第13話 覚醒への道

最初は信じられなかった。だってAクラスの人は本来いないはず。でも、彼はここにいる。

咲「冬季!?なんでここに?」

冬季「湖エリアで争ってた生徒がみんなより早く避難してて、こっちに連絡が来たんだ。今すぐに動ける者は向かってくれってね。それを聞いて、飛ばしてここまで来たってこと。」

咲「そうだったんだ。」

冬季「よく頑張ったな。後は任せろ。」

その言葉はとても優しく、安心感があった。

そういえば、受験の時もこんな感じだったなぁ。

冬季「さて、お前が誰かは知らないけど俺の友達を傷つけといて、無事で済むと思うなよ?」

ロキ「はは!いいね、もっと面白そうな奴が来た!」

ロキはまるで遊ぶ前のようにワクワクした顔を見せた。

ロキ「じゃあ、始めようか!」

冬季「あぁ、すぐに終わらせてやる!」

そう言ってお互いが相手に突っ込んで行った。

ロキと冬季が斬り合いを始めた途端、周囲に凄まじい衝撃が走った。

2人の間ではまるで嵐でも起きてるかのように斬撃が飛び交っていた。

ロキ「すごいすごい!さっきの教員よりずっと速い!ずっと鋭い!」

冬季「流石に一筋縄ではいかないか。」

そこから更に2人のギアが上がる。

碧「なにこれ、凄すぎる。」

穂乃香「目で追えません。」

雫「あれが冬季さんの実力....」

知鶴「普段のあの人からは全く感じられなかったのに。」

あまりの戦闘に全員が息を飲む。だがその時、

ヴリトラ「ロキ、流石に遊びがすぎるぞ!」

ヴリトラが凄まじい踏み込みを見せ、冬季へ突きを放った。

冬季「見えてるよ。」

しかし冬季は斬撃の嵐の中その攻撃を躱して見せた。そのまま冬季は一度距離をとる。

冬季「流石に二対一は卑怯じゃね?」

ヴリトラ「卑怯?何を言う。これも1つの戦法だ。」

ロキ「ちょっとヴリトラ!俺が遊んでたんだから邪魔しないでよ。」

冬季「俺も一対一を邪魔されるのは嫌だな。だから」

そう言って冬季は2人の後ろを指さした。

冬季「そいつと遊んでてくれ。」

その瞬間、後ろから爪で切り裂くような攻撃が2人に襲いかかる。

ロキ「ふぅぅぅ!」

ヴリトラ「ちぃぃぃ!」

しかし2人は間一髪その攻撃を躱した。

誠一郎「あれ!?捉えたと思ったんだけどな。」

その攻撃を仕掛けたのは冬季と同じAクラスの生徒、松風誠一郎くんだった。

誠一郎「そんで冬季。俺はどっちをやればいいの?」

冬季「あのヴリトラって呼ばれてた方を頼む。」

誠一郎「了解。じゃあ、タイマン楽しんでねー。」

そう言って誠一郎くんは羽から翼を生やし、腕はライオンの爪のように鋭く尖らせた。

誠一郎「そこの堅物!冬季に代わって俺が遊んでやるよ!」

その瞬間、誠一郎くんはヴリトラへと突っ込んで行った。

ヴリトラ「悪いが遊ぶ時間はない。最速で死んでくれ。」

ヴリトラは迎え撃つ体制に入る。

誠一郎「はぁ!」

だが、それよりも速く誠一郎くんが再び爪での攻撃を仕掛ける。

ヴリトラ「ぐぅ!」

その攻撃をヴリトラは避けられず、そのまま直撃した。

ヴリトラ「ほぅ、中々の威力だ。面白い。」

ヴリトラも予想外の威力に思わずニヤける。

その戦闘とは別に、ロキと冬季も再び斬り合っていた。

ロキ「やっぱりすごい!君ほんとに学生?」

冬季「そういうお前は何者なんだ?」

ロキ「俺はある組織の幹部、ロキ。魔人だよ。」

冬季「魔人だと?」

魔人。魔物とは違い、言葉を話せ会話ができるほどの知能を持ち、人間に近い姿をしている。

魔物より数段強く、Aランク魔物が50体いて、やっと普通の魔人と同じくらいだ。

冬季「俺らを潰しに来たのか?」

ロキ「まぁそんなとこ。でも、君達ほどの実力者が来るとは思ってなかったなぁ。でも、楽しいからいいや!」

そう言うとロキはまた笑みを見せる。

ロキ「ほらほら、もっとギア上げてこうよ!」

冬季「まだ上があるとはな。面白い!」




その頃、誠一郎くんとヴリトラは一進一退の攻防を繰り広げていた。

誠一郎「頑丈だな。肉が厚いのか?」

ヴリトラ「自身の能力を教える真似をすると思うか?」

誠一郎「別に、そんなの期待してないよ。」

そう言うと誠一郎くんはゆっくりと降りてきた。

ヴリトラ「空中ごっこは終わりか?」

誠一郎「あぁ、お前は別の方法で潰す。」

その瞬間、彼の背中から羽は消え逆に足が蛇のような形になり、全身に鱗をまとった姿となった。

ヴリトラ「なんだそれは。まるでキメラじゃないか。」

ヴリトラはあざけるように言う。

誠一郎「そんな余裕ぶってられるのも今のうちだよ?」

誠一郎くんが、ヴリトラへと真正面から突っ込む。

ヴリトラ「ふん!」

ヴリトラは自身の槍で貫こうとした。

ヴリトラ「はぁ!」

誠一郎「ニョロりとな」

しかし、その突きはぬるりと躱されヴリトラは逆に爪で切り裂かれた。

ヴリトラ「ちっ!(なんだ?今までの攻撃とは何か違う)」

ヴリトラはその違和感にすぐ気づき、原因を突き止めた。

ヴリトラ「貴様、毒を仕込んだな。」

誠一郎「あ、バレた?そうだよ。結構強めの神経毒をね。」

ヴリトラ「ふん!小癪な真似を。(毒などすぐに治せるが、面倒な相手だ。)」





?「..........」





ヴリトラ「ぐっ!(この感じ、まさか!)」

それは突然だった。突如ヴリトラの顔から冷や汗が出始める。

誠一郎「(どうなってる。そんな毒は仕込んでないぞ?)」

ヴリトラ「はい、はい。承知しました。」

ヴリトラはまるで誰かと電話してるかのように独り言をつぶやき、

ヴリトラ「悪いがもうお前には構ってられない!」

そう言ってヴリトラはロキの方へ向かう。

ヴリトラ「ロキ!余ってるゾンビカプセルを全てばらまけ!撤退するぞ!」

ロキ「えー。まぁしょうがないか。」

冬季「逃がすか!」

冬季がロキへ突っ込んで行く。

ロキ「俺も本当はもっとやりたいんだけど、大将の命令だし、ごめんね。(パチン)」

ロキが指を鳴らした瞬間、冬季の足元が爆発する。

冬季「ちぃぃぃ!」

冬季は何とかその爆発から逃れられたが、その隙に奴らはカプセルの中身をばらまいていた。

ロキ「じゃあね!斑目冬季くん。また会おうね。」

そう言うとロキは煙幕を出し、姿をくらました。

冬季「くそ、逃したか。」

煙が上がる頃にはもうロキ達はいなかった。

冬季「先生、大丈夫ですか?」

源「あ、あぁ。あちこち痛いが何とか大丈夫だ。」

冬季「よかった。すぐにここを出ましょう。奴らの話が本当なら...」

その時、地面から大量のゾンビが出てきた。その量は最初に私達へ放ってきた量の比にならないほどだ。

咲「何、この量。」

冬季「ちっ!あいつら、面倒なことを。」

誠一郎「これはちょっとまずいかも。」

碧「私達も加勢するわ。」

穂乃香「お手伝い致します。」

そう言って4人は、迫ってくるゾンビ達を片っ端から倒していく。だが、流石に数が多すぎる。何体かがこっちに迫ってくる。

誠一郎「まずい!」

今の私にゾンビたちを退ける力は残ってない。私はここで守られて終わりなの?非能力者からここまで来たのに、結局なにも変わってないじゃない。

咲「そんなの、駄目だよ。」

私は無理やり自身の体を動かす。

雫「咲さん!?駄目です。安静にしてないと。」

咲「ごめんね、雫ちゃん。」

私はもう、無力なままで終わりたくない。強くなるって決めたの!

咲「来るなら来なよ!ゾンビ共!」

そう言った瞬間だった。突如、私の体が赤く光った。

咲「え?(なにこれ)」

ベルザ「これは...」

ベルザも困惑している様子だった。

碧「何それ!(私の憑依みたい。)」

私達の困惑をよそに、その光が私を包んだ。

咲「おお!」

その光は私の背中へ移動し、羽の形となった。

咲「羽が...生えた?」

誠一郎「おお、すごいすごい!あれが例の吸血鬼化かぁ。」

ゾンビ達「ゔぁぁぁぉぁ」

そんな事をしてるから間にゾンビがもう間近まで迫っていた。

咲「(とにかく今はこいつらを倒さないと!)

喰らえ!」

私は魔力を血に変えて、ゾンビ達へ放った。

ゾンビ達「うがぁぁぁぁ!」

その威力はさっきとは比にならないレベルで、周りのゾンビが全員消滅した。

穂乃香「なんですか。あの威力」

知鶴「私の時より、ずっと強いじゃない。」

冬季「あれが本来の威力。いや、あるいはもっと...」

どうなってるか分からないが、とにかく今はこの場から抜け出さないと。

咲「冬季!後ろは任せて!」

冬季「わかった!頼んだぞ。」

そこから、穂乃香さん、誠一郎くん、冬季に前衛を任せ、私と碧が後方支援と言う形で進んでいき、何とかドームを抜け出した。

雫「やった!抜け出せました!」

知鶴「ええ、もうダメかと思ったわ。」

誠一郎「なんとか間に合って良かったね。」

源「2人とも来てくれてありがとう。そして4人もよく頑張った。」

咲「はは、ありがとうご、ざ、」

その言葉を聞いたと同時、私は糸が切れたように倒れた。

冬季「咲!?大丈夫か?」

碧「ごめん、私ももう無理。」

碧も限界を超えており、その場に倒れた。

穂乃香「碧さん!しっかり!」

その言葉聞いた後、私と碧の意識は闇へと消えた。

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