消えた俺の世界



俺の部屋ではニュートラルなグレーだった壁紙は、黄ばんで剥がれていた。

俺が几帳面にライトノベルやゲームを積み上げていた隅は、今や潰れたビール缶とコンビニ弁当の空き箱の山だった。

洗濯かごがあった場所には、タバコの吸い殻が混じった悪臭を放つ汚れた服の山があるだけだった。


待て。


冷たく、電気的なパニックが、ついに俺を全力で打ちのめした。


「俺のPC!」


首をバキッと鳴らして振り向くと、心臓が肋骨に叩きつけられるように鳴った。

デュアルモニター、メカニカルキーボード、地図ほどの大きさのマウスパッドを備えた、俺の聖なる祭壇である机が…


「無い!」


どこだ、どこだ、どこだ、どこだ…俺のPCが…


そこには何もなかった。ただ、埃とコップのシミで覆われた安物の金属製の小さなテーブルがあるだけだった。

俺の宇宙の中心が、消し去られていた。


その空虚さを処理する前に、老人が俺のシャツの襟を掴んだ。ざらざらした強い手で、屈辱的なほど軽々と俺を持ち上げた。

「てめえで出て行かねえなら、俺が通りに放り出してやる。てめえが起こした問題の金を払えねえなら、今すぐ不法侵入で警察を呼ぶからな」


金?あるわけないだろ。俺は何も持っ――臭っ!奴の息は生物兵器だ。

パニックの最中、俺の指がポケットの中で冷たく四角いものに触れた。俺のスマホだ。

まだ俺と一緒だった。一瞬、理不尽な安堵が体を駆け巡った。何が起こっている?夢でも見てるのか?

俺の部屋であって俺の部屋でない場所にいるのに、俺の世界へのポータルであるスマホはまだここにある。

まあ、マシか。でも、なぜだ?一体何が――


俺の思考は、廊下に暴力的に放り出されたことで中断された。

背中がアパートの通路の手すりに強く打ち付けられた。


「いっ!」


鈍い痛みが背骨に広がり、鋭い痛みが頭に響いた。

クソ、俺は強くもなければ、運動もできない。正反対だ。少し痩せていて、少し締まりがなく、座りっぱなしの生活の直接的な結果だ。

自分の部屋から――あるいは自分の部屋であるべき場所から――こんな風に追い出されるなんて…控えめに言っても、奇妙だ。


よろめきながら階段を下りた。たった二階建てのシンプルなアパートだ。

出口までの廊下を通り過ぎる間に、五人ほどとすれ違った。

そのうちの一人は見覚えがあった。一言も交わしたことのない隣人だ。他の者はまったく見知らぬ顔だった。

よく知っている大家の事務所のドアには、今や違う表札がかかっており、見たこともない名前が書かれていた。


「クソ…」俺は風に向かって呟いた。「何が起きてるのかわからねえ。全部おかしい、全部違う」


結局、アパートの近くの、いつも避けていた公園に行き着いた。

ベンチに座り、両手で頭を抱え、パズルを組み立てようとした。両親に電話しようかと思った。

だが、俺たちの間の距離は、単なるキロメートル以上だった。

俺が社会的に引きこもりになった経緯、祖母のメイの事件の後に起こったすべて…いや。

説明できるわけがない。


イツキに電話してみた。番号は呼び出したが、出たのは少女の声だった。

「イツキなんて人、知りません」彼女は焦れたような口調でそう言うと、俺が名前を尋ねる前に電話を切った。最高だ。

俺の唯一の友達が、存在から消された。


MMOで知り合った「ZoZ」という女の子の番号を考えたが…いや。

無駄だろう。


俺は自分の街で幽霊のように、当てもなく通りを歩き始めた。

知っている店はそこにあったが、何かがずれているように感じた。

コンビニの前で、高校生のグループが笑いながら話していた。肩にはリュックがかかっている。

学校帰りのようだった。


何か飲み物を、頭をスッキリさせるものを求めて必死で店に入ると、彼らの一言が俺の耳に引っかかった。

「『ファイナルファンタジーXV』がついに発売されるなんて信じられねえよな!」


ゲームの話題。これならわかる。

一瞬立ち止まり、棚の商品を見ているふりをしながら、耳を澄ませた。

水のボトル代を払った後、少年の一人がこう言うのを聞いた。


「発売されたら、絶対初日にプレイするわ。その前にPX4を買わないとだけどな。お前の貸してくれよ」


人間との交流を疫病のように避けている俺が、我慢できなかった。

注目を引かないように、低い囁き声で一言が口から漏れた。

「でも…もう発売されてるぞ」

「PC版だってあるし」


彼らの中で一番背の高い奴が、嘲笑うような笑みを浮かべて俺の方を向いた。「は?発売?酔ってんのか、おっさん。発売日が発表されたばっかりだろ。頭おかしいんじゃねえの?」


「は?俺はもうプレイしたぞ。プラチナトロフィーも取った。お前らこそ…もうDLCも出てるのに、お前ら…」


俺の部屋で起こったことの記憶が蘇った。

あのバグ。グリッチ。

「確か、2016年に発売されたゲームだ。何言ってんだ、お前ら?」


彼らは大笑いした。世の中に本当の心配事など何もないティーンエイジャーの、あの屈託のない笑い声だ。

「おい、まだ四月だぞ!発売は十一月だよ!このイカれた奴、何言ってんだ?」


は?四月?


震える手でスマホを取り出した。ロック画面の日付は正しい。だが、何かがひどく間違っている。

俺の声は弱々しく、ほとんど聞こえなかった。


「今…今って、何年だ?」


彼らの嘲笑は頂点に達した。

「ぷっ、自分が何年にいるのかもわかんねえのかよ。馬鹿じゃねえの。2016年だよ、バーカ」


2016年。

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