第14話
「あっという間に平らげてしまったな。明日以降も頼むよ、料理上手の怪人くん」
「ええ、任せてください。それでは、俺は皿洗いをしてきますね」
「……私も手伝う」
「何言ってんだ。今日の主役に皿洗いさせる訳ねぇだろ。今日ばかりはお前の好意を受け付けん! 大人しく、座っとくんだなァ!」
空の皿を持って、キッチンへと向かう怪人。
リビングに取り残されたのは、ソファに寝転がる総統と、ぼーっと椅子に座る私だった。
……これは、丁度いい機会かもしれない。
「総統、質問をしてもいいですか?」
「うん、大丈夫。お腹いっぱいの私は機嫌がいいし、何でも答えちゃうよん」
「一体何の目的があって、魔法少女を捕獲しているんですか?」
「なるほど。至極真っ当な疑問だね〜。実物を見た方が早いから、私に着いてきて」
総統はすくっと立ち上がり、ゆっくりと歩き始める。
リビングを抜けて、結構長い廊下を進み、突き当たりにある階段を降りて、地下へと向かう。
そうして、セキュリティがしっかりしている鋼鉄の扉を開けると、如何にも怪しげな研究室が視界に入る。
様々な機械が置かれている中で、一際存在感を放っていたのは、人一人分のスペースがある緑色の液体が入った機械。
悪の組織のアジトに訪れたばかりの私が入った機械の中には……二人の少女の姿。
私と怪人が捕獲した、オレンジ色の髪の魔法少女と紫色の髪の魔法少女が入っていた。
彼女らは気を失っているのか、或いは、眠りについているのか。
瞳を閉じた状態で、微動だにしない。
「ふふふ……案ずる必要はないよ。怪人一号くんと出会った時の君と同じ。傷の手当てをしているだけ。もう彼女らに用はないからね。治療が終わり次第、解放する心算だよ」
「……解放してしまうんですね」
「君が言わんとしている事は分かるけど、全くもって問題ないよ〜。怪人一号くんの『洗脳』の能力を用いて、我々に不都合な記憶は消去している上に……何よりも、今の彼女達はごく普通の一般人。魔法が使えなくて不老でもない、ただの少女だからね」
淡々とそう告げた総統は、意味ありげな笑みをこちらに向ける。
対して、私は驚きを隠さないでいた。
魔法少女を一般人にする。
そんな事が、本当に可能なのだろうか。
「普通の人間には不可能だろうね。だけど、私の魔法……いや、能力は『奪取』。文字通り、ありとあらゆる物を盗み取れる。この能力を使えば、彼女達から魔法少女としての力そのものを奪えちゃうんだ」
その発言を耳にした時、頭の中に散らばっていた記憶の欠片が繋がっていくような、不思議な感覚を覚えた。
以前にも言及したが、魔法少女の魔法も、怪人の能力も、基本的に一人一つ。
なのにも関わらず、怪人は……怪人一号は複数の能力を持っていて。
現時点で判明しているものだけでも『擬態』と『洗脳』の二つが挙げられる。
更に、多くの能力を有する理由は「裏ワザがあるから」だと、本人は言っていた。
これらの情報から推測すると。
「もしかして、総統は……魔法少女から奪った能力を、怪人一号に与えているんですか? だから、少しでも多くの魔法少女を確保したいと」
「御名答! ……って、言いたいところだけど、少し惜しいかな」
外れてしまったか、と思ったのも束の間。
くるりと振り返った総統は、多種多様な物が散らばっている机を漁り始めた。
書類の束を退けて、機械の部品を放り投げ、空のペットボトルをゴミ箱に入れる。
そして、ゴミやガラクタの山の中に埋もれていた物体を取り出し、高々と掲げた。
彼女が手に持っているのは、オレンジ色の刃が印象に残る刀。
どことなく、オレンジ色の髪を持つ魔法少女を連想させるデザインの武具だった。
「私が魔法少女を捕獲しているのは、怪人一号くんを強化するためだけではない。魔法少女の力を付与した武器を製造し、悪の組織の一員となった人物に渡す事で、戦力の底上げを図るという目的もあるんだよ。というわけで、この刀は君に授けよう」
なるほど。
察するに、この刀は……オレンジ色の髪の魔法少女の魔法が付与された代物だろう。
総統が差し出した刀を受け取った私は刀身を鞘から出して、試しに魔力を流してみる。
そうすると、刃がうっすらと光り輝いた後に、バチバチと稲妻が走り。
付与されている魔法がどのような性能なのか、大体理解した。
「随分と強力な魔法ですね。本当に、私で良いんですか?」
「寧ろ、君だから良いんだよー。この際だから言っちゃうけど、怪人一号くんは戦闘向きの性格をしていないからね。新人ちゃんの方が有効的に扱えるよ」
私の方が有効的に扱える……か。
……私は、無力だった。
物事を知らない上に、実力も低い。
だから、カナミ先輩の力になれなかった。
悪に堕ちなければ、正義を成せなかった。
けれど、この力があれば。
これから、数多の魔法少女から力を奪って、強くなる事が出来れば……。
確かな実力を有するシオウどころか、ありとあらゆる悪にだって勝てるかもしれない。
そう思うと、気分が高揚した。
「し、失礼します!」
ギュッと刀の柄を握り締めていると、実験室に聞き慣れない声が響き渡る。
少なくとも、怪人一号ではない。
となると、来訪者は何者なのだろうか。
そんな疑問を胸に、振り返ってみると。
「お願いします! 出来る事なら何でもするので、私を仲間にしてください!」
そこにいたのは……奴隷市場にて確保した魔法少女。
水色の髪をひとつ結びにしている女の子が、深々と頭を下げていたのだった。
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