第11話 恨まれても…

子供の頃。

多分、小学校の4~5年生の頃。

大晦日の前夜、眠っていたら、家の裏口に、

すーーっと、男の人が立った。


どう見ても、首釣ってる人。

恨めしそうに、家の中を見てる。

その場所からは動かないで、ずーっと

こっちを見てる。ただ見てる。


私の母親が

「なにもして来ないなら、無視してなさい。」

と言って、既に何人もの霊と同居中だったので

今回も、無視する事にした。


けども。


翌日の大晦日に、親達が話しているのを、

襖の扉の隣室で、聞いてしまった。

「28日に、金貸して欲しいって、電話してきた、○○さん(男性)、

首釣ったって、昨日。」

「節季に急に借金頼まれても、銀行も閉まってるのに、用意なんか出来ん。」

「だいぶ、電話で恨み言言われたのよ。『もう首くくるしかない』って。

ほんとにくくるなんて。」

「……。」


落ち込む両親。

ゾッとする私。


来てるよ。そこに。その○○さん。



ずっと、その○○さんは、ただ恨めしそうに立っていた。

かなりの日数、そこに居た○○さんだったけど、

ある夜、来た時と同じように、すーっとかき消えるように、

消えてしまった。


”居なくなった”ではなく、”消えてしまった”が正しい。


あの時は、子供だったから、分からなかったけど、

今世に留まる期間が満了したから

消えてしまったのだ、と

大人になって、知人の葬儀に出席した時に、僧侶からの

説法を聞いて、納得した。


49日が過ぎたから、消えたのだろう。

『○○さんは、成仏出来てるといいな。』

僧侶の説法を聞きながら、そう思った。


================


”鬼門の方角”って、

その当時は知らなかった。


建築の勉強を始めて、”鬼門”の方位を考慮するのを習った。

まさしく、その○○さんがやって来て、立っていたのが

”鬼門”だった。

『古くから、忌避されて来たのには、ちゃんと理由があるんだ。』

習った時、本心から思った。


”鬼門の方角から来る”とされる

”良くない者”って

住まいしている、その家の住人に対して

”恨み”を持っているからだと思う。


”恨み”を持たれるような事をしなければ

多分、”鬼門”は気にしなくてもいいのでは?(個人見解)


○○さんに関しては、無茶ぶりの借金依頼だったと思うし、

それで恨まれてもねえ……。


だから、捕り憑かずに、

ただ見ていただけなのかな??


○○さんは、大豪邸を建てて、その代金の返済に困ってのことらしい。

命を捨てて、その生命保険で支払ったと、後日に知った。


うちの親だって、我が子ほっぽって

毎日働いて暮らしてたよ。

家は、外見も”幽霊屋敷”そのもの。

うらぶれた、墓地の下に建つ

古い借家だったよ。


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