【シヴァとパールヴァティー】

育成部に戻ると、何やらうなだれているシャスタが居た。



「シャスタ……どうかした……?」



そう尋ねるシルビアも気力が無い。

シェンの嘘にごっそりと持って行かれてしまった。



「シルビア……聞いてくれますか……?」



顔を上げたシャスタにも元気は無く、酷く疲れた様子だった。



「ええ、聞くわ……。私の話も後で聞いてね……。」



「え、シルビアもですか……?」



気づけば彼女にも疲労の色が見える。

もしや自分と同じ目に遭ったのではと、ため息が出た。



「とりあえず話して……。もう、ちょっとやそっとじゃ驚かないから……。」



「分かりました……。あのですね──」



その話に目を見開くシルビア。

シェンの嘘とは比較にならない程の話だった。



シヴァに呼ばれて自宅に向かったシャスタだが、その途中でドゥンに会い──



〈急げシャスタ!シヴァ神が危ねぇ!〉



「えっ!?シヴァが危ないってどういう!?」



〈いいから乗れ!早く!〉



促されるままドゥンの背に乗り、連れて行かれたのはシヴァ達の部屋だった。


そこでシャスタが見た物は、仰向けのシヴァに馬乗りとなったパールヴァティーの姿だった。



一瞬、二人の営みかと思ったが、良く見ればシヴァには怯えの色。


そしてパールヴァティーの手には刃物が握られていた。

その刃物は赤く染まっており、シヴァにはいくつもの切り傷があった。



「ちょっ、何してるんですか!?」



と、そこにシルビアからの連絡が入り、すぐに切ったのだと言う。



「パールヴァティー!?シヴァが何かやったんですか!?」



「ち、違うぞシャスタ!こいつ、カーリーなんだ!」



「カッ、カーリー!?」



以前聞いた話が頭をよぎる。


神器を手にしたまま行為に及び、斬りつけながら快楽をむさぼり、それで満足するとドゥルガーに戻る。


トリシューラが無ければ死んでいると言っていたシヴァ。


という事は、やはりこれは二人の営み……?


いや、パールヴァティーの衣服に乱れはない。

シヴァの腹の上に乗っているから、位置的に考えて営みではないだろう。


この状況なのに、なぜか頭の中は冷静だった。


そして違和感。

カーリーにしては表情が違う。


じーっと観察するシャスタを見て、パールヴァティーの動きが止まった。



「シヴァ、失敗みたい。」



「はあ!?身体を張ってやったのに!?」



コソコソ話す二人に首を傾げる。

失敗とか身体を張るとか、訳が分からない。



「おい、やっぱ成功じゃね?」



「んー……」



「シヴァ?無事なんですか?カーリーはドゥルガーに戻ったんですか?」



その台詞にニヤリと笑うシヴァ。

パールヴァティーもニッと笑っている。


更に首を傾げるシャスタに向かい、二人は言った。



「「エイプリルフール!」」



「えっ!?エイプリル……え?」



まさかの嘘に、信じられず唖然とした。



「あり得ないでしょ?神器で斬りつけて血を流すなんて。あんな嘘、あそこまでする嘘って、天界って一体……」



シャスタも上の常識にため息をついていた。



「シャスタ、あれってインドの常識らしいわよ。」



「インドの……?あっ、」



言われたシャスタが思い出す。

インドのエイプリルフールは揶揄節やゆせつが起源であり、その日は人を揶揄からかったりいたずらしたりする日だという事を……。



「まさかここまでとは……。想像以上に何でもありなんですね……。」



「私はハンサが危篤だって騙されたわ。でも、上の人達の嘘のパターン、何となく分かったわね。」



頷くシャスタ。

4月1日を意識していれば、引っ掛かる事はないようなあり得ない嘘。



「シルビアさん!シャスタさん!魔族の残党が銀行に立てこもりを!」



飛び込んで来たヴィシュヌの台詞。



「シャスタ、確認を。」



ありそうな話に一応調査を開始するが、そんな事件は発生していなかった。



「エイプリルフール……ですね。」



「えっ!失敗!?イケると思ったのに!」



悔しがる超絶美男子にかぶりを振る。



「でもヴィシュヌさんの嘘が一番まともだったわ。来年頑張って。」



そう言われ、面白くなさそうに帰って行く維持神。

やれやれと肩をすくめる二人。



この後も、入れ替わり立ち替わり神々が降りて来たのは言うまでもない。


そんなエイプリルフールのお話でした。




END

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永遠の時をあなたと/外伝【エイプリル・フール】 SHINTY @shinty

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