第6話 想像するデレ
「いや、なんにゃのって……てか、碧月なんか頭についてるけど」
「にゃ!?ま、またぁー!?」
ハッと慌てて頭の猫耳を確認する碧月。その瞬間、彼女の体が物凄い勢いで縮みはじめた。
原理はわからない。けれど、碧月はぐんぐんと小さくなり、あっという間に包まっていた布団の中に吸い込まれる。
「……な、え!?はあああ!?」
そして、ぴょっこりと頭をだすロシアンブルー。そう、その顔は紛うことなき昨日の迷い猫だった。
碧月に猫耳が生えて、小さくなって……ロシアンブルーに……。
「……ゆ、夢か……?」
いやそうだ、これは夢だ。夢に決まっている。ロシアンブルーが俺の部屋にきたのも、朝起きたら裸の碧月が寝ていたのも、碧月に猫耳が生えていたのも、猫になったのも……全部夢。
その方が納得できるし、きっとそう。じゃなきゃ説明がつかないだろ、この状況。それか、もしかして猫吸いし過ぎて頭変になっちまったのか?
「みゃあ」
「!」
考え込み立ち尽くしていると、足元に寄ってきたロシアンブルー。すりすりと脚に体をこすり、愛嬌を振りまく。……これがあの碧月……?
俺はロシアンブルーを抱き上げる。腕の中に納め、顔を覗き込むとぺろぺろと頬を舐めてきた。
……いや、これは夢だな。あの碧月がこんな人懐っこいわけがない。
ふいに過る碧月のツンツンエピソード。
ある男子が仲良くなろうと話しかけに行った時のこと。教室で多くの男子が見守る中、彼は碧月の机へと向かった。
「なあなあ、碧月!その髪って地毛なん?」
「……そうよ」
「まじかよ、じゃあ先生から怒られねえってことかよ!羨ましいなあ、おい!あはは」
「別になりたくてなった訳じゃないんだけど」
教室の生徒達が冷蔵庫の扉が開いた時のひんやりとした空気を感じた。しかし、彼はそれを物ともせず攻めた。
「ええ、おいおい、贅沢だなあ!」
そう、彼は良くも悪くも空気が読めない系男子だったのだ。
じろりと碧月が彼を横目で睨みつけた。
「……羨むのは勝手だけど、あなたのその価値感に私を当てはめないでくれる?不愉快よ」
「うお、怖ええ!やべえ、みんなー碧月がおこなんだけどー!」
碧月に威嚇された、男子。軽口を叩いてはいたが、おそらく内心かなりビビっていたに違いない。一説によると加藤はそのあとトイレにいって濡れたパンツを洗ったとか洗っていないとか……。
と、まあそんな感じで……男女問わずキツイ返しをするツンツンキャットこと碧月 鈴音。
間違ってもこうしてにゃあにゃあと自分からすり寄ってくる女子ではない。よってこれは夢で間違いない。
ぐるぐると喉を鳴らすロシアンブルー。てか、ベロ出しっぱで可愛いな。ぺろんとしまい忘れた小さな可愛らしい舌。
ふと想像する。
もしも、今のロシアンブルーのようにあの碧月が愛嬌を振りまいたとしたらどうなるんだろうか。
(……この懐き具合からするとこんな感じかな)
「わあー、ご主人だぁ」
とっとっと、と走ってきて抱きつく碧月。すりすり頬ずりをし、匂いを付けてくる。
「んにゅう……好き、好き、大好き……匂いいっぱいつけちゃうにゃ。……他の猫の匂いつけたらぜったいに許さにゃいんだからねっ」
ぐっ、は……はあ……!!?
おいおいおい、なんじゃこりゃあ!!!
破壊力ヤバすぎるだろおい!!バカかよ!!
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