第2話 8-2

「ワッハッハー!」

 小さい女の子が道を走り回っている。

「ギャアアアアアアー!」

 そして女の子はこけた。

「痛い! うえ~ん!」

 その場で女の子は泣き出す。


「大丈夫? ニコッ!」


 そこに皇女様が現れ優しい笑顔で女の子に手を差し伸べる。

「ありがとう!」

 起こしてもらった女の子は俺を言って去っていく。

「気をつけるんだよ。バイバイ!」

 女の子は笑顔で走り去っていく。

「さすが皇女様ね!」

「動画をネットに投稿しなきゃ!」

 その光景を見ていた一般大衆は微笑ましい光景に感動した。

「みなさんも気をつけましょうね。アハッ!」

 皇女様は何事も無かった様に涼しい顔で去っていく。


「うるさいぞ! クソガキ! 親は何をやっているんだ! 他人の迷惑だろうが! しっかり教育しろよ! それとも育児放棄か!? スマホで撮影している暇があったらおまえらが助けろよ! この下民どもが!」


 これが誰にも聞こえない皇女様の本音である。


キキキキキキー!


 その時、車が赤信号を無視する女の子に突進する。

「危ない!」

 駆けつけた皇女様は身を投げ出し女の子の抱きしめる。


ドカーン!


 しかし逃げれずに皇女様は車に跳ね飛ばされる。

「・・・・・・!?」

「皇女様が車に引かれたぞ!?」

 さすがの惨劇に現場は静かに凍り付く。

「うえ~ん! うえ~ん!」

 その時、皇女様が助けた女の子が泣き声が聞こえた。

「生きてるぞ! 女の子は無事だ!」

「皇女様が命と引き換えに女の子を助けたんだ!」

 皇女様の命がけの救出劇に女の子は助かった。

「こらー! 勝手に私を殺すな!」

 なぜか車に引かれたはずの皇女様も生きていた。

「大丈夫?」

「ありがとう! 皇女様!」

「もう走り回ってはダメよ。」

「はい! 皇女様! 私は他人に迷惑をかけることはしません!」

 自分勝手な女の子に命がけの皇女様の思いが通じ改心させた。

「奇跡だ! 良かった! 皇女様が生きているぞ!」

「皇女! 皇女! 皇女!」

 周囲は奇跡を見て感動している人々の皇女コールに包まれた。

「どうも! どうも! 困っている人は私が助けます! なぜなら私は日本国の皇女なのだから! オッホッホー!」

 民衆の歓声に笑顔で手を振り応える皇女様であった。


「ヤバかった! あの世が見えたぞ! 困っている人を見つけると自動で発動してしまう人助けの皇女スキル! マジで呪われているんじゃないか!? もしも私が女魔王で不死身でなければ今頃は死んでいた! ああ~! こういう時に魔王に憑かれていて良かったわ! アハッ!」


 皇女様は特殊体質だった。

「皇女様! 万歳! 万歳! 万々歳!」

 民衆は女の子を助けた皇女様の行動を褒めたたえた。

「これで私の支持率はアップ間違いなし! 私の皇位は安泰なのだ! おまえたちの治めた税金でクリームソーダを食べまくってやる! ワッハッハー!」

 こうして皇女様の心とは裏腹に国民の支持率が高いのであった。

「・・・・・・でも、あれだな。毎回、日常始まりだと、私が人助けのために恐ろしく危険なことをやらされるのよね? 今回は車に引かれたぐらいで助かったけど、次回は何をやらされるんだか!? 命がいくつあっても足らない!? ああ~くわばら、くわばら。」

 最後は皇女様でも神頼みしかなかった。

「誰か私にも優しくして欲しいな~。」

 助けを求める皇女様の心の声であった。 


「ということで、私も楽をさせてもらおう!」

 皇女様は知っている。

「私が中心の物語を作らなければいいのだ。アハッ!」

 自分は冒頭と中休みと最後に登場するだけにすれば上手くサボれると。

「ヤマ! ヤマはいるか!」

「はい。皇女様。」

 皇女様の執事の山本ヤマである。

「私はきんつばが食べたい! 皇女通販で売れる最高級のきんつばを仕入れてこい!」

「かしこまりました。」

 こうしてミッションは開始された。


「きんつば!?」

 ここは皇居の地下のPSS本部。PSSは皇女・シークレット・サービスの略である。

「黄金の口から吐いたものですか!? 魔王様、汚い~!」

 皇女様が皇女様なら、護衛も護衛で主に似て同レベルであった。

「違う! きんつばは和菓子だ!」

 ちなみにPSSの隊長は執事のヤマが務めている。

「和菓子? 魔王様は前回のずんだ餅で味をしめたんだな。」

「なら安心だな。オチも決まっているし。アハッ!」

「俺はテスト編の方が好きだな。」

 優秀な隊員、呑気な隊員もいた。

「ふざけるなー!」

 PSSの隊員がふざけているので、隊長も兼任しているヤマの怒りが爆発する。

「直ぐにきんつばを調べろ!」

「アイアイサー!」

 隊員総動員できんつばを調べまくる。

「ありました! きんつばは江戸時代初期に誕生したものです!」

「名前の由来は刀の鍔を模した丸いお菓子と言われています!」

「当初は銀鍔と言われていたみたいだが、金の方が縁起がいいと改名疑惑があり!」

「発祥は京都です!」

 意外にもPSSの隊員たちは優秀だった。

「いや。ただスマホで検索しただけだし。」

 そして冷静な隊員もいた。

「いくぞ! 京都だ! 魔王様のために命をかけろ!」

「おお!」

 PSSの隊員たちは京都に向かった。

「・・・・・・。だから今の時代ネットで注文すれば簡単に届くじゃん。それに京都まで行かなくても、きんつば屋さんは東京の近くにたくさんあるし。」

 冷静な隊員はネット通販の注文ボタンをポチっと押して注文を確定させた。

「もう、こんな職場は嫌だな~。悪魔って転職できるのかな?」

 ちなみにPSSの隊員は悪魔である。


「やって来ました! 京都!」

 PSSの隊員たちは京都に辿り着いた。


ピキーン!


「なんだ!? この禍々しい気は!? 東京よりも空気が重いぞ!?」

 昔は京都の方が都だったので、権力争いや裏切り、妬み、嫉妬が渦巻いており、怨念や魑魅魍魎が染みついている。

「いるな! 邪神が!」

「なんですと!?」

 隊員たちは京都の瘴気漂う雰囲気に邪神がいることを確信した。

「ギャアアアアアアー!」

 その時、一人の隊員が何かを見つけ悲鳴を上げた。

「どうした!?」

「あ、あ、あれを見てください!?」

 悲鳴を上げた隊員が山を指さす。

「山に大の文字が!? あれは紋章だ!?」

「紋章!?」

「邪神を封印している紋章に違ない!」

「では、あの山に邪神が眠っているのですか!?」

 遂にPSS隊員たちは邪神が封印されている場所を突き止めた。

「ギャアアアアアアー!」

 その時、また隊員が何かを見つけた。

「今度はなんだ!?」

「他の山にも紋章があります!?」

「なんだと!?」

「全部で紋章は5つある模様です!?」

 京都は市街地を山に覆われていた。

「なんて強力な邪神を封印しているんだ!? 恐るべし! 京都!」

「まだ死にたくないよ!?」

 隊員たちは自分たちが危険な所に足を踏み入れてしまったと気づいてしまった。

「隊長!? 邪神復活の儀式がある模様です!?」

 隊員はスマホで検索してみた。

「なに!? 本当か!? ご、五山送り火だと!?」

 毎年恒例の京都の夏の風物詩だがPSSの隊員たちは知る由もなかった。

「いったい京都で何が起ころうとしているんだ!? 現地の住民に聞き込みをするんだ!」

「おお!」

 分からないので京都民に尋ねてみた。

「おばあさん。五山の送り火ってたんですか?」

「夏のお祭りだよ。山に火をつけてお祈りするんだよ。あんたたち、よく勉強してますな。オッホッホー!」

「それほどでも。ありがとうございました。」

 単純で素直な隊員はおばあさんに教えてもらって褒められて喜んだ。

「ということです。アハッ!」

 隊員はおばあさんとのやり取りを他の隊員たちに説明した。

「バカやろう!」

 しかし、その話を聞いた隊長は大声で激怒した。

「なんで怒鳴るんですか!? 隊長!?」

「そのばあさんは邪神の大神官だ。」

「なんですと!?」

 隊長は京都在住の親切なおばあさんの正体を見逃さなかった。

「五山に火をつけて邪神の復活祭を行うに違いない!? まだ邪悪なエネルギーが足らないから邪神が復活していないだけだろう。」

「そんな!? おばあさんはとても良い人でしたよ!?」

 隊員はおばあさんのことが大好きだった。

「騙されるな! おまえ、おばあさんによく勉強しているなっと言われたんだよな?「そうですよ。褒められました。アハッ!」

 大喜びの隊員。

「京言葉で、よく勉強してますなは、おまえ知りすぎたら命はないものと思え! 調子に乗っていると殺すぞ! っという呪いの呪文だ!」

「ギャアアアアアアー! 京都怖い!」

 京言葉は裏腹だった。

「逃げましょう! 邪神怖すぎです! ギャアアアアアアー!」

 ビビりまくる隊員たち。

「助けてー! 魔王様!」

 隊員は思わず皇女様の名前を口にしてしまった。


ピキーン!


「あ、皇女様、忘れてた。アハッ!」

 隊員たちは何をしに京都にやってきたのかを思い出した。

「おまえらに問う。邪神と魔王様。どっちが怖い。」

「魔王様!」

 即答であった。

「まだ死にたくありません! この間は巨大洗濯機で回されて溺死する所だったぞ

!?」

「魔王様に食べられるのは嫌だ! 塩や胡椒を振りかけるのはいじめだ!?」

「そうか!? 分かったぞ! 性格が歪んで恐ろしいから魔王になれるんだ!?」

「おら。生きたい。生きて人間の花嫁を貰が欲しいな。アハッ!」

 隊員たちは邪神よりも皇女様の方が怖った。 


「クシュン!」

 人間界の学校の教室。

「また誰かが私の噂話をしているのね。もてる女は辛いは。なぜなら私は日本国の皇女なのだから! オッホッホー!」

 皇女様は上機嫌に授業を受けていた。


「邪神なんか怖くない!」

「おお!」

「我々には魔王様がついておられるのだから!」

「おお!」

「我々は命尽きるまで魔王様にお仕えするのみだ!」

「おお!」

 PSSは一致団結する。

「ということで、これで貸し切りにして下さい。」

 PSSは京都の百貨店にやって来て金塊の詰まったアタッシュケースを店長に見せる。

「何を言っているの!? ふざけていると摘み出すぞ!」

「摘まみ出してくれるの? すまんな。店長。」

 絶妙なトークで応戦する隊長。 

「あんたたちはいったい何者なんだ?」

「よくぞ聞いてくれました。私たちはこういう者です。」

 隊長は名刺を差し出す。

「PSS!? ・・・・・・って何?」

「ズコー!」

 新喜劇張りにこける隊員たち。

「我々は皇女様シークレットサービスです。」

「なに~!? あの過ぎ去った後には草木も枯れ果てるというPSS!?」

 PSSは百貨店業界では少し有名であった。

「失礼な。仙台の百貨店で異世界ファンタジー部とずんだ餅のコラボイベントをして1兆の利益を達成し、ウハウハでガッポリで新館を現在建設中ですよ。」

 百貨店の催事で大成功を収める皇女ブランド。

「貸し切りだ! 火災警報器を鳴らせ! 一般のお客様を退避させろ!」

 店長の目は円になっていた。

「今回、皇女様がご所望になっているのは、きんつばです。」

「きんつば!?」

 今回のミッションが百貨店側に伝えられる。

「京都できんつばを売っているとしたら京太郎とか出町みつばとかが有名ですかね?」

「何を言っているんですか! 最上級のきんつばを自ら作ってください! 皇女様がくちにされるんですよ! 既製品だとバレたら命はありませんよ!」

「ヒイイイイイー!」

 非常通告がなされる。

「焼け! 焼け! 焼け! 手が炭になるまで、きんつばを焼き続けるのだ! なにがなんでも皇女様の口に合うものを作り上げるのだ!」

「おお!」

 24時間体制の不眠不休の命がけのきんつば大作戦が始まった。


「美味しい!」

 その頃、教室にデリバリーがやって来て、皇女様はきんつばを食べていた。

「きんつば最高! アハッ!」

 PSSの隊員がネット通販で東京のきんつば屋に注文して届けたのである。

「こんなに美味しい食べ物があったなんて! 感激だわ! アハッ!」

 ちなみに皇女様は既製品だろうが、100円きんつばだろうが違いは分からなかった。勉強で疲れているので何でも美味しいのであった。

 完


「これでいいのかしら?」

 皇女様は疑念を抱いた。

「確かに私は平和だったけど、これでは主役がPSSではないか?」

 平和なら平和で文句を言う皇女様。

「あいつら話が長いんだよ! 今度、奈落の底に飛ばしてやる! ワッハッハー!」

 奈落は冥界の深層部にある暗い世界のことである。

「ああ~。皇女に生まれて良かった! アハッ!」

 上機嫌になった皇女様。

「さあ! 世界の人々のためにお祈りをする時間だ! がんばろう! おお!」

 これでも皇女様であった。

 つづく。

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