「時間バグ」
@doctorgbs
プロローグ — 終わりの始まり
春。四月。西暦20XX年。
すべてが上手くいくようにと宇宙が仕組んだのは、まさしくあの瞬間だった。そして同時に、俺の世界のあらゆる歯車が、どうしようもなく無慈悲に崩れ落ちたのも、あの瞬間だった。
わかってる。まともな神経の持ち主なら、こんな風に物語を始めたりはしない。春の、人を惑わすような優しい色に染まった、何もない場所から投げ出すようには。
なぜかって?そんな唐突でドラマチックな幕開けの理由は何なのか、君はそう思っているだろう。
本当に知りたいか?
教えてやろう。それは、俺が心の底から、心の繊維の一本一本に至るまで、憎んでいるからだ…俺が、世界を渡る能力を持っているという、この単純な事実を。
憎んでいる。なぜなら、どれだけ多くの現実を渡り歩こうと、どれだけ時空を書き換えようと、俺は同じ呪われた使命から逃れられないからだ。彼女を救わなければならない。
常に。
だが、この力…現実を引き裂くこの冒涜的な能力は、タダで手に入れたものじゃない。それには代償が、俺の魂の口元に常にまとわりつく、苦い後味として現れる負債が伴った。
それは喪失の味。決して存在しなかった未来の廊下に響き渡る。
それは無力な怒りの味。変わることを拒む運命を前に、胸を焼き尽くす。
それは脆い希望の味。あまりに輝かしく、そしてあまりに簡単に打ち砕かれる。
そして、何よりも最悪なのが、紛れもない裏切りの味。
いかなる宇宙においても、決して壊されてはならなかった愛の味だ。
もし選ぶチャンスがあったなら、もしあの無知だった瞬間に戻れたなら…俺は決してあの夢を受け入れなかっただろう。
あの忌ま忌ましい夢。すべてが、本当にすべてが、永遠に変わってしまった、あの夢を。
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