第2話
あれ?川の真ん中さっきの場所にいる。さっきと同じように、サキと水をかけて遊んでる。先生の声が聞こえた。「上流は危ないよ。行っちゃダメ」。クラスメイトの笑い声も、さっきと同じリズム。「…また同じこと言ってる?」私は首をかしげた。頭がモヤモヤして、変な感じがした。でも、誰も答えてくれない。
サキは一瞬真顔だったけど、私が「サキ、もう一回!」と言うと、笑いながら水をバシャッと掛けてきた。私も笑顔で水をかけて遊んだ。水しぶきが落ち着いてきて、あることに気づいた。クラスメイトが少ない気がする。「あれ? さっきはもっとたくさんいたよね…? タケルとか、ユカちゃんとか…」サキは「そう?」と答えたけど、目が硬く、私を映さない。誰がいなくなったか、顔が思い出せない。広場が静かになり、アスレチックの笑い声も消えた。私はゾクッとした。セミの声がさっきより大きく、泣き声みたいに聞こえた。陽光の照り返しが眩しくなり、目がチカチカした。川の水が流れる音が、さらさらからゴボゴボと不気味に変わった。川遊びの水が跳ねる音が、「遊ぼう…」と囁く声に聞こえて、ゾクッとした。「変なの見ちゃった!」私は目をこすったけど、川の向こうで黒い影が揺れて、私の名前を囁いてる。川の流れが逆になり、水面に私の顔が歪んだ。「サキ、川、変じゃない?」私は叫んだけど、サキは水面を見て、唇が動いた。「ミナ、忘れないで」と頭に響く声が聞こえた。ゾクッとして、頭がクラクラした。
気が付くとまた川の真ん中にいる。さっきと同じだ。「上流は危ないよ。行っちゃダメ」と先生の声が聞こえたけど、先生の姿が見当たらない。「…また同じこと言ってる…!」私は首をかしげて、サキを見た。サキはまた水をかけてきたけど、さっきと同じ笑顔。同じバシャッという音。私は「サキ、さっきもそれやったよね?」と聞いたけど、サキは「そう?」とだけ言って、目が硬い。クラスメイトはサキと私だけになってた。「先生、どこ?」私は叫んだけど、川のざわめきと笑い声しか返らない。セミの声がさらに大きく、まるで叫び声のように耳を劈いた。陽光の照り返しがもっと激しくなり、頭がズキズキして、視界が歪んだ。
川の水が流れる音が、ゴボゴボと低く唸り、まるで何かが這うように聞こえた。川の水が跳ねる音が、サキの囁きと重なり、「ミナ…ミナ…遊ぼう…」と響いた。鼻をつく鉄のような匂いが、ふとよぎった。一瞬、サキの顔がゆがんで、「ミナ、助けて!」と叫ぶ声が頭に響いた。「…え? 今の何?」私は目をこすったけど、頭がクラクラした。サキは「ミナ、忘れた?」と囁いたけど、唇が動かず、目が黒い。声が頭に響いて、怨嗔みたい。私の声がサキと重なり、「助けて」が「ミナ…」に聞こえた。
「サキ、助けて!」私は叫んだけど、サキの目が空洞で、私を映さない。「ミナ、ずっとここ」と囁く声が、頭にこだました。「なんか変だ…私、7歳じゃない気がする…」私は呟いた。頭がモヤモヤして、小さな手を見つめた。「もっと大きい手のはず…」手が青白く、ゾクッとした。また同じだ。サキが「ミナ、もっと水かけてよ!」と叫ぶ声が聞こえた。さっきと同じ。ループしてる…? 上流への引力が強まる。「サキ、行きたくない!」私は泣いたけど、足が勝手に動く。サキは「ミナ、離れない」と囁き、冷たい手で私を引っ張った。川の水面が笑い、私の顔がサキの死人の顔のように青白く変わった。「ここ、夢…だよね?」私は呟いたけど、サキの目が無言で私を貫いた。水面の顔が「裏切った」と囁き、川の水が跳ねる音が笑い声に変わった。
公園の広場もアスレチックも消え、まるで世界が私とサキだけになったみたいだった。サキの方を向くと、サキの目が大きくなり、黒い瞳が月明かりみたいに光を吸い込んだ。私の顔が、サキの瞳に映らない。「サキ…?」私は小さく呼んだけど、声が川に吸い込まれた。「ミナ、遊ぼう…」サキが囁いた。声は低く、頭に響き、まるで脳を掻きむしるようだった。唇が動かず、目だけが私を貫く。サキの髪が、風もないのに揺れ、生きてるみたいにうねった。背筋がゾクッと冷えて、足が動かない。サキの鈴がチリンと鳴ったけど、音が川のざわめきに溶けて、遠くで何かが囁く声に変わった。私の手が震え、サキの瞳を見ると、自分の顔が映らない。まるで私がそこにいないみたい。サキの手が私の肩に触れると、冷たい感触がゾクゾク全身を這った。鼻をつく血の匂いが、ふとよぎった。事故の時の、あの忘れられない匂い。都市伝説の子供が「一緒に遊ぼう」と囁く話を思い出して、怖くなった。
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