理由

夜になっていた。日中から雨が降ってしまっていたので忘れられた傘は少しだけ心配していた。

「ただいま。やっぱり誰もいないけれど。」

私たちは聞こえないけれどおかえりなさいと返した。すると濡れていないことに気が付いた傘が考えていることを話していた。

「髪一本濡れていないのはどうした。局所的な快晴があったとかか。うん、なんか今日、服装とかやけに気合入ってないか、なんか知ってる。」

「そういや今朝早く起きて色々と考えてましたよ。年頃のお嬢さんですからごく普通の事じゃないの。」

「いいや。なんかあったに違いない。長年いて分かった事は寝るときは寝れるまで一分単位で寝るぐらい朝が弱いってことだ。見立ては間違ってない。」

そう豪語する傘に対してそんなところがあるんだと思った。忘れていた傘に気が付いたのか「ここにあったんだ」と思い出したらしい。私を引いて座った。びしょ濡れであることを悟ってみたがそんな心配はなかったらしい。本当に晴れていたところにいたのだろうか。なぜだか嬉しそうに座ってスマホを見ていた。

「ああそういうことね。良かったね。」

そう傘は言っていたが何をやっているのかは、はっきりと分からないので考えるのをやめた。


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