第15話 離れでの生活 ③
今はタウンハウスには誰も滞在していないので、使用人さんは留守を預かる最低人数しかいないそうです。侍女長さんと侍女さんがお一人、料理長さんと料理人さんがお一人、メイドさんが三人とセバスチャンさんです。殆どがタウンハウスの中でのお仕事のようで、基本離れにいる私は会う事が無いかもしれません。
外回りのお仕事をして下さっている庭師の方がお一人、馬番が一人と馭者さんがお一人いらっしゃいました。
お会いする機会が無くてもお世話になる事には変わりないので、
「これからお世話になります。よろしくお願いしますね」と挨拶いたしましたら、皆さんにとてもきれいなお辞儀を返されました。
これはマリリーズだけでなく私もお辞儀から教えて頂いた方が良いかもしれません。
「本来ならタウンハウスの中もご覧いただくべきなのでしょうが、こちらは侯爵家の方と侯爵家の方が手を取ってご案内された方のみとなっておりまして、婚約者の方でも侯爵家の方が誰もいない今の状態では入っていただくことが出来ないのです。申し訳ございません」
この応接室だけは玄関先でお帰り頂けない方をおもてなしすることが出来るそうです。でも侯爵様より上の方が不在を知らずに尋ねるようなことはまずないので、殆どは玄関先でお帰り頂くそうですわ。というか先ぶれを出さずに尋ねてくる方がいるのが驚きですわね。
「めったにいらっしゃいませんが、年に数人突撃してこられるんですよ。ここに来たという実績をつくれば、何かの時に役に立つんじゃないかという甘い考えの方がね」
「それは逆効果だと思いますけれど・・・」
「はい、それが分からない方がいらっしゃるようなんです」
セバスチャンさんと顔を見合わせて二人でため息をついてしまいましたわ。
「アドリーヌ様がきちんとした常識を持った方で良かったです」とロッテンさんが呟いているのを拾ってしまいました。突撃してこられた中にはマクシミリアン様にお近付きになりたいご令嬢もいらっしゃったようです。
今度はロッテンさんと顔を見合わせて二人でため息をつきました。
タウンハウスをお暇して、離れに戻ってお昼を頂きました。また私一人が皆さんに囲まれて食べるという状態で、落ち着きませんし、緊張して味も良く解りませんわ。
何とか食べ終えて、少し休憩です皆さんお昼を召し上がりませんとね。その間に私からの要望を考えます。先ず皆に見られながらの食事は絶対に嫌だという事・・・位でしょうか。まだ一日だけですので、いやな事はそれくらいですね。
さて、休憩も終わり、セバスチャンさんとロッテンさんが戻ってきました。
まずはセバスチャンさんからここでの暮らしについてのお話です。
「離れと離れの庭に関しては自由に過ごしていただいて構いません。タウンハウスの方に来られるときには先ぶれをお願いします。まだ、正式にマクシミリアン坊ちゃまが後を継ぐという事は発表されてはいませんが、近衛をおやめになった事は広まっており、様子を見に来られる方が沢山いらっしゃるのです」
「ここに来られても、侯爵家の方は誰もいらっしゃらないので、先ぶれを出された方にはその旨お伝えして、私どもでは解りかねますとお返事しているのですが、タウンハウスの周りをうろうろして、様子をうかがっている方がいるのですよ」
「その方たちにアドリーヌ様がここに居るのを知られてはマルゴワール家にもご迷惑をおかけしてしまいますので」
「承知いたしました」
「必要なものはナディアたちにお申し付け頂ければ用意いたします。暫くは覚えて頂くことも多く暇な時間もほとんどないと思いますが、気分転換が必要な時は離れの裏口から街に出ることも可能ですので、言って下さい。馬車と護衛を用意いたします」
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」
「では私から、明日から午前中は勉強をしていただきます。先ずは姿勢・歩き方などを始めとした所作とセギュール家の歴史を、毎日二時間ずつ学んでいただく予定です。昼食後は嗜みとして、刺繍や楽器等やダンスを恥ずかしくない程度には出来るようになっていただきます。伯爵令嬢と侯爵夫人では求められる基準が違いますので」
「はい、頑張ります」
「こちらも二時間程を予定しております。その後は夕食まで自由時間となりますが、その間にスキンケアなどのお手入れやマッサージを受けて貰う予定です」
「しばらくはこんな感じで進めてみて、進捗状況をみながら進めたいと思います」
「ではアドリーヌ様からは何かありますか?」
そう聞かれましたので、思い切って食事を一人で取るのは落ち着いて食べられない事、出来れば朝はみんな一緒に食事をして、昼食と夕食はどなたかと一緒に食事をしながらマナーや食事中の会話の練習をしたいとお願いいたしました。
最初は「それは出来かねます」と言っていたセバスチャンさんとロッテンさんでしたがまだ正式な婚約者でもないし、お客様の立場でもないので勉強しやすさを一番に考えてもらう事で納得していただけました。渋々という感じですがね。
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