物からの視点

出かけて行って暇になってしまっていた。仕事が無くなっていたので視界には入る程度に部屋を見ていた。机には手帳があった。名前は何て呼ぶのだろうか。これから有り余るであろう時間を考える時間にしていた。するとどこからか声がしてきた。

「よう新入り。」

突然の声に吃驚したが。机に置いてあった傘が話しかけてきたらしい。

「こんにちは、いやですね。私の持ち主について考えていたんですよ。なんて言う読めばいいか。」

「ああそれか、奏那かなて読むんだよ。そう友達が言っていた。」

そうかこの傘は仕事が外だから人の会話から情報が入るのか。

「ところでなぜ傘がここに。普通だったら玄関か傘立てが妥当ですよね。いったいなんで。」

机に傘が置いてある風景は違和感しかないので尋ねてみた。

「ああ今日は突発の休暇だと思う。よくあの子忘れるから今日は忘れないように机に置いておいたんじゃない。そして忘れていったと。」

そんなことがあるのと外を見てみたが曇り空が広がっていた。これは確実に降るなと確信ができた。

「どこ行っているか分からないですけれど晴れればいいですね。」

「そりゃ無理だな。忘れ物をすると高確率に雨が降るんだよ。逆に持ってないと晴れる。日傘と雨傘どっちもあるんだから持っていればいいのにな。」

そんな会話を繰り返しているうちに持ち主の人間像が分かった気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る