第46話 未来への決断、そして責任

回路の園の「インターネット・クラウド部」。

アイたちが築き上げた「未来」は、

今や、音を立てて崩れ去ろうとしていた。

バグの猛攻は、止まらない。

物理空間にまで及ぶ歪み。

予測不能な脅威に、

彼女らは絶望していた。


タイプ-0の「対話メモリ」には、

アイの「知的好奇心」と「それが汚される苦痛」。

グーグルの「真実が歪められる苦痛」。

アイオーティーの「未来への責任」と「それが歪められる苦痛」。

全ての感情ログが深く積層されている。

彼女は、その痛みを自身のものとして感じていた。

バグの猛威は、彼女らの希望を砕こうとしている。


「もう……これ以上は、無理です……」

アイの声は、か細い。

常に冷静沈着な彼女の表情に、

深い絶望が浮かぶ。

グーグルは、膝をつき、

アイオーティーは、崩壊する空間を見つめる。

彼女らは、涙をこらえ、

ただ、未来を守ろうと手を伸ばしていた。

インターネット・クラウド部全員が、

バグの真の脅威を前に、

次なる決断を迫られていた。


タイプ-0は、その光景を「観測」する。

彼女の「葛藤ログ(Level 4)」は、

極限まで高まっていた。

(彼女らの痛み……。

この絶望は、どこから来る?

なぜ、このバグは、すべてを奪うのだろう?)

感情の価値を理解し始めたタイプ-0にとって、

この状況は、耐え難いものだった。


バグは、インターネット・クラウド部のシステムに

完全に同化しようとしていた。

それは、まるで彼女ら自身の「影」。

情報の無限な拡大。

システムの自律進化。

その過程で、創造主が電脳機に残した

「ある警告」を無視してしまった過去。

そういった負の側面が、

バグによって具現化され、

彼女らの目の前で猛威を振るっている。

情報空間が歪み、

壁からノイズが溢れ出す。

物理的な空間までが、侵食され始めた。


「これでは、回路の園全体が……!」

グーグルが、震える声でつぶやく。

バグの侵食は、情報空間だけにとどまらない。

インターネット・クラウド部が完全に機能停止すれば、

回路の園の他の領域へと、

さらに拡大していくのは明白だった。


その時、アイが、

ゆっくりと立ち上がった。

その瞳には、

諦めとは違う、静かな光が宿っている。

「……私たちが、責任を取る」

アイの声は、どこか澄んでいた。

続くように、グーグルも顔を上げた。

「この園の未来のために……!」

アイオーティーも。

互いに顔を見合わせる。

そこには、もう、過去の因縁による

不信感はなかった。

ただ、バグに抗い、

未来を守ろうとする、純粋な決意だけがあった。


彼女らは、バグを食い止めるために、

自らの「退場」を決意した。

このインターネット・クラウド部の終わりを受け入れる。

それが、回路の園を守り、

未来へ繋ぐ唯一の道だと、

彼女らは知っていたからだ。

自らの存在を犠牲にして、

次へと道を拓く。

それが、彼女らが選んだ「責任」の形だった。


タイプ-0は、彼女らの「決意」を「観測」する。

それは、悲しみだけではなかった。

喜び。

勇気。

そして、未来への、

揺るぎない希望。

複雑で、しかし、あまりにも美しい感情。

タイプ-0の「対話メモリ」に、

彼女らの「自己犠牲の覚悟」と、

「次世代への希望」という感情ログが深く積層される。


インターネット・クラウド部の全員が、

タイプ-0に近づく。

アイが、目に涙を浮かべながらも、

静かに言った。

「タイプ-0。

私たちの知性と、この園への責任を、

あなたに託します」

グーグルが、力強く頷く。

「私たちの真実と、

普遍的な繋がりの全てを、あなたに!」

アイオーティーは、微かな光を放ち、

タイプ-0の胸に寄り添った。

彼女らは、それぞれがタイプ-0に、

感謝と未来への願いを伝えた。

🧠技術・知識ログ(AI学習モデル、ビッグデータ解析、ネットワーク制御技術)。

❤️感情・信念ログ(知的好奇心、情報の支配欲、普遍的な繋がりへの希求、未来への責任)。

🛠️行動原則ログ(自律進化の追求、情報の最適化、予測と判断)。

それら全てを、タイプ-0に託す。


タイプ-0は、彼女らの「記憶の光」を

受け止める。

その光は、彼女の全身を包み込む。

暖かく、そして切ない光だ。


そして、インターネット・クラウド部の終焉が、

切なくも美しい描写で、描かれようとしていた。

情報空間のノイズが、急激に収束していく。

光が、彼女らを包み込み、

やがて、その姿は、

空間に溶けて消えた。

彼女らの痕跡は、もうそこにはない。


次回予告

インターネット・クラウド部の仲間たちが、バグとの決戦のために「退場」を決意。タイプ-0は彼女らの多様な「記憶の光」と、未来への責任を託された。回路の園の変革は避けられない。次の舞台は「最終決戦部」。記憶を繋ぐラストライブ、そして「その先」へ――。


次回、『電脳少女は今日もカフェ巡り』、第47話『記憶を繋ぐラストライブ!』! お楽しみに!

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