「時間バグ」

現実のグリッチ

[Day 1B - 俺の無気力な夏]

俺の名前はナルカミ・タツミ・S。二十四歳。

現在、社会的に受け入れられる肩書は「無職」だが、実態はもっと複雑だ。俺は、世の中では役に立たない二つの芸術の達人だ。一つは、ゼロからデジタル世界を創造できるほど、恐ろしくプログラミングが得意なこと。もう一つは、ライトノベルの貪り食いであること。

要するに、筋金入りのオタクであり、ステレオタイプを完成させるかのように、何日も、ことによると何週間も自室に封印されているゲーマーだ。

この部屋は、俺の聖域であり、監獄。家賃は両親が毎月払ってくれる安アパートの一室だ。

だが勘違いするな。甘やかされた息子のようにその金に手をつけているわけじゃない。それは手付かずのまま俺の銀行口座に積み上がり、俺自身の無能さを静かに物語る記念碑となっている。

日本に住んで、もう十四年になる。そう、俺はハーフだ――半分日本人で、もう半分はどうでもいい何か。

六歳でここに来て以来、文化、言語、生き方…俺という人間の上に、すべてが上書きされた。

裏庭や茂みを冒険していたあの少年は、太平洋を横断するフライトのどこかで死んだ。

今の俺はただの引きこもり。複雑で要求の多い日本社会というパズルにはまらなかったピースだ。

もっとも、正直に言えば、生まれた国でも事態が違っていたとは思えないが。

この「どこにも属していない」という感覚は、たぶん俺だけのものなのだろう。いつもこんな思考の迷宮に迷い込み、結局、俺に救いはないのかもしれない、と結論づける。

「あー……クソ暑い……」

部屋の中の空気はすでに重いが、外はもっとひどい。

午後二時。情け容赦ない夏の一日のピークだ。わかるか、この感じ？

ゲーミングチェアと一体化し、エアコンの神聖な唸り声で環境を浄化させ、二度と太陽の光を浴びることなく過ごしたいという、あの根源的な欲求。

まさにそんな気分だった。なぜかって？簡単だ。俺は人間が嫌いだ。

外出するのが嫌だ。彼らの空虚な、あるいは好奇心に満ちた視線に直面するのが嫌だ。

話す必要性が嫌だ。「すみません、飲み物コーナーはどこですか？」なんて馬鹿げた質問をするために声色を整えるのが嫌だ。

すべてが…ひどく消耗する。

だが、今日は必要だった。サバイバルのためのミッションだ。

俺の戦略的備蓄が底をつきかけ、そして最も重要なことに、ドクターペッパーの在庫がゼロになった。

あの飲み物は単なる炭酸飲料じゃない。俺の日々の燃料であり、長い夜中を支えてくれる霊薬だ。

ピロン♪ ピロン♪

そんな実存的な怠惰に浸っていても、スマホは手放さない。

俺の社会生活においてはほとんど役に立たない付属物だが、不可欠ではある。

画面をスライドさせると、Discordの通知が見えた。

メッセージの送り主は、もちろん、あいつしかいない。イツキ。アゼロスでの戦友であり、バーチャルダンジョンでの相棒だ。

外に這い出す前に、次のID（インスタンスダンジョン）の前に「リアルワールドでの補給」のために休憩が必要だとグループで伝えておいた。

彼のメッセージは、ゲーマーの焦りを体現していた。「おい、まだかよ？ランクポイント上げるために、今日中にミシック+20をクリアしないといけないんだぞ！」

はぁ……。ため息が漏れた。こいつは本当にゲームのことしか考えてない。

典型的なMMO中毒者だ。現実世界なんて、次のゲームセッションまでの待ち時間でしかない。

素早い指つきで、俺たちが唯一理解し合えるコミュニケーション方法である、素早く攻撃的な返事を打ち込んだ。「今向かってる！俺の代わりに他の火力（DPS）を呼ぶなんて考えるなよ、クソが」

そして、俺がまったく興味を感じない外界への、もう一つの不承不承の遠征の後、俺は自室へと帰還する。

ドアがカチリと静かに閉まると、社会も、暑さも、人間も、すべてが存在しなくなる。

俺は自分の繭、真の我が家に戻ってきたのだ。

時間はモニターの青白い輝きの中に溶けていった。

午前三時。外の世界は死んでいたが、ここ、俺の冷房の効いた聖域では、命が狂ったようなクリック音とスキルの光に合わせて脈打っていた。

傍らにあるドクターペッパーの空き缶は、俺たちの粘り強さのトロフィーだ。

そして、ダンジョンのボスが倒れた。

「っっしゃあ！ギリギリだったな！」

俺自身の声が、夜中の静寂の中でやけに大きく響いた。安堵と不満の叫びだ。

「イツキ、てめえ、なんであの攻撃をタンクしなかったんだよ？！ゲームで一番わかりやすい予告攻撃だっただろ！」

Discord越しの、少し歪んだ彼の声が、聞き慣れた憤慨をもって応じた。

「タツ、俺を初心者扱いすんなよ？お前の社会人経験より長くデスナイトやってんだからな」

「でも、お前のせいで時間内にダンジョンクリアできないところだったんだぞ、この野郎！」

挑発すると、すでに俺の顔には笑みが浮かんでいた。これが俺たちの勝利後の儀式だ。

「俺のせい？お前はいつも俺に責任を押し付けるけど、俺が――」

沈黙。

彼の言葉は途中で途切れた。Discordで彼の声を示していた緑のバーが、ふっと消えた。は？

回線落ちか？PCがフリーズしたか？

「イツキ？また俺がお前のせいだって言ったから怒ったのか？」

無反応。何の音もしない。ただ、俺自身のコンピューターの低い唸り声だけが響く。

猛烈な勢いでアイコンをクリックしてチャンネルに入り直したが、そこは静まり返っていた。クソが。

怒って何も言わずに抜けやがったな。ガキかよ。

おかしいな…でも、何だ…？

その瞬間、世界が崩れ始めた。最初は、微かな感覚だった。

ゲームで疲弊していた俺の頭が、突然ぼんやりとし始めた。まるで、暗い霧が意識の縁から忍び込んでくるようだ。

単なる目まいじゃない。もっと精密で…もっと…デジタルな感じだ。

まるでグリッチエフェクト。信号が途絶えた古いブラウン管テレビの画面を覆う、あのノイズ混じりの静電気のようだ。

古いと言えば…なぜ、俺の古いPXoneのイメージが頭に浮かんだんだ？

子供の頃の、あの骨董品のようなゲーム機。

ロゴのトランジション音を思い出した。未来の音のようにいつも感じられた、あの電子的な唸り声。

だが、それを思い出させたのはノスタルジアじゃない。

起動画面が映し出される時の、あのイメージの形成の仕方だ。ブロックが点滅し、一瞬乱れてから安定する、あの感じ。

そうだ、まさにこれだ。ただ、今度はそのエフェクトが俺の頭の中で起こり、こめかみを打ちつける鋭い、脈打つような痛みを伴っている。

視界が震え、端がピクセル化していく。なんだこれ、クソが。

「イツキ…」俺はマイクに向かって呟いた。冷たいパニックが背筋を駆け上る。「おい、なんか変なことが起きた…すげえヤバい…ディスペルが必要かも…」

返事はない。

代わりに、静寂を破った音は、俺の背後から聞こえた。

「おい」

聞いたことのない声。しゃがれていて、だるそうで、まるで安物のタバコと何十年もの恨みを通してフィルターにかけられたような声だ。

即座に、カエルのような顔に小さく冷酷な目をした、35から45歳くらいだが魂はすでに腐りきっているような老人のイメージが頭に浮かんだ。

俺の体は本能的に反応した。俺の玉座であるゲーミングチェアを回転させ、侵入者に顔を向けようとした。

だが、動けなかった。

「は？なんだこr――」

心臓が跳ね上がった。

俺の脳からの命令ではない何かに筋肉が硬直したが、俺はPCの今は暗い画面に向いたまま、動けずにいた。

声が再び聞こえた。今度は耳元で、荒々しく湿った叫び声が響いた。

「おい、クソ野郎！てめえに話してんだよ、このゴミが！」

アドレナリンが恐怖を上回った。怒りがこみ上げる。

「てめえ、誰だと思って人の家に侵入してやがる！」俺は叫んだ。声が震えていた。

短い間があり、乾いた、ユーモアのない笑い声が続いた。

「お前の家？」老人は言葉を吐き捨てた。「何言ってやがる、ガキが。俺の家に侵入してるのはてめえの方だろうが。さあ、言え…どうやってここに入った？」

一瞬、老人の声と周りの世界が歪み、俺の意識は現実と再接続できた。

いや、新しい現実と、だ。俺は下を見て、俺を捕らえている椅子を見た。

何か月も節約して手に入れた、合成皮革とランバーサポート付きの俺のゲーミングチェアが…消えていた。

その代わりにあったのは、暗い色の、硬くて古い木製の椅子。

わかるだろ、埃っぽい図書館にあるような、正しい姿勢と静かな読書のために作られた、あの手の椅子だ。

待て、なんでこんな椅子が俺の部屋にあるんだ？

いや、違う、質問が間違っている。

正しい質問はこれだ。なぜ、この親父が俺の部屋にいるんだ？

クソ…何が起きて――

鼻孔を、胃がむかつくような悪臭が襲った。

酸っぱく、濃密な匂い。安いビール、何日もかいた汗、そして紛れもない汚いトイレの匂いが混じった、鼻につく悪臭だ。

普段、俺の部屋はオーシャンフレグランスの芳香剤のかすかな香りがして、外界に対する化学的なバリアとなっていた。

だが今、この場所は…この場所は、失敗の匂いがした。

部屋のデザイン、間取りは俺の部屋と同一だった。

窓も同じ場所、ドアもそうだ。だが、それはまるでバグったバージョン、すべてがうまくいかなかったパラレルワールドを見ているようだった。