第9話 見える・・・
小さい子供って、霊とかあまり認識していない。
自分の日常に、普通に居るから…
大人が気付いて「えっ?」ってなるまで。
子供の頃、家の中を、何だか変な感じの人が、
やたらうろうろしてるな、と思ってた。
女の人や、小さい子どもや、ハイハイする赤ちゃんや。
ふっと、目の端に写って、すーっと前を横切って
すーっと居なくなる。
『何してるんだろう。』って思ってた。
夜、寝ていたら、私のお腹の上を、
ハイハイする赤ちゃんがいる。
顔をぺちぺち触られたり。
寝てるのに、起こされるから嫌だった。
子供の頃、幼稚園の夏休みの、昼間。
お腹を壊して、しょっちゅうトイレに入っていた。
両親共に、仕事に出ていて、家には私と妹。小学生の兄は遊びに出ている。
(今で言うところの、放置子だったな。)
妹が、トイレを怖がって、一人では行かないので、
私はいつにも増して、しょっちゅうトイレに入っていた。
昭和の田舎のトイレは、ほぼほぼ汲み取り式の和式トイレ。
北側の日当たりの悪い位置に、家の外側に引っ付くように、
裸電球が1個灯るだけの狭い個室で、むりやり設置されていた。
妹のお尻を拭いてやっていたら、
白い手が下から出てくる。
ふわふわ、何かをさぐるような感じで。
さすがに、おかしいと、気付いた。
だって、汚い汲み取り式の便槽の中から、
明らかに女の人の、細い白い指の両手がふわふわ出てきたら、
『何でそんな所に居るの??』
ってなるよね。
覗き込んだら、いつもふらふら出て来る女の人が、
そこに、居た。
ちゃんと上向いて。
目の中は、黒い洞みたいに、何も無くて。
長い梳かしていない髪の毛が、ばさっと広がっていて
『幽霊って、これ???』
幽霊を認識した。
人生で、初!
幽霊は夜になったら出るものと、人からで聞いていたから、
昼間に出るのは、幽霊じゃないって思ってた。
昼間でも、出るじゃん。
そうなると、人間は怖くなるもので。
夜、帰宅した母に、昼間の事を話した。
昼でも、いつもその辺に、出没している事も。
すると、私の母は
「あー。何か気配はするな~て思ってたけど、見ちゃった?
あんた、おばあちゃんに似たのね。
大丈夫よ。悪さするわけじゃないし、居るだけでしょ。
気にせず、いつも通りにしといて。」
みたいな事を言った。
「いやだ。怖い。引っ越したい。」
と懇願する私を、母は、じっと見つめて
「家賃安いのよ。引っ越しはしません。気にしなければいいの。
どうしても嫌だったら、
”あっちへ行って。私は知らない。”って言って、拒絶しなさい。」
そう言った。
顔も見た事が無い、母方の祖母から伝授されていた、怖い幽霊に出逢った時にする
”おまじない”などを母から教わって、
「ああいうのは、そこここに居るから、いちいち怖がらないこと。
質の悪いのに行き当たったら、すぐ分かるよ。うちのは、大丈夫。」
などと、私の不安は煙に巻かれて。
結局、進学で実家を離れる日まで、そのまま住んでいた。
後から、その家は、イワク付きだったと、近所の人から聞いた。
でも、確かに”ただ居るだけ”の霊達だった。
実家を出てからも、
わざわざ”お化け屋敷”とか、”心霊スポット”とかには、
絶対に近付かなかった。だって、そこここに居るのに。
あえて、見に行かなくてもいい。
不思議な事に、ある時期から、
一切見なくなった。(ラッキー)
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