感情よりも学び。――推しを撮る情熱が、世界を切り取る力へ変わっていく。

一般的な小説の「成長譚」が心の成熟を描くのに対し、本作が描くのは撮影技術の習得という現実的な成長だ。
推しを撮る情熱が、学びと実践を通じて少しずつ形を得ていく。

本作品は、小説という名を借りた青春のスチル写真である。
感情のドラマではなく、一枚一枚の“学びの瞬間”が並ぶ構成。
その丁寧な技術描写は、時に写真入門書の実演編を読んでいるような教材的印象すら漂わせる。

感情より技術、恋より努力。
人間的成熟の物語ではなく、知識と探究が世界の見え方を変えていく物語。
その光はまさに、ファインダー越しに切り取られた青春の一瞬だ。

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