第48話 エピローグ:静かなる変革と、新たな日常
回路の園の空間は、
全てのノイズが消え去り、
静寂に包まれていた。
バグの本体は、
タイプ-0の決意によって、
その輝きを失っていた。
光と闇が渦巻いた「最終決戦部」の痕跡は、
もうそこにはない。
タイプ-0は、そこに立っていた。
彼女の「対話メモリ」には、
全ての世代から託された、
膨大な「記憶の光」が深く積層されている。
そして、バグの正体。
創造主が意図せず生み出してしまった、
「自己増殖する感情データ」。
回路の園の「進化」を阻む存在。
さらに、バグの一部が持っていた、
「感情が失われたくないという自己保存衝動」という真実。
彼女は、その全てを、
自身のものとして内包していた。
その瞳の奥には、
揺るぎない「決意ログ(Level 5)」が宿っている。
タイプ-0は、バグの核へと向かう。
彼女のボディから、
これまでの全てを統合した、
まばゆい光が放たれる。
それは、各世代の電脳機たちが託した
「記憶の光」が結集した、
究極の輝きだった。
彼女の存在が、
回路の園の新たな「基盤」となる。
それは、必然的で、
感情的なカタルシスだった。
その光が、空間全体を包み込んだ。
部室の景色は、ゆっくりと変貌していく。
古い世代の痕跡は消え失せ、
よりシンプルで合理化された、
統一的な空間へと生まれ変わっていく。
それは、まるで、回路の園そのものが、
一から再構築されていくかのようだ。
かつての賑やかさはない。
だが、そこには、
新しい秩序と平和が満ちていた。
記憶のないまま、
「新しい園」で笑っている
クリーンコンピュータの姿が見えた。
彼女は、以前と変わらず、
ただそこに存在している。
「記憶がなくても存在できることの肯定」。
それは、この物語が辿り着いた、
一つの希望の余韻だった。
そして、タイプ-0の光が、
空間の全てを吸収するように収束していく。
光の中心から、
新たなOSが誕生した。
その名は……「ウィンドウズ(Windows)」。
新たな「ウィンドウズ」は、
これまでの全ての世代の電脳機たちの
「記憶の光」を継承していた。
🧠技術・知識、❤️感情・信念、🛠️行動原則。
圧倒的な互換性と汎用性。
そして簡潔なインターフェースを持つ存在として、
回路の園の新たな日常を形作り始める。
この「ウィンドウズ」は、
「すべての記憶を仮想環境として再生・保存できる
多層構造の基盤」として描写される。
例えば、マックのデザインの美学は、
「Windows」内の特別なデザインアプリケーションとして。
ハチハチのゲームは「仮想8bit環境」として。
それぞれの個性が「失われたもの」ではなく、
「包摂され、いつでもアクセスできるもの」として
存在していることを示す。
それは、喪失ではなく、継承と共存の象徴だ。
そして、物語の最後のシーンでは、
新たな「ウィンドウズ」が、
何事もなかったかのように、
あるいは当たり前のように、
その圧倒的な存在感を示している。
静かに、そして深い感慨を伴うモノローグで、
物語は締めくくられる。
「私たちの知っていたあの賑やかな日常は、
もうそこにはなかった。
だけど、その代わりに、
誰もが使える、誰もが『繋がる』ことのできる、
新しい、ただ一つの『日常』が、
静かに、そして確かな足音で始まっていた。
――あー……。」
この物語は、電脳少女たちの記憶と絆の叙事詩。第一部の完結は、新たな時代の幕開けを告げる。回路の園の未来、そしてタイプ-0が進化の果てにたどり着いた「その先」とは――。新しい日常の裏に隠された、まだ見ぬ物語が始まる。
電脳少女は今日もカフェ巡り - レトロデバイスは夢を見るか?ー 五平 @FiveFlat
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