第3章 取り戻す正義

メストア


「……勇者ってなんなんだろうな。

仲間を守れなくて、何が勇者だ……。

俺はまだ弱い。どれだけ力を振り絞っても、目の前の仲間すら守れなかった。


でも……それでも。

アルベリスを、取り戻すことができた。

彼女の心に手を伸ばせたのは、確かに俺だった。


だから、もう逃げない。

過去の俺が間違っていたとしても、勇者失格だとしても……俺は、ここからやり直す」



アルベリス


「私は……間違っていたの?

愛することも、憎むことも、傲慢に求めてしまった。

結局、自分で自分を壊しかけた。


それでも……メストアは手を伸ばしてくれた。

憎んで、嫌って、拒絶した私に……“ありのままでいい”と言ってくれた。


……怖い。

でも、うれしかった。

あの人を――もう一度、信じてみたい」



フェアヴァールト


「……悔しいな。

策を巡らせても、最後は押し切られた。

それでも、俺の作った剣も槍も……確かに仲間を救った。


ホーフムートを斃しても終わらない。

この先には、もっと強大な敵がいる。

魔王をも討つ策を、俺は必ず創り出す。


“諦めの化身”だった俺はもういない。

次は、俺の知恵で未来を切り拓く」



グラウブ


「俺はまた……無力だった。

魔王の力を奪われ、記憶すら代償にして……それでも、守れなかった。


最後に呼んだのは――アルベリスの名。

それは、俺の無意識に刻まれた“正義”だったのかもしれない。


……正義を取り戻す。

この命を削ってでも、もう一度。

俺は、必ず――」



ナレーション


勇者は仲間を守れなかった。

傲慢に愛した少女は救われながらも、迷いを抱いている。

策士は新たな武器を求め、魔王は記憶を代償に正義を誓う。


――それぞれの道はまだ途上。

だが、必ず交わる時が来る。

その時こそが、真の戦いの始まりである。



次回予告


第37話 リスタート


「失ったものの先に、再び出会えると信じて――」

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