと快感が混じり合ったあの時間は、最終的に私を深い甘美へと導いた。彼の腕の中で迎える朝は、何よりも温かく、満ち足りていた。
自分の体は、もう以前とは違う。そう、直感的に感じた。それは、処女喪失がもたらす物理的な変化だけではなかった。夢の中で幾度となく体験してきた甘美な感覚が、現実の五感を通して昇華されたことで、私は新たな自分になったような、深い自己認識の変化を感じていた。夢と現実が完全に統合された。
悠斗くんと二人で、それぞれの両親に結婚の報告をした。両家からは、温かい祝福の言葉が贈られた。特に、母は涙を流しながら「葵が、本当に自分の意思で選んだ道なら、お母さんは嬉しいわ」と、優しく私の手を握り締めてくれた。あの時の言葉が、改めて私の背中を押してくれた。私たちは、結婚指輪を選びに行った。悠斗くんが選んでくれた指輪は、シンプルながらも光を宿し、私の指に吸い込まれるように収まった。結婚式場の下見、新居探し。具体的な結婚準備が始まるたびに、悠斗くんとの未来が、より鮮明に、そして現実味を帯びていく。彼と手を取り合い、一つ一つの準備を進める共同作業は、私たち二人の絆をさらに深くしていった。現実に夫婦としての自覚が芽生え始めた。
そんな結婚準備を進める中で、私の夜の夢は、以前とは違う、新たな変化を見せ始めた。
夢の中の悠斗くんとの関係は、これまでの激しい官能的なものではなく、穏やかで、静かなものへと変化していくことを感じ始めたのだ。以前は毎晩のように訪れていた肉体的な結合は、頻度が減り、その強烈さも薄れていくような暗示的な描写がされる。それはまるで、夢の中での情熱が、現実の私たちの愛へと完全に移行したかのようだった。
夢の共有が終わりを迎えようとしていることへの、漠然とした予感が私を襲った。夢の中の悠斗くんは、以前と同じように優しいけれど、どこか遠い。彼の表情や、私への触れ方も、以前のような狂おしいほどの情熱よりも、静かな慈しみに満ちているように感じられた。その変化に対する、僅かな寂しさや、物足りなさを感じた。それは決して不満ではない。ただ、私にとっての秘密の救いであり、現実では得られなかった甘美な体験を与えてくれた夢が、終わりを告げようとしていることへの、名残惜しさだった。
それでも、私はその変化を受け入れることができた。なぜなら、現実の悠斗くんとの関係が、今、最高の充足感で満たされているからだ。彼と現実で深く結ばれたことで、夢が果たしていた役割は、もう必要なくなっているのだ。そう、直感的に理解した。夢の変化は、現実の幸福が満たされていることの証であり、私たちが新たなステージへと移行している証なのだ。
毎朝、目覚めると、枕は以前ほど汗でじっとりとは湿っていなかった。肌にじんわりと滲み出す汗も、ショーツの股間を濡らす甘い蜜のような痕跡も、以前よりは顕著ではなくなっていた。心臓の激しい脈打ちや、しばらく収まらなかった動悸も、穏やかになっていく。夢の痕跡が薄れていく中で、私は、現実の悠斗くんとの絆が、何よりも確かなものとして存在することへの揺るぎない確信を得ていた。
夢の役割は、私たちを繋ぎ、育むことだったのだ。それが終わろうとしているのは、私たちが、もう夢の力に頼らずとも、現実世界で愛し合えるようになった証なのだ。そう思うと、寂しさの奥から、温かい感謝の気持ちが湧き上がってきた。悠斗くんとの結婚は、夢が現実になった、最高の物語の始まりなのだ。
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