撃滅のファイヤーソードマン お人好し熱血バカ、最強勇者に成り上がる!

ムネミツ

第一章:女神との邂逅編

第1話:飛ばされて古代迷宮

 「……いてて、校長のロリババア! ソロでダンジョン探索とか鬼かよ!」


 落下したかのように床に尻もちをついて呻くのは、野生的な瞳の赤髪の少年。

 彼の服装は白い長袖シャツに赤いベスト、灰色のスラックスに黒皮のブーツ。

 腰には大きめの茶色い革のベルトポーチと、赤い皮の鞘に収まり士両手剣。


 剣士と学生が混ざった風体は、黄色い砂壁と石畳の遺跡にはそぐわなかった。


 「ダンジョン実習で爆発オチをやらかして、校長室の罰掃除中に壺を割って」


 赤髪で野性的な目付きの少年、ジャスティン・バーニングハート。

 魔法学園の校長の転移魔法により、道の古代迷宮へ飛ばされた学生だ。


 ジャスティンはは立ち上がり、己の失敗を指折り数えてみる。


 「ああ、自分でもやっちまったとは思うがマジでソロ探索はキツイ!」


 ジャスティンは悔し顔で叫ぶ、ダンジョンなどの冒険には備えがいる。

 騎士が持つような盾や鎧は、軍属や冒険者ではないので持っていない。

 愛用の両手剣のみが武器であり防具だ。


 食料はポーチの中の回復パンと魔力ドロップ、水はないと超最低限。

 仕組みかは不明だが迷宮内の光源は確保されているのを確認する。


 「あのロリババア、帰ったら絶対に殴る! 負けてたまるか!」


 壁に描かれた壁画や古代文字など気にせずに進むジャスティン。

 今はどうにかして生き延び、帰還せねばならない。


 「迷宮が遺跡でもあるなら生活跡とかあるはず、ってマミーかよ!」


 歩いて来て十字路に差し掛かったジャスティン。

 彼の目の前には、両目を怪しく光らせた包帯塗れの怪物達がやって来た。


 「上等だ、火葬してやる! 天より地に降りし火の精よ、怒りと共に立ち上がれ」


 ジャスティンは左掌を迫りくるマミー達に突き出し、早口で詠唱する。


 「波打て炎、ブレイズウェーブ!」


 ジャスティンが呪文の名を叫んだ時、マミー達の足元から火柱が上がった。


 『ギャ~~~~~!』


 真紅の炎に包まれ悲鳴を上ながら、マミー達は燃え尽きて行く。

 灰も残らず床に焦げ跡だけを残して消えたマミー達。


 「哀れな亡者達よ、天に帰って生まれ変われ」


 仕留めたマミー達に祈りの言葉を奉げるジャスティン。

 左右の道は気にせず、マミー達が来た方向へまっすぐ進んで行く。


 「ここで行き止まりか。 ……って、女が氷漬けになってるっ!」


 辿り着いた広間、魔物とかは周囲にはいない。

 だが、ジャスティンの目の前には氷漬けにされた美しい女性が鎮座していた。 


 「マジかよ、事情は知らねえが放置できねえ!」


 白い貫頭衣タイプのドレスを纏った氷漬けの女性。

 前髪が切り揃えられた短い黒髪、目鼻立ちの整った顔に豊満な褐色肌。

 女性の額の冠や首飾りなどは、太陽を模した金の装飾。


 ジャスティンもまだ十代半ばで思春期の少年。

 美女には見惚れるし、色恋への欲もある。


 「よっしゃ、イチかバチかだ今出してやる! ファイヤーソード!」


 下心はあったが、生きてるなら助けたいしそうでなければ火葬して弔おう。

 ジャスティンは腰の両手剣を抜き、刃に魔法の炎を灯し氷へと当てた。


 「うげ、何か魔力が据われる感じがする! けど、負けてたまるか持って行け!」


 ジャスティンは異変を感じるも、全力ベットだとありったけの魔力を放出する。

 ジャスティンが魔力切れで、炎が消えた両手剣を床に落とし意識を失いかけた時。


 氷の中の女性が目覚め、青い瞳を見開く。

 同時に、内側から氷が砕けると倒れ込んだジャスティンを女性が受け止めた。


 「……出会えた、私の勇者様♪」

 「い、生きてたっ!」


 ジャスティンを勇者と呼んだ女性は、青い瞳を光らせジャスティンを眠らせる。

 女性は、彼を担ぎ上げて両手剣を拾うと光り輝きジャスティンと共に転移した。


 石造りの部屋に現れた女性とジャスティン。

 女性は部屋の中心にある、円形の石の寝台にジャスティンを置く。


 「私を目覚めさせてくれた勇者様、これは運命の出会いです♪」


 ジャスティンを見下ろし、両手を頬に当て恍惚とした笑顔で彼を見つめる女性。


 「女神ソレイユの名の下に、汝に祝福を与えます♪ 出でよ太陽の心臓♪」


 女性、ソレイユは右手の上に燃え盛り心臓の如く脈動する火の玉を浮かべる。


 「出でよ炎の神眼しんがん♪」


 次にソレイユは、左手の上に二つ小さな火の玉を浮かべる。


 ソレイユが呼び出した火の玉は、ジャスティンの胸と両目に吸い込まれて行った。


 「ぐあああ! な、なんだこの力は~~!」


 ソレイユに火の玉を入れられたジャスティンは、両目と胸から炎を上げて叫ぶ。


 「勇者ジャスティン、あなたは女神の英雄へと生まれ変わるのです♪」

 「ぐわ~~~~っ!」


 ジャスティンが絶叫し、彼の全身が燃え上がる。

 炎が消えると、ジャスティンは全身を炎を模した真紅の鎧兜に身を包んでいた。


 「女神の武具、熱血の炎鎧えんがいもお似合いですよ勇者様♪」


 炎の甲冑に身を包んだジャスティンを見下ろしながら微笑むソレイユ。

 ジャスティンは女神ソレイユの手により、彼女の使徒へと改造された。


 「うう、頭にいろんな情報が流れて来て落ち着かねえ!」


 鎧が消えると同時に目を覚まし、起き上がるジャスティン。

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