誕生日会その2
冬です。今日はトランプの誕生日。そして再来週はミルクの誕生日です。トランプには適当に食べ物を渡すが、ミルクには消耗品を渡すつもりだ。ミルクの両親に警戒されているから、ずっとその場に残る物を渡しても捨てられる気しかしないからな。
トランプの場合
「誕生日…お、おめでとうございます!」
「「おめでとう!!!」」
「おめおめ~!」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
誕生日の挨拶の音頭を取る人によって開幕は異なる。そして緩い奴も妹の恋人候補だからか少し興奮気味だな。
「…っで、プレゼントは俺からだな。ほい王都産の飴。未成年は無料の店で貰ってきた」
「おお…少し溶けてね?まあいいけど!」
良かったよ。ちなみに、少し溶けているのは王都に行ったのが夏だったからだ。残念ながら俺の持ち物に保冷用の袋は無かった。そして皆が誕生日プレゼントを渡し終えた所で誕生日ケーキが出てきた。持って来たのはトランプの母親だ。フランと色々話したりして最後に
「…トランプのことよろしくお願いします」
そう言って出ていった。毎年のことである。………俺の毎年ってなんだ?ループ前のことか?それともループ後?
「…ま、まあ、これからもよろしくな皆!」
そして、トランプが少し気恥ずかしくなりながら締める。これも毎年の恒例だ。
「ケーキ上手いね。いくら食べても飽きない」
「アルは食べ物ならなんでもいいだろ…まあそれはそれとしてだ…ケーキ上手いなこれ!?」
なんだこれ!?前のループの時と味付けが違うんだが…誰か手伝った奴が居るな?そんなこんなで、言おうとしていたことを忘れた俺は、そのまま時間を消費した。
「それでは解散!」
フランの姉の一言で解散した俺達。その中でも俺だけ怪訝な表情をしていたため帰り道で数人に声をかけられた。…いやあ、なんか忘れている気がする。なんだったかな?今日は寝られないかも知れないな…。
睡眠時、隣にアルが居ないこともあり、爆睡した。
ミルクの場合
「「「誕生日おめでとう!!!」」」
「おめでとう」
「おめおめ~」
「あ、ありがとうござい…ます!」
緩い奴が居るな?いや、これはもういいか…。どうせ、来年学校に行ったらもう村には戻らないし…これがラストの誕生日会だからなあ。
「えっと、それじゃあプレゼントの時間だね」
「あ…は、はい!プレゼントの時間です」
にしても俺、そんなやらかしてたっけな…なんでミルクの親にはあんなに警戒されているんだろうか………おっと、俺が物思いに更けている間にプレゼントを渡す番になったようだ。
「プレゼントは聖水だ。まあ、悪魔対策として玄関や窓に蒔いたりしてくれ」
「はい。毎年ありがとう…ご、ございます」
「きにすんな。俺の親父がこう言うの得意だからな」
「………」サッ
この流れで目を合わせてみる。逸らされる。いつもの流れだな!
「じゃケーキしよケーキ」
こいつケーキ食いたいだけか?ケーキは動詞じゃないんだよなあ…。
「じゃ解散!」
ケーキを皆で食べた後、特に変なこともなく、そのまま解散となった。ただ、帰り道で俺に対し視線を向けている奴も居た。アルだ。なにか納得のいっていない顔だった。
「どうした?」
「なんで最近、私が実家で寝てるのか知ってる?親にね、止められたの。それも急に。なんか変な儀式もしてるしで少し怖いんだよね…」
「泊めてほしいのか?」
「親を止めてほしい」
アルの両親は優しい親なんだがなぁ………
優しい以外になんの情報も出てこない親だからなあ?
「…良いだろう。ただ、今は無理だ。戦力が足りないし、俺自身が弱い。だから学校の入学式まで俺の家に泊まれ。そして学校で鍛えた後になんとかするぞ」
「う、うん」
「どうした?」
なんだ?なにか変だったか?
「いや、なんか…こうなることをわかってたのかなって」
「わかっていた訳ではない。そうなりそうな気がしただけだ」
俺的にはアルの親が遂にしっぽを出したか…って感じだ。
「そう…もっと早くあなたに言っておけば良かったのかな?」
「さてな。まあ今日はもう遅いから先に寝ておけ。って良く見たら玄関に自分の荷物を集めているんじゃないよ…」
「だって両親から逃げる気満々だったし…。まあ、あなたならなんとか出来ると思ってるわ。なんとかしてね?」
「…まかせろ」
俺の返事を聞くと満足したのか良い笑顔で家の鍵を開け荷物を持ち、入っていった。………その鍵、誰から貰ったんだよ…。
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