異世界スローライフ&冒険ファンタジー 〜天然オタク女神と万能スキル少女の開拓記〜

@kamiya7

【プロローグ:0章 夏の空と、神様の気まぐれ】

0-1:裏山と、うだるような夏休み

うだるような蝉の声が、耳朶に張り付いて離れない。ジージー、ミーンミン、カナカナ…日本の夏、祖母の家のあるこの田舎町は、いつも決まって音で満たされている。アスファルトの照り返しで陽炎が揺らめく中、私は、柚月(ゆづき)は、ただただ持て余す時間をどうにかしようと、ひんやりと涼しい裏山の森へと足を踏み入れていた。

「はぁ…今年も、暑いなぁ」

呟いた声は、茂る木々の葉に吸い込まれていく。コンクリートで固められた都会の喧騒とは無縁の、土と草の匂いが満ちる森。足元には苔むした石段が続き、その先に、小さな祠がひっそりと佇んでいる。子供の頃、おばあちゃんに「あそこは神様の場所だから、あんまり奥まで行っちゃダメだよ」と言われていた、ちょっとした聖域。

普段なら、祠の前で一礼して、すぐに引き返す場所だ。だけど今日は、どうにも気が乗らなかった。宿題は終わった。友達とは連絡も取れない。スマホのゲームは飽きた。…なんだか、このまま夏休みが終わっちゃうのかな、って。そんな漠然とした焦燥感に駆られていた。

だから、だろうか。

私は、ふと、祠の奥の、普段なら足を踏み入れないような鬱蒼とした茂みに、手を伸ばした。ツルが絡みつく枝をかき分け、半ば無理矢理に道を作り出す。ひんやりとした空気が、奥へ奥へと誘い込むように私を包み込んだ。

「へぇ…こんな場所に、まだ道があったんだ…」

茂みを抜けた先には、小さな広場があった。木々が環状に囲む、まるでおとぎ話に出てくるような秘密の場所。中央には、何の変哲もない、ただの石畳が敷かれている。

その時だった。

私の足元に、突然、淡い光の紋様が浮かび上がった。見たこともない、幾何学的な、それでいてどこか柔らかな輝き。まるで、地面に描かれた魔法陣のようだった。

「え、なにこれ…?」

好奇心と、少しばかりの怖さが入り混じった感情で、私はその紋様に手を伸ばそうとした。だが、その指先が触れるより早く、紋様は眩い光を放ち始めた。瞬く間に光は強さを増し、私の全身を包み込む。強烈な浮遊感が襲い、視界は真っ白に塗りつぶされた。

「ひゃっ!? な、何これぇえええええっ!?」

私は、絶叫する間もなく、光の中に吸い込まれていった。

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