きみと僕との過ごす春を独特な存在感で紡ぎ出した恋物語。春の匂いを好むきみ、それを見て落雷に打たれた焦恋のまなざしに揺れる僕の切ない感情が印象的なストーリーで展開されます。
特筆したいのは、春の匂いと春雷に対する描写です。
春の柔和で優しいところと鋭く貫き去る尖ったところの二面性。これらはきみと僕の内面を対比的に描いた証左であり、読者に強烈なイメージを植え付ける点で効果的かつ技巧的だと感じました。
春天の閃きと心を貫く雷電に心奪われた瞬間、花はさよならも言わずに散っていく刹那の情景。
季節へと昇華していくきみを追いかけ、手を伸ばしても指先に届かない存在となってしまうのは別れの美学なのか。切なく儚くとも忘れられない、きみを信じる純粋な気持ちが心を打ちます。
そして想いを抱いた先は次なる季節へと再び馳せることでしょう。
僕はまだきみに焦がれている、きみがいないだけの春にまたどこかで会えると信じて想いを温めるのです。
きみという季節が、また巡ると信じて。