異世界ファンタジー部 8

渋谷かな

第1話 8-1

「私は全宇宙の支配者になる!」

 この物語の主人公の皇女の鈴木宮スズはキチガイであった。

「やめい! それが皇女の言うことか!?」

 従者の佐藤サトは皇女様の相手に苦労していた。

「私は何を言っても許されるのだ! なぜなら私は日本国の皇女なのだから! オッホッホー!」

 この物語の設定は異世界ファンタジーやゲームの世界ではなく、珍しく現代ファンタジーである。只今、日本は皇女独裁国家であった。

「珍しく普通通りの決め台詞が言えた。アハッ!」

 皇女様の趣味は、公権力の乱用である。


簡単に説明しよう。


「ワッハッハー! 私の名前はシュベルト! 地球は私が頂こう! ワッハッハー!」

 20○○年。地球に魔王が現れた。

「ガオー!」

「キャアアアアアアー!」

 地球は魔王のモンスターの猛攻を受けて全世界戦争状態になった。

「美味美味! やっぱり饅頭は皇室御用達の皇女饅頭に限るな! アハッ!」

 島国だからか、小さいからか、食べ物が美味しいからか、なぜか? 日本だけは中途半端に平和だった。 


「ああ~、暇だ。」

 この物語は皇女様の暇潰しから始まる。

「東京制圧! 関東平定! 全国統一! 世界征服! 全宇宙の支配! 全てを叶えてしまった私は何をすればいいんだ!?」

 皇女様はシリーズ8になる頃には全宇宙の支配者になっていた。

「これが青春というやつか!? 思春期の悩みなのか!?」

「もっと普通の悩みはないのか? 普通の悩みは?」

「アハッ!」

 これでも女子高生な皇女様。元々は小学一年生の設定であった。ちなみに高校でのネームは鈴木スズとして庶民を演じている。

「これもう日常モノに移行しないとネタ切れで終わりじゃねえ?」

 さすがの皇女様も自身の物語の終わりを心配していた。

「ご安心ください。主人公の名前と場所を変えれば同じ内容の繰り返しで永遠に続けることができます。例えば機動戦士パンダムや愛ライブの様に。」

「パンダイが欲しそうな作品だな。」

 異世界ファンタジー部的には、沖縄県なら沖縄オキ、北海道なら北海道ホクのように名前システムが完成しているので新キャラにはまったく困らない異世界ファンタジー部の脅威のシステム。

「ということで、何をしよう? アハッ!」

「ズコー!?」

 結局、スタート地点に戻る。


ピキーン!


 その時、皇女様は閃いた。

「最優秀皇女決定戦でも行うか?」

「やめて下さい! フランスのマリーアンコワネット皇女と戦った時のことを思い出してください! フランスの騎士団を相手に僕は死にかけたんだから!」

 正確にはフランスの異世界ファンタジー部との戦いである。

「そう? 私は平気だったんだけど?」

「おまえは戦ってないだろうが!」

「アハッ!」

 自分の手は汚さない、それが皇女様である。

「今度はイギリスのエリサヘス皇女にしようかな? それともエジプトのクレオハトラ皇女と戦おうかな?」  

「ダメだこりゃ・・・・・・。」

 人の話を聞かないの皇女様。

「ふざけるな! それが皇女のやることか?」

「バカモン! 私はふざけてなどいない! 皇女決定戦を行うことによって、入場料、グッツ販売、テレビの放映権など莫大な収益があるのだ! おまえには分からないのか! 私が国の借金を返すために必死に公務に取り込んでいる姿が! 私は毎晩悪夢にうなされているんだぞ!」

 日本国には天文学的な借金があり、今も破綻寸前であった。

「うっ!? なんも言えねえ。」

 さすがの口うるさい従者も黙るしかなかった。

「おまえには分かるまい。毎晩、怖い借金取りに追いかけられたり、国民からダメ皇女と罵られる夢を見て、うなされて朝、目が覚めたら全身に汗まみれで濡れた布団を干す私の苦しみが!」

「それって、ただのお漏らしでは!?」 

「アハッ!」

 清々しい朝を迎える皇女様の図。

「借金完済! 借金完済! 国民の支持率アップだ! うおおおおおー!」

 ある意味、強い意志を持った強いヒロインである。

「で、何をしよう? アハッ!」

 またまた振り出しに戻る。

「家族でも描くか? といっても私の両親も親戚一同はみんな暗殺されて死んでしまったしな。」

 この物語の皇室は皇女様以外は全員殺されているという設定。

「今から両親の仇を討ちに行こうか?」

 ちなみに皇族皆殺しの犯人は東京都知事であった。

「やめい! 話が膨らみ過ぎる。他に何か家族ネタはないのか?」

 都庁決戦なんか描くと尺を超えてしまいそうで却下。


ピキーン!


 その時、皇女様は閃いた。

「サト。私と結婚する? 家族になる? ドキドキ。」

 乙女らしくプロポーズする皇女様。

「やめい! 結婚式は韓国ドラマでも最終回が定番。異世界ファンタジー部が終わっちゃうよ。」

「チッ! この鈍感。」

 従者は真面目なので皇女様のプロポーズに気づかない。


「お姉さまー!」


 そこに一人の少女が駆けてくる。

「おお! ハヤにゃん!」

 林ハヤ。あだ名はハヤにゃん。

「どうしたの? 何かあった?」

「スズお姉さまに会いたくてやって来ました!」

「おお! なんとカワイイ、我が妹よ!」

 皇女様は人学年下のハヤを妹の様に可愛がっていた。


ピキーン!


「はあっ!? 」

 その時、皇女様は気が付いた。

「高校にハヤにゃんがいるということは、私は高校二年生だったのか!?」

 まだ明確に細かい設定が決まっていなかった。

「違いますよ。お姉さまは高校一年生です。」

「じゃあなんでハヤにゃんは高校にいるの?」

「お姉さまに会いたくて、塀を乗り越えてやって来ました! アハッ!」

 異世界ファンタジー部だから空を飛んでもいいと思う。

「おお! なんて可愛いんだ! ハヤにゃん! よしよし!」

 バカ姉妹全快。

「それにしてもハヤは方向音痴なのに、よくたどり着けたな?」

「スズお姉さまの居場所だけは分かります!」

 ドヤ顔をするハヤ。


ピキーン!


「そうだ! 一層のこと私とハヤにゃんを本当の姉妹にしてしまおう!」

 皇女様は閃いた。

「スズお姉さま! 大好き!」

「私もだ! ハヤにゃん! よしよし!」

 姉妹愛が爆発する。

「やめい! 最初は仲が良くても、そのうちケンカでもしたら、皇位争奪戦が起こるんだぞ。」

 従者は皇族の権力争いの愚かさを警戒して言ったつもりだった。


ピキーン!


「それだ! 皇位争奪戦だ!」

 皇女様は閃いてしまった。

「同じ皇族の家族なのに、私の皇女の地位を狙って戦う! これこそ真の家族の姿だ!」

 何か方向が違う皇女様。

「やめい! おまえは大好きなカワイイハヤにゃんと戦う気か?」

「ふっふっふっふがいっぱい。例え相手がハヤにゃんであろうが、私の皇女の地位を狙うのであれば、誰であっても許さない!」

 愛する妹より自己保身が優先する皇女様。

「ハヤはスズに付き合うなよ。」

「スズお姉さまを亡き者にしてしまえば私がこの国の皇女になれる! そうすればキャットフードは食べ放題! またたびに猫じゃらしで遊びたい放題! お姉さま! カワイイ妹のために死んでください!」

 愛情よりも権力を欲するハヤ。

「おまえらの姉妹愛っていったい!?」

 こうして皇女様の姉妹愛は崩れ去った。


「レディース! アンド! ジェントルマン! これより皇位争奪戦を行います!」

 司会の中村ナカ。

「先生!? 何やってるんですか!?」

 彼女は皇女様たちの担任教師だった。

「だって、これしか出番がないんだもん。アハッ!」

 既に彼女は皇女ウイルスに侵されていた。

「こんな教師ばっかりだから、日本の教育がダメになっていくんだろうな。」

 日本の教師はわいせつ教師とか犯罪者が多かった。

「それでは選手入場です! 赤コーナー! 我らが鈴木宮スズ皇女様!」

 皇女様の入場である。

「皇女! 皇女! 皇女!」

「どうも! どうも!」

 USEコールやMVPコールみたいな皇女様コールである。

「フッ。茶番だが、一般大衆は刺激を求めているのだよ! ワッハッハー!」

 小さい頃から苦労している皇女様は群集心理を読むのに長けていた。 

「続きまして、青コーナー! 挑戦者の林宮ハヤ皇女様!」

 対戦相手は全て自称皇族なので宮様がつく。

「私が本物の皇女だ! 偽物は滅せよ! ニャアー!」

 ハヤは本気で皇位を奪いにやってきた。

「それでは試合開始です!」


カーン!


 試合開始のゴングが鳴った。

「見せてもらおうか。私の肩たたきをしてレベル上げをしていた捨て猫がどれだけ強くなったのか?」

 それはハヤが異世界ファンタジー部に新入部員として入部した時の出来事である。

「なめるな! 私の好きだったお姉さまは死んだ。おまえは一歳年上のただのおばさんだ!」

 敵対すると今までの愛情は塵に等しい。

「ムカッ! 女子高生におばさん言うなー! 本当のおばさんに失礼だろうが!」

 これはこれで本当のおばさんに失礼である。ペコリ。

「知るか! 私はまだピチピチの中三だ!」

「ま、負けた!? ガーン!」

 大ダメージを受ける皇女様。

「そうか・・・・・・女子高生って、中学生から見ればおばさんだったのか。」

 気を落ちする皇女様。

「チャンス! もらった!」

 先制攻撃を仕掛けるハヤ。

「くらえ! お姉さま! 必殺! 林斬! もらった!」

 ハヤが斬撃で斬りかかる。

「私がおばさんになっても・・・・・・はあ・・・・・・女子高生なのにおばさんか・・・・・・。」

 まだ皇女様は落ち込んでいて気づいていない。


ピキーン!


「そうだ! 私がおばさんということは、サトもおじさん! 結婚出来るではないか! おばさん! 最高! ワッハッハー!」

 協会の鐘が鳴り、幸せの鳩が皇女様の頭を飛んでいく。


ギギギギギギー!


「障壁!? バリアか!?」

 ハヤの斬撃は皇女様の全自動バリアによって防がれた。

「忘れたのか? 私が皇女であることを。皇女である私は24時間営業の聖なるバリアで守られているのだよ! オッホッホー!」

「どんな皇女だよ?」

「アハッ!」

 特殊な皇女である。

「ハヤにゃん。全自動バリアがない時点で、おまえは偽の皇族だ!」

「そんなことは知ってますよ。」

 テーマが家族で無理やり皇族を名乗らされ巻き込まれただけのハヤ。

「でも、折角なので中学異世界ファンタジー部二連覇を達成して、今年三連覇の完全優勝を狙う今の私がお姉さまに通用するのか、試させてもらいます!」

 こんなキャラクターでもハヤは強かった。

「こい! ハヤにゃん!」

「いきます! スズお姉さま! くらえ! 必殺! 超! 林斬!」

 ハヤは皇女様に斬りかかる。


「ギャアアアアアアー!」


 断末魔の叫び越えを上げる皇女様。

「お、お姉さま!?」

 予想外に皇女様はハヤの斬撃に真っ二つになる。

「やったー! 世界が平和になったぞ! 僕は自由だ! フリーダム!」

 従者は皇女様が倒されたことに大喜び。

「そ、そんな!? 私は何ということをしてしまったんだ!? お、お姉さま・・・・・スズお姉さまー!!!!!!」

 皇女様を実の姉の様に慕っていたハヤだけは悲しんだ。


「呼んだ?」


 その時、皇女様は何事も無かったように普通に現れた。

「お、お、お、お、お姉さま!? 確かに殺したはず!?」

 ハヤは幽霊を見たみたいに驚く。

「悪いな。私は魔王内蔵型皇女なので殺されても、私は何度でも甦るのだ! ワッハッハー!」

 魔女どころか、皇女様は女魔王だったのです。

「説明しようか? 聞きたいだろう? なっ? なっ? なっ?」

 話をしたくて仕方がない皇女様。

「長くなるので結構です。キッパリ!」

 伏線というよりシリーズ8にもなれば設定は塵の如く積もっている。

「そ、そんな~!? チッ!」

 悪い道に進む様な皇女様。

「皇女様。ご無事で何よりです。」

 従者は片膝をついて皇女様の蘇生を喜ぶ。

「サト。おまえ、私が死んで喜んでなかったか?」

 疑いの眼差しで見る皇女様。

「はっはっはっ。何をご冗談を。僕は皇女様が氷漬けにされて、電動かき氷機で削られて、抹茶のシロップをかけて食べられても生き返ることを知っています。」

 かき氷になる皇女様の図。シロップは赤い血の方が良かったのだろうか? それとも魔王らしく緑色の血の抹茶なのだろうか?

「美味しい! 異世界ファンタジー部の催事イベントで皇女かき氷を売ろう! きっとバカ売れだ! 皇女氷も皇女通販で販売しよう! 夏季限定だ! アハッ!」

 常に借金返済のために商売を考える商人な皇女様。

「って、おまえは私をなんだと思っているんだ?」

 ノリッツコミもできる皇女様。


「スズだろ。皇女であっても僕にはスズだ。」


 サトは素直に思ったことを述べた。

「クッー!? ・・・・・・今日の所は許してやろう。私は優しいのだ。なぜなら私は日本国の皇女なのだから! オッホッホー!」

 一人の人間として接してくれる従者ことが好きな皇女様であった。

「しかし第一話の掴みが作品が売れるか売れないかの全てとは言われているが、このままでは私はただの変態ではないか?」

「分かりました。少しだけ皇女様の公務を描きましょう。」

「やったー!」

 お正月の祝賀行事。皇女様は皇居で参賀にやってきた国民に笑顔で手を振る。

「愚民ども! 私に触れ伏すがいい! 私のために働け! 血と汗と涙の税金を納めるのだ! 全て私のおやつ代になるのだ! ワッハッハー!」

 笑顔で国民に手を振り口から毒を吐き出す女魔王な皇女様の声は国民には聞こえない。

「皇女! 皇女! 皇女!」

 皇居はアイドルコンサートさながらの皇女コールが沸き起こる。

「公務をこなせば私の支持率が上がる! 我が地位は安泰だ! この世は私のモノだ! ワッハッハー!」

 これが皇女様の公務を行う様子である。

「最低・・・・・・。これを描いて私の好感度が上がると思うか?」

 さすがの皇女様本人もひくレベルであった。

「申し訳ございません。気分転換に海外旅行でもいかがですか?」

「海外旅行! いいね! 巻いていこう! アハッ!」

 皇女様曰く、海外視察は実質、海外旅行と変わらないらしい。

 つづく。

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