第13話
魔法少女side
魔法少女の捕獲の任務は、無事に完了した。
奴隷市場のクズ共を一掃したり、帰宅途中に魔法少女と二人と会敵した……など。
様々なトラブルはあったものの、無傷で帰還できたため、成功と言って良いだろう。
そして、数日後。
悪の組織の拠点にて、私達は。
「新人ちゃんの初任務達成祝い! 楽しい楽しいパーティの始まりだァ!」
「いえーい!」
謎に元気な総統が、クラッカーを鳴らす。
次いで、ご機嫌な怪人の手によって、テーブルクロスが敷かれた机の上に、多種多様なピザが置かれていく。
マルゲリータに、ビスマルク。
ペパロニに、ペスカトーレ。
並べられるピザはどれも美味しそうであり、見ているだけで、お腹が空いてくる。
「ククク……俺の手作り特製ピザを見てると、食欲がそそられるだろ? いただきますをしたら、遠慮なく食らうがいいぜェ」
真っ白なコック帽を被り、シンプルな柄のエプロンを着た怪人が、腕を組みながらニヤリと笑う。
正直、あまり似合っていなかった。
因みに、私は「本日の主役」と書かれた襷と、パーティハットを被らされている。
当然ながら、似合っていないだろう。
表情の変化に乏しい私は、賑やかな装いとは対極の存在だった。
「ふふふ、初任務なのにも関わらず、魔法少女を三名も確保するとは……本当に、新人ちゃんは素晴らしいねぇ。ピザも美味しそうだし、今日は最高の日だよ〜。怪人一号くん、ビールを所望するよ。ありったけのお酒を持ってきて〜!」
普段、気怠げな総統もテンションが高い。
隣に座る私のパーティハットを弾き飛ばし、頭を無限になでなでしてくる。
まさに、キャラ崩壊極まれり。
けれど、無邪気な総統の姿を見ていると、年下ながらに微笑ましい気持ちになれた。
「お任せください、総統。キンキンに冷やした物を持ってきます。ツバメは炭酸飲めるか? コーラでいいか?」
「……う、うん。大丈夫」
怪人は鼻歌を歌いながら、飲み物を取りに行く。
……初めて、名前を呼ばれた。
それも、自然な流れで。
今更だけど、怪人はコミュニケーション能力が非常に高くて、距離を詰めるのが上手。
外見こそ全く違うものの、性格といった面ではカナミ先輩とよく似ていて。
だからこそ、私は……かなり早い段階で心を開いたのかもしれない。
「飲み物を持ってきましたよ。チンタラしてるとピザが冷めちまうんで、メシの時間を始めようじゃねェですか」
「ありがとう、怪人一号くん。それでは、手を合わせて……」
「「「いただきます」」」
三人揃って、食物に敬意を表する。
次いで、私達は思い思いのピザに手を伸ばして、口へと運んでいく。
「……おいしい」
「ククク……当たり前だろ。この俺が丹精込めて作ったピザなんだからなァ!」
「至福のひと時とは、正にこの事だねぇ〜。自分の体に気を遣わずに食べるご飯が、世界で一番美味しいよ」
見た目に違わず、怪人の手作りピザは絶品。
はしたないと分かっていながらも、食べる手が止まらない。
和気藹々とした雰囲気で食卓を囲み、豪華な料理を貪り食べる。
こんな体験は、いつぶりだろうか。
魔法少女になる数日前に、父親が怪人に殺されて、私は天涯孤独の身となった。
怪人が暴れる影響によって、今の時代を生きる人々には生活的な余裕がない。
私を引き取ってくれるような人は居なかったので、魔法少女になってからは一人暮らしを始めた。
カナミ先輩と食事を共にする事も多々あるが、基本的に夜ご飯は一人きり。
コンビニ弁当か、スーパーで惣菜を買って、温めて食べるだけの簡素な食事。
この頃の私にとって、食べる事は生命を維持するために必要な行動でしかなくて。
楽しむような代物では無かった。
だけど、今は違う。
「マルゲリータがおいしすぎる〜! ……これは、総統権限。残りのマルゲリータは私が全て食べるよ〜!」
「あ、あんまりですよ、総統。俺、まだ一切れも食べてないのにィ!」
今の私には、ちょっと個性的だけど、一緒にご飯を食べる仲間がいる。
食べ物の味を純粋に楽しめる。
……きっと、もう一人で食べる事は無い。
そう考えると、心がポカポカする。
賑やかで暖かい食卓が、精神に安らぎを与えてくれる。
勿論、カナミ先輩のことや、悪人を一人残らず殲滅する決意は、絶対に忘れたりしない。
忘れたりはしないけれど……今、この瞬間だけは束の間の幸せを味わっていたかった。
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