第14話 離れでの生活 ②

 食事が終わった後、セバスチャンさんとロッテンさんからこれからの予定を伺いました。今日はまずこの離れと離れ周辺のお庭を一通り案内してもらい、その後タウンハウスで働いている使用人さんとの顔合わせ、お昼を挟んだ後、ここでの生活の決まりなどを教えていただきこちらの要望も聞いていただけるようです。


 「その前に昨日の夕食はいかがでしたか?」とセバスチャンさんが尋ねたので、

 「大変美味しかったです。丁寧に手を掛けて作って下さっていると感じました」

 「お口に合ってよかったです。それでマリリーズさん、食べる前に毒見はしましたか?」

 「はい、私が先に食べて確認いたしました」

 「自分の分だけですか?」

 「同じお料理でしたし、ドアの所でナディアさんから受け取って私が配膳いたしましたので」

 「少し減点ですね。もし先に片方だけに毒が仕込まれていることも考えららえますので、両方毒見をするのが正解です」

 「今後はそのようにいたします」

 「その後は?」

 「お風呂はお嬢様の部屋で一緒に入りました。ベッドの確認をした後ドアにカギを掛けたのを確認して自分の部屋に戻りました」

 「一通りは出来ているようですね。本来ならお風呂はアドリーヌ様のお世話だけして後で自分の部屋で入るのが正解ですが、小さい頃の学友からの仲のようですしそれくらい身近でのお世話も結婚までは良いでしょう。しかし結婚後も傍でお仕えするつもりなら一線を引いたお世話の仕方もしっかり身に着けて下さい」

 「しっかり勉強いたします。よろしくお願いします」


 昨日の晩御飯にはそういう意図があったのですね。何から何まで見られているようで気が抜けませんね。でも全否定されるわけではなさそうですので、真摯に教えを乞うていきましょうかね。


 私たちは六歳の頃からずっと一緒でしたので、家族以外では一番親しい間柄です。マリリーズはいずれ侍女に成れたらいいなと小さい時から思っていたそうなので、小さいながらに主従関係を意識していたようですが、私は友達だと思っていました。学園に入ってお友達が出来た時、マリリーズはその方たちより仲が良いので『親友ですわよね』って言いましたら、『親友にはなれません』と言われて泣きましたの。それでも学園には主従関係を持ち込めませんでしたので、学友という立場でいられましたけど、そろそろけじめをつけないといけませんわね。


 私がそう決意をしているうちに、離れの案内は一階から始まりました。一回は玄関ホールがありすぐ横に階段があります。こちらはお客様が使う階段で、使用人が使う階段は反対の端にあるそうです。階段の反対側のドアを入ると、昨日最初にお茶を戴いた応接室です。正面のドアを入るとサロンがあり、応接室側の壁が外せるようになっていて、お茶会などは壁を取り払い行う様です。


 サロンの横がキッチンになっているのですが、ドアはこちらにはありません。サロンを通り抜けて、食堂と朝食室が並んでいて、朝食室からか玄関横の階段裏から出入りするようです。


 そしてその奥は、メイドのバルバラとエレーヌの部屋と洗濯室、納戸と使用人の休憩室などがあり一番奥に階段がありました。


 二階は昨日から私たちがお世話になっている部屋が、階段側に五部屋、廊下を挟んで三部屋あります。


 三階は二階にお泊りになられる方の使用人が使う部屋で、階段側が六部屋、向かい側に九部屋あります。階段側のお部屋の方が少し広い様ですが、いずれもベッドルームが一部屋にトイレが付いているだけのようです。階段が廊下に面して付いており、その奥にシャワー室が男女に分かれてあるようです。二階の階段の裏にはリネン室などがあるようです。


 一階まで下りて次にお庭を見せていただきます。離れの方がお庭は広いようですが、人が泊まりに来られるのは社交シーズンが主なようで、今は建物の周りに花が植えられているだけでした。


 さて次にタウンハウスの方へ案内していただきました。入り口には昨日と同じように使用人の皆さんが並んでいます。セバスチャンさんが、使用人さんたちの間を通り抜けてタウンハウスの中に入って行きます。私たちも後に続きました。玄関ホールは離れより重厚な感じがして中央に大きな花瓶に花が飾ってありました。


 造りは離れとあまり変わらないようですが、一部屋ずつが大きく調度品などもいいものが使われているようです。重厚さと共に品の良さも感じられます。


 私たちは応接室に当されました。さっとお茶が出てきます。

 「歩き回ってお疲れでしょう。先ずはお茶をどうぞ」とセバスチャンさんが勧めてくれたので一口戴きました。香りも少し甘みのあるお味も、昨日離れで戴いたものより美味しく感じます。茶葉自体が違うのでしょうが、お茶を入れる技術の違いもあるのかもしれません。


 一息ついたところで、セバスチャンさんが使用人の皆さんの紹介をしてくれました。

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