ろくでなしに体を交換されました! えっ、マジで俺がケツ拭かなきゃならんの?
平野とまる
どうして俺がこんな目に?
ゲームをしている最中に激痛に襲われ、
ただし、それは本当に一瞬の時間であり、すぐに引いた痛みに冷や汗をかきながらも安堵の息を吐き出した。
「アレク! 貴様ぁ何をやったか分かっているのか!」
そこに男性の凄まじい怒声が響き、幸助は思わず震え上がってしまう。
が、アレクとはいったい誰の事だろう?
そう思って声の方へ視線を向ければ、見覚えのない銀髪赤目の壮年の男の姿が飛び込んできた。
同時に、全く見覚えのない部屋が視界に入る訳で、幸介は混乱してしまう。
えっ? なにこれどっきり?
そう思うのも普通の高校生で16歳の少年でしかない幸助からすると仕方のない事であり、固まってしまったのも無理もないだろう。
が、そんな事は怒鳴った男にとって全く関係がない。
「貴様、禁呪を使っただろう……。そうか、それでは別人か。貴様は今は誰だ?」
あまりにも鋭い目つきに、幸助は何も答える事ができない。
知らぬ間に尻もちをつき、ただただ首を横に振った。
「なんだ? 口も利けないのか?」
「ひっ。い、いえ。しゃしゃ、喋れます!」
男の迫力に怯えながらも、幸助は必死に言葉を紡いだ。
あまりの圧力にどもってしまったが、それが気に喰わなかったのだろうか、男が更に眉を潜める。
「して、どのくらい状況が分かるのかね?」
そう尋ねられても、幸助は全く答える事ができない。
だって、ゲーム中に突然激痛が襲い、痛みが引いたと思ったら今なのだから。
……否、何故か知らない記憶が沢山ある。
それに気付くや、膨大な記憶と言う情報が宗助を貫いていく。
まさに下種と言うべき、反吐が出るような所業を繰り返す記憶に、宗助は凄まじく気分が悪くなり、吐いてしまう。
しかも、その時感じていたのだろう感情も伝わってきて、ただただ楽しく悦んでやっていたと言う事実に、こんな存在が本当に居るのかと驚いた。
そのあまりの取り乱しように、壮年の男――今の幸助の体の父親である、キルバード・サンドリア・グレークは、ただただ己の子供の体を見下していた。
「なるほど、記憶の共有もできると言うのは本当らしいな。流石忌むべき禁呪である」
苦しむ息子の姿に、しかしキルバードの口から冷たい口調でそんな言葉が零れた。
そこには一切の情は浮かんでこず、寧ろ苛立ちさえ感じられる。
と、宗助は気が付かなかったが、一組の男女の内男の方が壮年の男に話しかけた。
「グレーク卿。一体どうなっているのだ?」
「おお、殿下。これは大変失礼いたしました。今しがた愚息は禁呪を発動させ、しかも成功させてしまったようです。その効果は、魂を全く同じだけ生きた人間と交換すると言う物……その条件が難しく、失敗することが多いのですが、見事やり遂げてしまったようです」
一見敬うようで、しかしそれ以上に演技臭いリアクションでキルバードは殿下と呼んだ男へ説明をする。
と、今度は女の方が口を開く。
「つまり、今のキルバード様は別人、と言う事で良いのでしょうか?」
窺うように尋ねられ、あいも変わらずオーバーリアクションでキルバードは話続ける。
「ええ。この不届き者はいくら。
ただし、それは本当に一瞬の時間であり、すぐに引いた痛みに冷や汗をかきながらも安堵の息を吐き出した。
「アレク! 貴様ぁ何をやったか分かっているのか!」
そこに男性の凄まじい怒声が響き、幸助は思わず震え上がってしまう。
が、アレクとはいったい誰の事だろう?
そう思って声の方へ視線を向ければ、見覚えのない銀髪赤目の壮年の男の姿が飛び込んできた。
同時に、全く見覚えのない部屋が視界に入る訳で、幸介は混乱してしまう。
えっ? なにこれどっきり?
そう思うのも普通の高校生で16歳の少年でしかない幸助からすると仕方のない事であり、固まってしまったのも無理もないだろう。
が、そんな事は怒鳴った男にとって全く関係がない。
「貴様、禁呪を使っただろう……。そうか、それでは別人か。貴様は今は誰だ?」
あまりにも鋭い目つきに、幸助は何も答える事ができない。
知らぬ間に尻もちをつき、ただただ首を横に振った。
「なんだ? 口も利けないのか?」
「ひっ。い、いえ。しゃしゃ、喋れます!」
男の迫力に怯えながらも、幸助は必死に言葉を紡いだ。
あまりの圧力にどもってしまったが、それが気に喰わなかったのだろうか、男が更に眉を潜める。
「して、どのくらい状況が分かるのかね?」
そう尋ねられても、幸助は全く答える事ができない。
だって、ゲーム中に突然激痛が襲い、痛みが引いたと思ったら今なのだから。
……否、何故か知らない記憶が沢山ある。
それに気付くや、膨大な記憶と言う情報が宗助を貫いていく。
まさに下種と言うべき、反吐が出るような所業を繰り返す記憶に、宗助は凄まじく気分が悪くなり、吐いてしまう。
しかも、その時感じていたのだろう感情も伝わってきて、ただただ楽しく悦んでやっていたと言う事実に、こんな存在が本当に居るのかと驚いた。
そのあまりの取り乱しように、壮年の男――今の幸助の体の父親である、キルバード・サンドリア・グレークは、ただただ己の子供の体を見下していた。
「なるほど、記憶の共有もできると言うのは本当らしいな。流石忌むべき禁呪である」
苦しむ息子の姿に、しかしキルバードの口から冷たい口調でそんな言葉が零れた。
そこには一切の情は浮かんでこず、寧ろ苛立ちさえ感じられる。
と、宗助は気が付かなかったが、一組の男女の内男の方が壮年の男に話しかけた。
「グレーク卿。一体どうなっているのだ?」
「おお、殿下。これは大変失礼いたしました。今しがた愚息は禁呪を発動させ、しかも成功させてしまったようです。その効果は、魂を全く同じだけ生きた人間と交換すると言う物……その条件が難しく、失敗することが多いのですが、見事やり遂げてしまったようです」
一見敬うようで、しかしそれ以上に演技臭いリアクションでキルバードは殿下と呼んだ男へ説明をする。
と、今度は女の方が口を開く。
「つまり、今のキルバード様は別人、と言う事で良いのでしょうか?」
窺うように尋ねられ、あいも変わらずオーバーリアクションでキルバードは話続ける。
「ええ。この不届き者はいくら追放されるとはいえ、まだ侯爵家に身を置く者の体を乗っ取ったのです。不幸中の幸いは、これから追放しますゆえ、体の無事も気を遣わず罰を与えられる事でしょうか。アメリア嬢ご安心ください」
にこやかに言われるものの、女――アメリアは寧ろ悲しそうな表情を浮かべた。
「あの、悪いのはアレク様だと思います。ので、その方を罰するのは――」
「おやぁ? アメリア嬢はつい先ほど愚息との婚約を破棄された、いわば我が侯爵家とは他人のはず。無論婚約者であろうと出すぎの真似ですが、どこをどう間違えば侯爵の私にそんな事を申せるのです?」
笑顔なはずなのに、目が一切笑っていないキルバードの言葉に、まるでアメリアを庇うように殿下と呼ばれた男が体を滑り込ませる。
「それは私の婚約者――つまり、いずれこの国の国母となる存在だからだ」
「これは不思議な事を。まだ婚約すらなさっていないではありませんか。あくまでも今のアメリア嬢はただの伯爵家令嬢。王太子殿下である貴方様とは違うのです。とは言え、殿下がそうおっしゃるのであれば、黙りましょう」
王太子殿下がきっとキルバードを睨みつけるも、当の本人は飄々とそう言ってのける。
そんなやり取りが起こっていたのだが、記憶の濁流に呑まれた幸介は、ついに気を失ってしまうのだった。
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ろくでなしに体を交換されました! えっ、マジで俺がケツ拭かなきゃならんの? 平野とまる @tomaru123
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