第19話 授業と考査
教師にとって最も大切なのは授業です。「学習指導要領」というものがあって、教える内容を指定しています。ただ、例えばぼくがよく担当する「公共」(かつての「現代社会」)は現在週2時間に設定されていますが、教える内容が多いうえに、グループワークや調べ学習などをするようにも指示されていて、とても週2時間では教科書の内容をすべて教えることはできません。
教科書の執筆をしている方たちは色々と工夫をしていて、その通りに進めていけば生徒の力もつくと思うのですが、それならば昔のように週4時間、あるいは週2時間を2年間に分けて実施するというようにしてもらいたいと思うことが多いのです。
教え方も、生徒の層によって変えていかなければなりません。ぼくは進学校から学び直しの学校まで幅広く経験し、そのたびに授業の組み立てを一からしてきました。進学校の生徒は教科書に書いてあることの説明は不要で、そこから発展した内容の授業をしていかないと、大学入試には対応できないということがわかりました。中堅高では教科書の内容についての説明に加えて、少しばかり踏み込んだ内容の授業にしておかないと退屈する生徒も出てきます。学び直しの学校では、教科書に出てくる語句について、わかりやすく説明するところから始めなければなりません。教科書よりも独自の教材を必要とします。
ぼくが一番苦しむのは定期考査の問題です。進学校では大学入試問題を引用することも多かったです。新聞の社説を転載し、その内容について記述させたりもしました。なるべく問題数を増やし、記号を選択させる質問は減らしました。
学び直しの学校では問題数は減らし、選択肢を示して選ばせるようにしていました。むろん授業で扱わなかったことは一切出題しません。
難しいのは中堅高で、どのレベルに合わせていくかの調整には今も苦しんでいます。
同じ科目を複数の教師で担当することが多いので、一番大事なのは平均点です。教務内規というものがあり、担当者が変わっても考査の平均点はある程度同じくらいにそろえなければならないのです。担当者によって平均点が高すぎたり低すぎたりしては、公正に授業をしたことにはなりません。
高校の授業は絶対評価なのだから、変に調整するよりも全員の生徒が試験で満点を取ることを目標にしたいのですが、現実にはそうもいかないのが事実です。
そして、通年の評価については、試験の点数以外の要素も含めなければなりません。
ここが実に難しいところなのです。
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