第8話 何か裏がありそう...
ハンナはロスタル侯爵が気味悪くて仕方なかった。
「一体何者なの…」
「ハンナ妃?どうかされましたか。剣の打ち合いから戻って来られてからずっとぼんやりとなさっていますわ。」
「ああ、ごめんなさい。ねえ、エクラ、ロスタル侯爵とはどんな方なのですか。」
「ロスタル侯爵ですか?ロスタル家は名門中の名門です。余り知られておりませんが魔法が使える家系なのです。今はこの国に数える程しかいないのですが、侯爵は中でも強い魔力をお持ちの様です。」
「魔力?それはどんな事が出来るのですか?」
「それは分かりません。魔力とは神聖なものですので簡単に人には見せることなど出来ないと聞きました。」
「そうなのですか。」
ハンナはロスタル侯爵が言った言葉の意味が知りたいと考えていた。
「ねえ、エクラに言っておきたい事があるのですが今いいかしら?」
「はい。何なりとお申し付けくださいませ。」
「話は少し長くなるからお菓子とお茶を用意して、そちらを頂きながら話しましょう!」
ハンナは笑顔でお願いした。エクラは直ぐに準備してくれた。
「まず、何から話していいか迷うのですが、今日、ロスタル侯爵に“貴方は不死鳥に触れられた貴重なお方なので僕に何なりとお申し付けください”と言われたの。」
「え…?あの、どういう事でしょうか。」
エクラは戸惑っていた。
「あのパーティーの夜に私達の目の前に現れた白い鳥は不死鳥だと思うの。お父様と昔見た鳥と同じだったわ。お父様は不死鳥だと言ってたので間違いないと思う。」
「そうなんですね。納得です。あの鳥はとても綺麗で神々しかったのはハッキリと覚えています。」
「けれど、お父様と居た時もエクラと居た時もあの鳥は私には触れていないわ。なのでロスタル侯爵の言う不死鳥に触れられたと言うのは違うと思うの。」
ハンナは口をへの字にして考えていた。
「でもロスタル侯爵はハンナ妃の周りに不死鳥が現れてる事には気付かれてるという事ですよね。」
エクラがハンナに尋ねた。
「そうね。あれだけ自信満々で言って来るという事は何かしらの確信があるはずよ。」
「もしかして魔力で…?」
エクラが真面目な顔で言った。
「そうだと思うわ。何かを感じたのよ。」
「でも触れた事は無いんですよね。未来を予知してるにしては言い方が変ですね。」
「パーティーの日に倒れた時に思い出したんだけど小さい頃に、あの時エクラと見た不死鳥よりも、もっと小さくて尾が紫色の同じような鳥を見た事があるの。見たというか同じベットで寝ていた様な記憶なの。けれどお父様にそれを伝えたらその話はするな!と怒られてしまったわ。」
エクラも黙って考えた。
「もしその尾が紫色の鳥が不死鳥だとしたらロスタル侯爵の言ってる事の意味はあってますよね。」
「そうなのよ。けれど記憶が曖昧過ぎて。」
「ねえ、ハンナ妃!一度ハンナ妃の生れた地へ帰りませんか?お父様とお母様に会ってその話をしませんか?」
「さすがエクラね。私もそうしようと考えていたの。」
「ここはきちんと向き合ってお話しましょう!」
ハンナはエクラの言葉で、父が怒るからと聞けなくて一人でモヤモヤと考えるのはやめにしよと気づいた。
「でも家に帰る事を皇帝やアンベスが許してくれるかしら?」
「大丈夫でございます!私にお任せください!」
ハンナの心配をよそにエクラは謎に自信満々に答えた。
“バンッ!”
その時勢いよく部屋の扉が開いた。
「ハンナ!ハンナはいるの!?」
それはコットとアンベスだった。
「どうかされましたか?」
ハンナがふうっとため息交じりに返事をした。
「えっ…ちょ…あんたその姿は何よ!」
ハンナを見たコットの顔が鬼の様な形相になった。
「申し訳ありません。まだ病み上がりなので出て行って頂いてもよろしいですか?体がまだ本調子ではないですので。」
ハンナの物憂げなその表情は女のコットから見ても美しく深く嫉妬していそうな程だ。
「お前、コットがわざわざお前に会いに来てやったのに何が身体が本調子ではないだ!それに今日、剣術の練習に出てるの知っているんだぞ。勝手な真似しやがって。」
アンベスが胸倉をつかみそうな勢いで向かって来た。
「アンベス皇子!お止め下さい。」
エクラが身を挺して止めに入った。アンベスはその場に止まり鼻息荒く興奮していた。
「この男みたいな奴が生意気な口の利き方をするんじゃない。これは命令だ。」
その言葉を聞いた時エクラとハンナは訳が分からなかった。アンベスの目にはハンナはどの様に写ってるのだろうか。
「コット!行こう。こいつの顔を見てると気分が悪くなる。」
そう言ってコットの手を引いて部屋を出て行った。ハンナは不審に思い扉をそっと開けて二人を見るとアンベスから黒い糸の様なもやが何本も出ていてコットと繋がっていた。
コットはイライラが止まらなかった。使用人たちが騒いでるのでハンナの噂は耳に入ってたが実際に見るとこの世の者とは思えないほどの美しさに怒りの炎がメラメラと燃えていた。
「あのクソアマ……。絶対に許さないから。」
本当に聖女なのかと疑ってしまいそうな言葉を口にして爪を噛んだ。。
「ハンナ妃。あれは一体何なんでしょう。アンベス皇子にはハンナ妃は昔のままに見えてるのでしょうか。それに言葉使いも悪くなって顔つきも益々、悪人面になってましたよ。」
「そうですね。気持ちが悪いですね。やはりここはきちんと調べてみた方がよさそうです。皇帝に帰省の許可を取りましょう。」
「そうしましょう。明日にでもお許しを頂いて来ます。」
「私もエクラと一緒に行くわ。今日のアンベスの態度を見てると少し心配だわ。」
二人はお茶を飲み作戦を立てる事にした。
「ねえ、ところでリテ様ってこの城のどの辺にいるのかしら。」
「ハンナ様、それを聞いてどうするおつもりですか?まさか危ない事を考えてるのではないですか?」
「まあ、そうかもしれないわね。でも実際には行動しないから安心して。」
「信じますからね。ただでさえあんな事もあったのに、私の寿命が縮まってしまいますわ。でもなぜリテ様の事をお聞きになるのですか?」
「実はさっき、アンベスの身体から黒い糸の様な靄が出ていてその糸はコット様に繋がってたの。なんでしょう、操り人形のみたいなそんな感じかしら。何だったのか気になるわ。それでリテ様が心配になって。」
「私には全くそう言う物は見えませんでした。コット様も何か魔力があるのでしょうか。」
「コット様もという事は、リテ様も魔力があったのかしら?」
「リテ様には不思議な力がありました。私が知っているのは未来を予知する能力です。それとエトワール皇子とアンベス皇子は腹違いの兄妹なんですが、エトワール皇子のお母様がリテ様のお姉様なんです。アンベス皇子は妾の子です。リテ様姉妹は田舎の平民だったのですが魔力が使えると聞いて皇帝がわざわざ出向いて、魔力が強いお姉様をご自分の妃に迎え入れたのです。そしてリテ様は聖女になられました。けれどエトワール皇子のお母様は皇子を産んで直ぐに事故で亡くなられました。突然の事だったので驚きましたしショックでした。」
「そうだったのね。エトワール皇子まで今の状態だとお母様も天国から心配なさっているでしょう。それにしても…皇帝は魔力が欲しくて田舎の平民のリテ様のお姉様を妃に選んだ……ねえ、それって私と境遇が似てない?」
「はい。うすうす感じてはおりましたがやはりそうなのですかね。」
「私は本当にリテ様の身が心配だわ。」
ハンナは眉をひそめた。
「いい待遇を受けてるとは思えないんです。私もリテ様が心配です。」
エクラも肩を落としてしょんぼりした。
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