誕生日会その1
秋です。この季節になるとフランやアルの誕生日があることはもう既にご存じかと思います。
フランの場合
「「「誕生日おめでとう!!」」」
「おめでとう…ございます!」
「おめおめ~」
なんか緩い奴も居るな。
「皆さん、ありがとうございます。それではプレゼントの開封会にしましょうか」
「毎度のことだが、なんでフランもプレゼントを用意しているんだよ…」
「そりゃあ誕生日ってだけで、施しを与えられている現状にフランが堪えられないってだけよ」
「あ、姉さん!それは言わなくても良いのに…」
へえ…誕生日をそんな風に思う奴も居るんだ。…思考が大人過ぎないか?ちょっと聖属性が強すぎますね。…っと俺のプレゼントを渡す番か。
「プレゼントはまあ…いつものだ。大切にしすぎて使わないとかはやめてくれよ?」
「今年は髪飾りですか。毎年聖属性の付与されたアクセサリーを下さり、ありがとうございます。毎日使います!」
「いや、流石に毎日使うと来年まで持たないからな?」
「あ、はい!」
毎年このやり取りしてる気がする…。
「さてさてさ~て!皆お楽しみにしてた誕生日ケーキのお時間だよ~」
その後、食べて、喋って、フランの家の玄関で解散と言う流れになった。そして俺は少し遅れながらも帰路を歩いていた。しかし…。
「…っとそれでトランプ。なんの用だよ?」
「いやぁ、毎年やってるから一応な、……フランを幸せにするのは俺だからな」
「ああ、そのために俺も協力しよう」
俺がフランに聖属性の付与されたアクセサリーを毎年渡しているのにも意味がある。それは能力を使えば使うほど熟練度が上がり、能力の効果が強くなるからだ。それをフランには教えていないが、フランがもし危ない目に遭いそうな時にその経験と能力がフランを救うと考えて渡している。トランプとフランの未来にbad endは要らないんだよ…。
「助かる。じゃあな!」
トランプが戻ってから1分後。アルが俺の家の前に立って俺を待っていた。
「…っで?ここ最近ずっと俺の家に泊まってるアルさん?親孝行はどうした?」
「大丈夫。私の親は優しいから。そんなことより、次の私の誕生日プレゼントはあれにして?」
「あれ?……え、あれ!?…めんどくさぁ」
「私とフランとの扱いの差が酷くない?じゃ、お先に寝てるね」
「はあ…親父に聞いてみるか」
フランにあげた物は親父が作った物だ。と言うことでわかると思うが、親父は付与術士だ。毎年フランの誕生日プレゼントの為にお願いして作って貰っているが、あの人無口だから怖いんだよな。もしかしたら毎年怒っているかも知れない。
「付与するアクセサリー位は自分で用意するか…親父にこれ以上迷惑をかけないためにも」
アルの場合
「「「誕生日おめでとう!!!」」」
「まあ、おめでとう」
「おめおめ~」
緩い奴も居ます。
「ありがとう。じゃケーキ食べよ」
「いつも通りアルちゃんの誕生日会はケーキが最初だよね」
「そう。早く食べないとプレゼントに集中出来ないから」
そして食べて、少し喋って、プレゼントを渡す時間。
「ほら、ケイ。あなたが最後だよ?」
「ほら、アルがご所望したアクセサリーだ。受け取っとけ」
「雑過ぎ。まあいいよ……ありがとう」
アルはそう言うと、大事そうにネックレス型アクセサリーを握り締めた。…そんな反応されると、なんの付与もされていないってことを言えないんだが…。流石に誕生日までの期間が短く付与が出来ないと親父に言われたんだ。
「「「………」」」
「うわ…ぁ」
「な、に、か?」
「ああいや、ケイじゃなくてだな…アルの顔がいかにもそれ過ぎて…皆驚いているんだよ」
わかっとるわそれくらい。にしてもアルがあんな顔するなんてな…アクセサリーそんなに好きだったのか。いや、違うか。付与された属性持ちアクセサリーが欲しかったのかな?…これは違うだろ。アルは鑑定の能力を持っているのだから鑑定すればすぐにわかる。
まあいいか
「まあいいか…もういい時間だしお開きにしよっか。ミルクちゃんの両親も心配してそうだし」
「そ…そんなに時間たってましたか…楽しかったです。とても」
「次の誕生日会は冬まで無いのか~誰か子供生んで~」
あんたが一番年上だろ。他人に任せず頑張ってくれ。
「………」チラッ
フランがトランプのほうを見ている。トランプは気付いていない。
「………」チラッ
アルが俺のほうを見ている。さて、どうしたものかね…。
「………」ソワソワ
ミルクの視線が泳いでいる。誰か助けてやれ。
「…さて、そろそろ両親が心配しそうだし俺は帰るよ。お疲れさま」
「じゃあ皆解散と言うことで。解散!」
その後、アルは俺の家で寝ることは減った。ただ、ネックレスを常に離さず持つようになった。
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