真夏の日差しが照り付ける砂浜を歩く。
二人の少女。
黒いレースの日傘を回す。
浜に打ち上げられた沢山のクラゲたち。
潮の匂いと微かな腐敗臭を、その透明な
身体の中に閉じ込めているのだろうか。
カッターで切り裂いてみると、とろりと
流れ出しては溶けて行く。
学校では、日傘の所持を義務付けられて、
この時期には必ず持ち歩かなければ
ならないという。
けれども強い風に翻弄されて、黒い
日傘が海へと流されてしまう。
その日、少女の姿が消える。
嵐の予感を含み、浜辺には又、沢山の
クラゲの死骸が打ち寄せられる。骨のない
軟体は殆どが水で出来ている。
残された少女は、只管にクラゲを潰す。
骨のない、クラゲの死骸、日傘の残骸…。
そして。
静謐な、嵐の前の海辺の光景。まるで昏い
絵画を見る様な感慨と感銘。