胸が締め付けられました。
主人公の少年は、『親友』と一緒に山の中で秘密基地を作ることにする。
夏休みのある日のこと。それは間違いなく「最高の思い出」になるはずだった。
でも、ある時から様子がおかしくなる。苦労して作った秘密基地に、なぜか親友が来なくなる。それなのに、秘密基地に置いてあるお菓子だけは食べられた痕跡がある。
自分と一緒に過ごすのではなく、一人で楽しむためだけに秘密基地を作ったのか?
裏切られた気持ちになり、その後に遭遇した「親友」とは口げんかになる。
夏の盛りに作った秘密基地。そして、ひぐらしの鳴く季節がやってくる。
「親友」である彼は、なぜ秘密基地に顔を見せなくなったのか。彼の家庭の事情で何かあったのか? それとも、彼の心境に変化でもあったのか?
様々な想像がよぎる中、やがて明かされる真相。
読み終えた後、確実に読者の心に「大きな何か」を残すことになるでしょう。
生命力に溢れていた夏の雰囲気と、その後の静謐感に満ちた描写。ラスト一行まで読者の心を打ち続ける、丹念に描き上げられた作品でした。