第13話 離れでの生活 ①

 「マリリーズさんにもセギュール家の使用人と同じレベルになってもらう必要がありますので、アドリーヌ様がお勉強をしている間に学んでいただきます」

 「よろしくお願いいたします」


 「ではお部屋の方に案内いたします。お二人のお部屋は近くの方が良いかと思いまして二階にご用意しています。メイドの二人の部屋は一階で侍女のナディアの部屋は三階にあります」

 「ではご案内いたします」と案内されたのは二間続きの部屋で、一つはソファーなどがおいてあり、その奥にベッドルームがあった。大きなクローゼットも造り付けてある。ベッドルームの奥にはバスルームもあるようです。

 私の部屋の向かいがマリリーズの部屋で、同じ造りではあるが広さは半分くらいでしたわ。


 「今日のご夕食はこちらにお運びいたしますので、お部屋でゆっくり召し上がり下さい。明日の朝食は一階の食堂にご用意させていただきます。朝お迎えに伺いますのでよろしくお願いいたします」そう言って丁寧にお辞儀をして下がって行きました。


 私とマリリーズは、一息入れる間もなく早速荷解きに取り掛かる。先ずは私の荷物からですわね。

 持って来た洋服ではクローゼットの半分も埋まりませんでしたわ。もっとドレスが必要なのでしょうね。ロッテンさんかセバスチャンさんに確認して必要なものを取り寄せなければなりませんね。


 私の部屋の片づけが済んだら、マリリーズがお茶を入れてくれました。私がお茶を戴いている間にマリリーズは自分の部屋をササっと片付けて来たようです。

 二人でほぅーっとしていると、ナディアさんが夕食を運んできてくれました。入り口でマリリーズが受け取り中に運んでセッチングしてくれます。

 「終わりましたら廊下に出しておいて下さい」とナディアは下がって行きました。


 夕食のメニューはパンと、大きなお肉がどんと入ったシチューとサラダに、かわいいケーキが付いていました。同じものが二つトレイにセットされています。

 今日はお部屋で食べやすいようにこのようなメニューなのでしょうか。我が家でも使用人と同じメニューという事はありませんのに。それとも今日だけはマリリーズもお客さん扱いなのでしょうか。それとも私が使用人扱いなのか。よくわかりませんね。


 マリリーズはまず一口そっとスプーンを運び、

 「美味しいです。毒なども入ってはおりません」と小声で教えてくれました。見張られているなんてことは無いとは思いますが、王命とはいえマクシミリアン様と会ったことも無い小娘がやって来たのですから、きっと警戒はしていますよね。


 お料理は見た目はシンプルですが、とても美味しく手が込んでいるのが分かりました。これは、賄いではなくお客さん用のお料理のようですね。疑ってしまって申し訳なかったです。もしこれが賄いでしたら、もし婚約破棄にでもなったらここで働かせてもらいたいくらいです。まぁ王命ですので、お飾りの妻になっても婚約破棄は無いとは思いますが。


 とちょっと不安で変な事を考てしまいました。私が侯爵夫人に等成れるのでしょうか。上位貴族のマナーや立ち居振る舞いから必要な知識等私には足りないところだらけです。上位貴族と下位貴族に分けることが多いですけれど、伯爵は中位貴族でしょうね。ベアトリス様を見ていると違いは一目瞭然ですもの。これからの勉強に付いて行けるのか心配しかありません。


 「お嬢様は勉強の方は心配ありませんよ」とマリリーズが励ましてくれます。

 「ダンスはちょっと不安が残りますけど」マリリーズそれは頑張ればなんとかなると言って欲しかったです。


 食事を終えた私たちは私の部屋で二人一緒にお風呂に入り、私はマリリーズに綺麗洗われて、すっきりしたので今日はもう寝ることにしました。私は多分どんな布団でも寝られるのですが、マリリーズが念のためベッドも私好み(?)にしてくれました。どこをどう変えたのか分かりませんが。でも安心して布団に潜り込んだ途端に眠れました。

 もちろんマリリーズに先に部屋に戻ってもらいドアにカギは掛けましたよ。そうしてくださいとマリリーズがうるさかったので。


 翌朝ドアの外からのマリリーズの声とノックで目が覚めました。朝までぐっすりでしたわ。マリリーズに身支度を手伝ってもらって、今日は水色のシンプルなワンピースに着替えました。我が家ならこれで十分なのですが一応嫁ぎ先になるかもしれない家ですので、品よく薄化粧もし、髪もハーフアップに整えました。


 支度が出来た頃ナディアさんが朝食の準備が整いましたと一階に案内してくれました。

 「今日からお食事はこちらの朝食室と隣の食堂で取って頂きます」


 そこには一人分の朝食がセットされておりました。これは私一人でみんなに見守られながら食べるという事でしょうね。取り敢えず頂きましたが、美味しいお食事も皆さんに見られていると、マナーを一挙手一投足見られているようで落ち着かず味もしませんし、何処に入ったのかもわからない感じです。

 毎食これだと病気になってしまいそうです。



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