手紙を届けるのに魔術を使う親

 アルを家に泊めだしてから3日たった。その間、ずっと家の中に引きこもらせた。何故なら、毎日のようにアルの親から手紙が届いていたからだ。ちなみに、手紙をポストに入れた人は居ない。急に湧いて出てきたと言うことになる。


「…お前の親ってなんなの?化け物?」


 俺は届いた手紙を読みながら言う。少しはオブラートに包むべきだったかも知れんが、後の祭りである。


「…手紙が湧いて出てきたのは、多分魔術を使ったからだと思う。でも私以外に姿を見た人が村長しか居ないのは知らなかった…」


「見た目は普通の人間なんだよな?ただ家の中で全てを完結させているだけで」


「うん…そう」


 俺はアルの両親については、優しいと言うことしか知らなかったが、まあ怪しむよな…と。怪しいから、アル以外に唯一姿を見ている村長に聞くにしても、あの人は普段から忙しいから周りの人達に止められて聞けなかったんだよな。…いや、周りの人達はなんの権限があって止めたんだよ?こっちは子供が家から逃げ出すほどの事態なんだぞ?


「…お前の家に言って聞いてみるか。なにをしようとしているのですか?って」


「…危なくない?」


「危険でも、相手の意図がわからないよりかは、安全な今後を過ごせるはずだ」


 それになにより、アルの両親を見てみたい!声は何度も何度も聞いたことがあるのだが、この黙っていれば基本的に良い女を育て上げた人達の顔がとてもとても知りたい。


「…じゃあ、私もあなたに着いていこうかな?親がなにをしようとしているのかは知りたいと思ってたし、それに…相棒は必要でしょ?」


「相棒ねぇ…行けんのか?俺の最悪の想定じゃあ、お前は死ぬことになるが」


 俺の想定は、アルを生け贄に悪魔を特殊召喚!って感じだ。


「…大丈夫だよ。だってあなたを盾にするから」


「お前はここで待ってろ」


「いやいやいや、冗談だって…」


 俺からすれば、冗談に聞こえたとしてもお前を連れていくと言う選択肢は無い。明らかにこちら側の足枷になるからだ。


「まあ、黙ってここで待っとけ。この家には母さんが居るからな。俺の近くよりも安全だ」


 まだ肉体的には子供の俺より大人の母さんの近くに居たほうが良い。


「そこまで言うならそうするけど…」


「なら善は急げだ。早速聞いてくる」


「えっ、ちょっ、…流石に早すぎない?」


「いいや大丈夫だ。策なんて考えても、俺の能力じゃ魔術を使える相手には勝てっこないからな」


「…絶対に帰ってきてよ?約束出来ないなら殺すからね」


「任せろ。俺は80超えるまで生きてから死ぬって、今決めたからな!」


 そうして俺は家を飛び出し、アルの家へと向かった…。

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