ファントム、尋問される12

「ユキちゃんはユキちゃん! ちゃんと自分の意志もあるし、無理したら血も流しちゃう。普通とはちょっと違うかもしれないけど、それ言ったら私だって普通じゃないし!」


 確かに、忍者の末裔が普通とは言い難い。それを思い出して、ユキは「ふふっ」と笑った。


「ごめん。姿はこんなだけど、これでも玲奈ちゃんより私、年上なのにね。心配しないで、自分の人生を悲観してるわけではないから」


 そう言っても、今にも泣きそうな玲奈だから、ユキは手を伸ばして彼女の頭をそっと撫でる。


「確かに私はAEGISのために作られた。だからこそ、今、私にしか出来ないことがある」


 ユキがそう言った時、画面がパチパチと意志を持ってちらついた。


「ん? 灰島さん、目にゴミでも入ったのかな?」


 玲奈の言う通り、モニターに映る灰島の視界――、正確には、彼の瞼の動きが、一定のリズムを刻んでいた。


「……これは、モールス信号です!」


 マスターはすぐにその意味をくみ取り、暗号を解読する。


「オペレーション:クイーンズ・ギャンビット? これはMI6の作戦名では?」


「そう、かも。聞こえてきた作戦名を、私たちに知らせているんだわ」


 ユキはまたヘッドセットを手に取った。


「作戦名で検索してみる。きっとそこからMI6の戦力、配置図とか、いろんな情報が入手できるはずよ。そして、それを踏まえたうえで、作戦を練りましょう」


 そんな力強い彼女の言葉に、マスターも玲奈も頷く。


「それでは、私はとびきりのカフェオレを用意しましょう」


「私も美味しいお菓子を作るわ!」


 たった3人しかいないチームだが、彼らにはもう『諦める』という言葉は無かった。

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