第10話元雑用係は、最初の依頼を受ける
冒険者として、ライセンス登録などを済ませて宿へ戻った。
マリーがどんな顔をするか少し楽しみだった。
そんなことを思いながら宿に帰った。
「ただいま」
一言言うと宿の玄関で待っていたマリーが満面の笑みで言った。
「おかえりなさい!」
今日の一日で表情がとても柔らかくなった気がする。
マリーに引っ張られながら部屋へ向かった。
部屋には女将さんが用意してくれたであろうご飯が机の上においてあった。
まだ湯気が立ってる。
「……まだ冷めてない」
それだけで、少しホッとした。
私はその温かいごはんをマリーと食べながら今日の一日の疲れが静かにほどけるように感じた。
ー次の日
私はギルドへ向かった。
中に入ると、昨日同様全く人の気配がなかった。
冒険者不足だと昨日聞いた。
それでも――ここまでとは思わなかった。
カウンターにもあの受付嬢もいなかった。
「あのー」
一歩踏み出すたびに、足音がやけに大きく響いた。
……歩いているのが少し恥ずかしくなるくらいだ。
ドタドタと奥の方から走ってくる音がした。
あの受付嬢が来たのだろうかと思い、カウンターの椅子に腰を掛けていると……
「ごめんなさいー!!ちょっと奥で、きゅ……ゴホッゴホッ仕事をしていましてね」
「仕事?本当にあるんですかこのギルドに」
自分で言っておいて、少しだけ辺りを見渡した。
「まぁまぁ、それ置いておきまして本日はどのようなご要件ですか?」
「依頼を受けたくてね。何かないかな?」
「依頼ですか……」
受付嬢は、カウンターにある数枚の紙を吟味していた。
そんな選ぶほどないのだから全部提示すればいいのに――
数分間読み込んでいた受付嬢は言った。
「これとかどうですかね?オークの討伐とかどうですか?」
私は提示された依頼書を見た。
報酬は――悪くない。
依頼者は……なんで消されてるんだ?
ふと不思議に思い、依頼書を隅から隅まで見る。
日付は――一年以上前のものだった。
「あの、これもう一年以上前のやつなんですけど……」
そう言い、依頼書を返すと受付嬢は慌てた様子で別の紙を渡してきた。
「これ!これなら多分大丈夫です!」
なんだか、不安だなぁと思いながら依頼書に目を通すと……
「薬草の採取?」
「そうです!薬草です!」
「え?」
「え?」
私と受付嬢はお互いに困惑をした。
人のいないこのギルドで、
なぜ今も薬草の依頼が出ているのか。
胸の奥に、小さな引っかかりが残った。
「まぁ、受けます」
受付嬢は、依頼書の処理の仕方を思い出すように、
小さく独り言を呟きながら手続きを進めていった。
ー数分後
「おまたせしましたーこれで依頼受注完了です」
「あっ、ありがとうございます。ところでこれ誰が依頼してくれたんですか?」
「あぁー」
受付嬢は私と顔を合わせないようにそらし、小声で言った。
「……わから……ない」
「え?」
私は思わずオウム返しをしてしまった。
「だから!!わからないんです!」
「なぜ、わからないんですか?」
「だって……」
「だって?」
「これ、私がここに就職する前に来た依頼なんです!」
「あー」
これは、この廃れたギルドの悪いところだなぁと思った。
依頼者が不明でなんの目的かわからない依頼に向かうのだった。
すると、私と受付嬢の声が響き渡るホールにドアが開く音がした。
ドアに私と受付嬢は目を移した。
そこにいたのはセナだった。
「よぉ!フランどうしたんだ?」
セナはいつもと変わらずに話しかけてくる。
私は今受けた依頼をセナに説明した。
すると、セナは大笑いをして背中を叩いてきた。
「あっははは!!これ依頼者不明どころか、これ出したのギルドだし」
「へ?」
思わず、気の抜けた声が出てしまった。
もしかして、昔にまだ繁栄していた頃のギルドは薬草が必須アイテムだったのだろうか?
「そんな依頼受けるより、別の依頼受けようぜ」
「そう言われても……」
返答に困っていると……
「セナさん!強要はダメですよ!」
また、受付嬢とセナの言い合いが始まった。
私はその間に外へ出るのだった。
薬草が生えている場所はギルドが建っている場所からさほど遠くなかった。
魔法を学んでいたときは、
薬草をよく実験などで癒やすために使っていたのであまり苦戦しなさそうだ。
10分間くらい歩くと該当場所へ着いた。
もう誰も立ち入っていないのか獣道もなかった。
完全に誰も手を加えていない自然の状態の中、私は薬草を探した。
確か、薬草の数は……
「10本ね」
誰もいないのにぽつりと言葉が出てしまう。
一本、また一本と摘んだ。
こんな簡単な依頼で報酬は出るのだろうか?
昔のギルドならでるだろうが、現状のギルドでは……
そんな事考えてはだめだ。
10本摘み終えて、帰ろうとしたとき森の奥の方で声が聞こえた。
こんな草も木々も生い茂った森で……
声のする方向へ向かうと二人の男がいた。
「ここなら平気か?」
「大丈夫だろ」
男たちの視線の先にいたのは小さな猫だった。
一人の男が刃物を猫に向けて振りかざそうとした瞬間、私は思わず魔法を発動させた。
「
風が刃のように巻きつき、男の腕を木へと叩きつけた。
「何!?誰だ」
男が振り返る余裕も与えず、私は
そして、
どうだ!強いでしょ!
と、思わず心のなかで声を上げてしまった。
―助けてくれてありがとう
どこからか声が聞こえてきた。
反響するように声が響き渡る。
―ここですよ。救世主様
そう言い、聞こえてきた方向を見るとそこには猫しかいなかった。
「へ?」
次の瞬間、目の前が眩しい光で周囲を包みこんだのだった。
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