第3話:火の玉での帰還

 「改めて、とんでもない体にしてくれたんだな?」

 「はい、それはもう物語の英雄さながらに♪」

 「力の使い方を気を付けねえと不味すぎるんですが?」

 「大丈夫です、まだ十段階の一の力も出してませんから♪」

 「強大な怪物倒して、十分の一にも満たないのかよ!」


 ジャスティンはソレイユの元へと戻り、炎天下の下で漫才を繰り広げる。

 変身と言うべきジャスティンの鎧の装着状態は解除されていた。


 「無辜の民に危害が出ぬよう、入念に安全設計をしております♪」

 「俺自身の手でも、入念に安全性の検査しないと駄目だな」


 ジャスティンは、この女神の言葉を鵜吞みにしないようにしようと誓った。


 「夜や雨天の日、深海や寒冷地では性能が低下しますのでご注意くださいね?」

 「いや、性能落ちるんかい!」

 「安全対策の一環です、後は他の神々との兼ね合いで」

 「ああ、神様同士でも取り決めとかあるんだな」


 たじろぐソレイユの言葉に察したジャスティン。

 そういや、神様同士の喧嘩で世の中が大変になったとか神話を聞いた気がした。


 「じゃあ、サンライト王国って国まで転移できるかな?」

 「ええ、できれば今の南方を旅してみたいのですが」

 「まあ、それは後回しにしてくれたら助かる」

 「はい、では私の手にお捕まり下さい♪」

 「え、女子の手を握るって何か恥ずかしいんだけど?」

 「ピュアボーイですか! 私以外の女子じゃないから問題なしです!」


 ソレイユにがっちり両手首を掴まれたジャスティン。


 「それでは行きますよ、ファイヤー!」

 「え、ちょっっとまった~~~~っ!」


 ジャスティンとソレイユは、足裏から爆炎を上げて空へと飛び立った!


 「ちょ、周りが星空の世界? 俺達の世界が青くて丸っこい!」

 「はい、宇宙と言われる星の世界ですよ♪」

 「俺が生きているのは、あんたの眷属だからか?」

 「イエス、太陽神は星の神でもあるのです♪」


 宇宙に出た二人は、自分達の世界がある星を見下ろす。

 ジャスティンは地上にいる時よりも力が漲るのを感じていた。


 「さて、それではこの辺りですかねえ?」

 「西方大陸の真上だな、サンライト王国はあの変かな?」


 ジャスティン達は宇宙を漂い軌道を修正して再突入の用意を行う。


 「座標固定、目標はサンライト王国!」

 「もしかして、このまま落ちるのか?」

 「勿論、日が空に昇って海に沈むがごとくです!」


 ジャスティンとソレイユは抱き合い、火の玉となって大気圏へ再突入した。


 「うおおおお! 落ちる~~~!」

 「ヒャッハ~~~、ランデブ~~~♪」


 サンライト王国の魔法学園のグラウンドめがけて落ちていく二人。


 「隕石だ~~!」

 「嘘でしょ~!」

 「占星術学科は仕事しろよ~~!」

 「助けて~~~!」


 グラウンドにいた生徒達が大混乱で逃げ出す中、ジャスティン達は帰還した。


 「……うう、無事に着地できたか?」

 「ええ、見事な着地です♪」


 盛大に土煙を上げて着地したジャスティン達。


 「おい、あいつジャスティンじゃないか?」

 「嘘だろ、またかよあのファイヤーソードマン!」

 「ちょっと、武装風紀委員呼んできて~~~!」


 ジャスティン達を目撃した、彼と似た制服姿の生徒達が叫び出す。


 「ジャスティン様、民達が賑わっておりますね♪」

 「いや、俺達がお騒がせしまくってんだよ!」


 ソレイユのボケにツッコむジャスティン。


 「こら~~~~~! また貴様か、ジャスティン!」


 黒い軍服風の詰襟ジャケットを纏い、槍で武装した一人の生徒が現れる。

 眼鏡をかけた真面目そうな目付きの、銀髪ポニーテールの美少女だ。


 「む、不敬ですね! 神ですよ!」

 「馬鹿、武装風紀委員の方が学園じゃ上位だ!」


 銀髪の少女の登場にムッとするソレイユ。

 ジャスティンはソレイユを黙らせる。


 「ステータス開示、古代神ソレイユ? ……これは、校長案件だな馬鹿者が!」

 「悪いなリーナ、複雑な事情があるんだ」


 溜息を吐くリーナに詫びるジャスティン。


 「貴様と言う奴は、二人ともついてこい!」


 呆れながら叫ぶリーナ。


 「ああ、大人しく従うよ」

 「この学園とやら、特殊な世界のようですね?」


 リーナに先導されて白亜の校舎に入るジャスティン達。

 校長室に通された彼らは巨大な執務机に見合わぬ少女と対面した。


 「驚愕っ! ジャスティンよ、貴様は女神の封印を解いたのか!」


 ピンク色のボブカットに黒い魔女ルックの少女。

 校長であるマギーがジャスティン達を見て顎を落とした。


 「何ですかこの幼子は? 不敬ですね?」

 「いや、校長だから俺より年上だから」


 不満げな顔のソレイユに突っ込むジャスティン。


 「観察! ジャスティンよ、女神ソレイユを責任を持って面倒を見よ!」

 「いや、色々と聞きたいんですけどねえ?」

 「女神には生徒の身分を与える、制服などは貴様の部屋に届けさせる!」

 「無視か! そしてソレイユと俺が同室かよ!」

 「あら、良い心がけですね♪」

 「決定、詳細は後日!」


 マギー校長の決断を喜ぶソレイユと、困惑するジャスティン。

 校長室から追い出された二人は、ジャスティンが暮らす学生寮へと向かった。

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