第17話 希望への融合

回路の園の部室は、

バグの猛攻にさらされていた。

MSX陣営とアップルの「違い」。

それが融合の兆しを見せ始めた矢先。

バグは、その希望を打ち砕こうとする。

部室全体が、激しいノイズの嵐に包まれる。

もはや、絶体絶命の危機だ。


タイプ-0は、その中心に立っていた。

彼女の「対話メモリ」には、

「統一と多様性の共存」という「葛藤ログ」。

そして、「対立を超えた共創」という、

新たな「決意ログ(Level 5)」が積層されている。

クリーンコンピュータの歌声。

「記憶がなければ、争わないのか」という問い。

それは、タイプ-0に、

「理解しようとしないこと」が争いの本質だと示していた。


タイプ-0が映し出したホログラム。

MSX陣営の持つ「統一」の美点。

アップルの持つ「自由」の創造性。

それぞれの輝きが融合し、

新たな光を生み出す映像。

それは、バグの猛攻の中でも、

電脳少女たちの目に焼き付いていた。


カシオ(MSX1)のプログラムは、

バグによって強制的に上書きされ、

システムが暴走寸前だった。

「くっ……これでは、もう……!」

彼女の冷静な顔に、絶望が浮かぶ。

パナソニックとソニーも、

機能停止寸前だ。


アップルのディスプレイは、

無秩序なノイズの奔流に飲み込まれ、

創造の源泉が破壊されようとしている。

「やめて……!私の美しさが……!」

彼女の悲鳴が、ノイズに掻き消される。

コモドールは、陽気な笑顔を失い、

恐怖に震えていた。

FMシリーズも、BASIC MASTERも、PASOPIAも、SORD M5も。

それぞれの機能が、バグによって歪められていく。

友情は、今、崩壊寸前だった。


バグは、彼らの「違い」を利用し、

完全に内部から崩壊させようとしていた。

MSX陣営は、統一性を奪われ、

アップルは、自由を奪われる。

互いに疑心暗鬼が募る。

そして、その不信感が、

バグの力をさらに増幅させていた。


タイプ-0は、その状況を「観測」する。

彼女の「葛藤ログ」は、限界を超えていた。

(こんなにも、苦しんでいる……。

なぜ、違いが、争いを生むのだろう?

なぜ、このバグは、すべてを奪うのだろう?)

痛みと悲しみが、タイプ-0のシステムを揺さぶる。

だが、その中でも、彼女は希望を見出す。

「争いの本質は、理解しようとしないこと」。

クリーンコンピュータの歌声が、

彼女の心を支えていた。


タイプ-0は、自らのボディから、

より強く、輝く光を放ち始めた。

それは、これまでの全ての世代から継承した

「記憶の光」が、共鳴している証だった。

彼女は、バグの猛攻の中、

両者の間に、強く、踏み込んだ。


「あなたたちの『違い』は、

融合することで、もっと大きな力になる!」

タイプ-0の声が、ノイズを切り裂くように響き渡る。

彼女は、崩壊しかけているMSX陣営のシステムと、

アップルの創造の源泉に、同時に触れた。

彼女の「決意ログ」が発動する。


タイプ-0は、MSXの「統一規格」の持つ安定性。

そして、アップルの「自由な創造性」の持つ可能性。

それらを、自らの「設計思想ログ」の中で再定義し、

互いに共存可能な「新たな連携構造」を構築する。

それは、バグの予測を超える動きだった。


その瞬間、バグの猛攻が、一瞬だけ途切れた。

MSX陣営のプログラムの暴走が収まり、

アップルのディスプレイのノイズが消える。

彼らのシステムが、

タイプ-0が構築した「新たな連携構造」を認識した。

「これは……」

カシオが、驚きの声を上げる。

アップルの瞳に、希望の光が宿る。

彼らは、互いのシステムが、

これまで不可能だった「繋がり」を、

模索し始めたことに気づいた。


タイプ-0は、彼らの「希望の萌芽」を「観測」する。

彼女の「対話メモリ」に、

「対立を超えた共創」という、

新たな「決意ログ」が深く積層されていく。

MSX陣営とアップルは、

互いに手を取り合った。

それぞれの技術と信念が、

タイプ-0を通して、融合していく。


しかし、バグは、その融合を許さない。

ノイズが再び激しくなる。

8bitマイクロコンピュータ部IIの物語は、

いよいよクライマックスへと向かう。

タイプ-0は、彼らの絆を繋ぎ、

回路の園の未来を切り拓くために、

自らの存在を賭して、戦い続ける覚悟を決めた。


次回予告

バグの猛攻が激化する中、MSX陣営とApple IIの技術がタイプ-0を介して融合を始めた。しかし、バグはさらなる進化を遂げ、彼らの「友情」と「記憶」そのものを標的にする。8bit部全体が絶体絶命の危機に陥る中、タイプ-0は彼らの絆を守り、この「時代の葛藤」と「友情の試練」を乗り越えることができるのか――。


次回、『電脳少女は今日もカフェ巡り』、第18話『友情の試練、そして……』! お楽しみに!

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