第2話:女神と俺と砂漠

 「情報は頭の中にある、俺はあんたと組んで生きれば良いと?」


 目覚めたジャスティンは両目から炎を吹き出しソレイユを問い詰める。

 自分が下心込みで封印を解いたのが異国の古代の女神。

 おまけに使徒へと改造された、人生の劇的変化である。


 「はい、おめでとうございます♪ ヒロインと運命の出会いですよ♪」

 「いや、自分でヒロインとか言うか? 確かにあんたの見た目に惚れたが」

 「大丈夫です、私もあなたは好みですし問題なしです♪」

 「いや、改造するって良いのか?」

 「他の神々も、お気に入りを伴侶として天へと連れて帰ってますから♪」


 しれっと笑顔で答えるソレイユ、悪気が全くない。

 人としての機能は失ってないとか強化されてるとか言い出す。


 「ああ、何か右目の方にそう言った情報が文字で浮かんだ」

 「見事に神眼が機能してますね♪」

 「まあ、貰った力をくれた人の為に使うのは使い道の一つだな」

 「考え方も好みです♪ 私と一緒に、最終的には夫婦神になりましょう♪」

 「じゃあ、これから宜しくなソレイユ♪」

 「はい、永遠に宜しくお願いいたしますねジャスティン様♪」


 ジャスティンの右目が、彼に女神ソレイユからは逃れられないと伝える。

 自分はもう、この女神の眷属と化してしまったのだと彼は理解させられた。

 普通なら発狂ものだが、彼の精神は狂気に病むことはなかった。

 狂気ではなく勇気の炎が彼の胸に燃えていた。


 「貴方のプロデュースもマネージメントもセコンドもお任せ下さい♪」

 「俺はソレイユ一座の所属の役者とか闘士みたいなもんか?」

 「ええ、国や他の神よりも手厚くお世話させていただきますホワイトですよ♪」

 「いや、ホワイトな神様なら封印とかされないのでは?」

 「異教徒のプロパガンダです、風病被害です!」

 「いや、俺も一応異教徒の子なんだが?」


 ソレイユの言葉に呆れるジャスティン。


 「太陽信仰なら問題なしです、太陽神は皆親戚ですから♪」

 「俺の国の神殿で、その情報が真実か確かめよう」

 「ええ、私が復活出来た事が何よりの証♪」


 胸を張ってドヤ顔をするソレイユ。

 ジャスティンは赤面して目を背ける。


 「あら~~♪ 私に魅力を感じてますね~~~♪」

 「いや、そりゃお前って馬鹿野郎!」

 「ヤンチャ系少年のツンデレは吸うと良いですねえ♪」

 「誰がヤンチャ系だ!」


 ソレイユとの漫才を繰り広げたジャスティン。

 この迷宮を出て、サンライト王国の魔法学園に帰還する事に決める。


 二人で迷宮内を進む。

 ソレイユの使徒となったジャスティン、壁画の意味や古代文字が理解する。


 「太陽の女神ソレイユ、その気性激しく民は困り果てって翻訳されるんだが?」

 「謀反人達のデマです、氷教団を引き込み私を貶めた輩を信じてはいけません!」

 「まあ、遥か昔の事みたいだからな異国の事だからわからんけど」


 出て来た黒トカゲを倒して焼肉にして食いつつソレイユと話をする。


 「イヤッホ~~ウ♪ イエス日光、ノット寒さ♪」

 「……嘘だろ、砂漠! マジでどこだよここ?」


 石造りの迷宮を出たジャスティン達。

 ソレイユはハイテンションでジャンプして喜ぶ。

 ジャスティンは、見渡す限りの砂漠にうんざりしていた。


 「現在位置は、今の時代で言うと南方砂漠? 我が王国は時の彼方ですねえ」

 「待てよ、別の大陸じゃねえか!」


 ソレイユは太陽を見て呟き、ジャスティンは世界地図を思い出して叫ぶ。

 彼女の使徒となったからか、暑さや陽射しから苦しさは感じない。

 天からも大地からもエネルギーを注がれているのが感じられた。


 「なるほど、ジャスティン様は西方大陸出身ですか」

 「いや、どうやって帰ればいいんだ俺? 金はないぞ?」


 ジャスティンはベルトポーチの中から、小さな革袋を取り出して中身を見る。

 中身は銀貨が十枚ほど、使い道があるのかわからない。


 「大丈夫です。飛んで行きましょう♪」

 「いや、飛行魔法って魔力消費が多いんだが?」

 「お任せ下さい、日光浴をしてから私の魔法で参りましょう♪」

 「流石は神、こういう時は頼もしく見えるぜ」


 両手を腰に当てて胸を張り豪快に笑うソレイユ。

 ジャスティンは、何となくだが彼女を信じられる気がしてきた。


 「待て、何か嫌な予感がする」

 「敵襲が近いのかと、私達の前方に異変が見えます」


 ソレイユが前方を見回すと同時に、砂の中から白い巨大ミミズが飛び出した!


 「げげ~~~! あれはデスワーム、マジか!」

 「ジャスティン様、今こそ我が力を振るう時です♪」


 ソレイユが拳を握る。


 「良し、熱血の炎鎧!」


 ジャスティンが叫ぶと彼の体を炎が包み、真紅の甲冑を纏わせる。


 「良いですねえ♪ ああ、剣も強化しております♪」

 「いつの間に! 何か金の鳥の鍔とか形が変わってる!」

 「名付けてサンバードソードです♪」

 「うん、そのセンスはどうかと思うが行くぜ!」


 ジャスティンはサンバードソードの黄金の刃に炎を灯して突進!


 「喰らえ、ファイヤーソード!」


 のしかかり押しつぶそうとするデスワームを、絹を裂くがごとく切り裂いた。


 「ちょ、マジかよ! この剣と鎧、ヤバいぜ!」


 塔の如き太く大きなデスワームを一撃必殺した威力に驚くジャスティン。


 「イヤッホ~~ウ♪ 流石は私の眷属、素敵です♪」


 ソレイユはジャスティンの様子を、自分の周りに浮かぶ機械の目玉に記録した。

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