第7話 初めましてextend
「はぁーなるほど。そうすれば記憶もパァやなぁって、いや死ぬて! アホちゃうか!?」
お手本のようなノリツッコミを披露しながら男が絶叫する。
「あんた、昨日俺の能力を知ってるって言ってなかったか?」
「そりゃ上司から資料もらって……あ、お前さん不死身なんやったっけ」
「しっかりしてくれよ」
酒は人をここまでダメにするのか。それともこの男が果てしなくダメ人間なのか。
前者であることを祈るばかりだ。
「せやかて、痛くないわけちゃうんやろ?」
男の眉が情けなく折り曲がる。
「迷惑かけた上、子供にそんな」
「ああ。しっかり死ぬほど痛い。その分、対価の情報はしっかり吐いてもらうからな」
「お、おう……そか。そうやな。取引やもんな」
自分に言い聞かせるように呟く男を見て、予想通りの反応に安堵する。利害関係をしっかり提示しておけば余計な負い目を感じさせずに済む。
そこまで考えてふと、昨日会ったばかりのこの男にそこまで気を回す自分の奇妙さに気づいた。雰囲気が似ているというだけで厄介なものだ。
「それじゃ。那野葉、いっきまぁぁす!!」
暴力的な速度を与えられ、鉄の塊が俺の頭に迷いなく振り下ろされた。
『熱い』と『痛い』と『気持ちがいい』がすぐさま他の全てを蹂躙する。
今まで培った自分の人格、理性、矜持、その全てが無機質な物質へと還るのを感じる。
多くの人にとって一度きりの死の絶望は、しかし新鮮な痛みとは裏腹に俺には退屈なもので、俺は血潮と共にため息を吐き捨てた。
◯◯◯
目を開くと見慣れすぎた天井が目の前にあった。
「おはよう外羽。気分はどう?」
熱っぽい頭を持ち上げて立ち上がる。
那野葉のツインテールとパーカーの原色が嫌に目に刺さった。
壁にかけられた時計に目をやる。
今日は金曜日。時刻は始業15分前。
「なんでこの時間に死んで……いや」
死んだ理由がなんで思い出せないんだ?
いや、それだけじゃない。いくら考えても昨日の昼以降の事が上手く思い出せない。
それが意味するのは、俺が頭部を半端に損傷して死んだという事。それは朝のメニューには入っていない。
「那野葉」
「うん」
「俺がすべき事は?」
那野葉が部屋の奥から新しいワイシャツを取ってきた。
「記憶がないのは理由があってのこと。思い出さない方が外羽には都合がいい。外羽は今から学校に行っていつも通り生活して」
「分かった」
渡されたシャツに着替えて那野葉と基地を後にする。
再生に伴う記憶の異常は那野葉の指示通りに補完する。これが俺たちのルールだ。
今回も、疑う事は何もない。
「那野葉がいてくれて良かった」
校門の前まで来て、改めての実感を那野葉に伝える。
那野葉は一瞬戸惑うような表情をしてから、柔らかい笑みを浮かべた。
「その割に情けない顔してるね」
「不安が無いわけじゃない。ただ、お前のおかげで不安でも足を止めずに済む」
「……んふっ。外羽のそういう素直なところ。私は好きだよ」
那野葉が小走りで昇降口へと向かう。そのまま教室に向かうのかと思いきや、途中で立ち止まり振り返った。
「そーいえば。伝え忘れてたけど、今日の昼休み屋上に来てね! 会わないといけない人がいるから!」
「会わないといけない人?」
「じゃっ!」
詳しく聞き返す前に那野葉は今度こそ昇降口の奥へと姿を消した。
オリジナルinヒューマン @World06
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