第2話 対教師暴力にも処罰なし

 中学校までは義務教育です。ただし、この場合の「義務」は、「保護者がその子弟に教育を受けさせる義務」であって、「学校に行かせる義務」ではありません。まして「児童、生徒が学校に行く義務」でもないのです。

 逆に児童、生徒には「教育を受ける権利」があります。権利というのは本人の責任で行使すべきものです。さらに「学校に行く権利」でもないという、そこらあたりをはっきりとさせておきたいと思うのです。

 というのも、僕が若い頃に勤務していた中学校で、学校に来て勉強もせずに遊んでいる生徒たちがおり、その生徒たちは対教師暴力を平気でしていました。ぼくも被害にあった一人でした。

 その時、管理職はぼくに「被害届を出すか」と聞きました。当然です。暴行を受けたことははっきりしています。しかも授業中に他の生徒たちの目の前でヘッドロックをかけられ、髪を引っ張られたのです。証人は授業を受けていた生徒たち全員です。

 しかし、結局僕は被害届は出しませんでした。というか、出せませんでした。管理職は、必死になってぼくに被害届を出すことのデメリットを説くのです。出すかといわれたので出すと答えたのに、出さないように話をもっていくのです。

 ぼくが被害届を出すデメリットの最大のものは管理職に責任がかかってくるということだったのでしょう。本人たちはそれは決して口には出しませんでしたが。

 暴力行為を行った生徒たちはそれに対する罰を受けることはありませんでした。自ら教育権を放棄し、教室にも入らず好き勝手なことをしたり、学校に来ないで外で遊び歩いていたりしました。保護者は、学校に行かない生徒たちに対して何もしていません。教育を受けさせる義務を怠っていたのです。学校に行かなくても、その能力に応じた教育を受けさせることはできます。家庭教師をつけてもよし、学習塾に行かせてもよし。そういう努力を放棄していたのは保護者でした。

 そして、それに対し保護者に何かアドバイスをしたりするということや、保護者に義務を履行するよう指導したりということを中学校も教育委員会もしていません。

 それどころか、彼らは三年で中学校を卒業し、中卒の資格を手に入れているのです。明らかに、保護者は義務を怠り、生徒は権利を放棄しています。なのに、形式的には彼らは義務教育の六年間の教育課程を習得したことになっているのです。全く持っておかしな話です。

 そのからくりを職員会議で見せられ、僕は唖然としました。

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