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死に水が溢れる

死に水が溢れる

棺之夜幟

おすすめレビュー

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★★★
★9
3人が評価しました
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本文ありのおすすめレビュー

  • 小野塚 
    1637件の
    レビューを投稿
    ★★★ Excellent!!!

    嵐の予感を抱き友引の海でクラゲを探す。

    真夏の日差しが照り付ける砂浜を歩く。
     二人の少女。
           黒いレースの日傘を回す。

     浜に打ち上げられた沢山のクラゲたち。
    潮の匂いと微かな腐敗臭を、その透明な
    身体の中に閉じ込めているのだろうか。
     カッターで切り裂いてみると、とろりと
    流れ出しては溶けて行く。

    学校では、日傘の所持を義務付けられて、
    この時期には必ず持ち歩かなければ
    ならないという。

     けれども強い風に翻弄されて、黒い
    日傘が海へと流されてしまう。

       その日、少女の姿が消える。

    嵐の予感を含み、浜辺には又、沢山の
    クラゲの死骸が打ち寄せられる。骨のない
    軟体は殆どが水で出来ている。

    残された少女は、只管にクラゲを潰す。
    骨のない、クラゲの死骸、日傘の残骸…。

      そして。

    静謐な、嵐の前の海辺の光景。まるで昏い
    絵画を見る様な感慨と感銘。


    • 2025年7月6日 14:03