ⅤーⅡ 見つかんねぇ

 で、ミランさんのご主人様を探すことになったのはいいんだけど・・・


 情報が少なすぎる。


 まずこの世界に写真なんてものはないらしい。


 まあ、それはしょうがないとしよう。


 問題はミランさんにどんな人か似顔絵をかいてもらったんだけど・・・絵心無さすぎだ!!


 なんだ?!そのモザイク処理がされそうな絵は?!


 同じ感じで、攫った族の人相書きも書いてもらったんだが・・・まあ、結果は言わずもがな。


 というわけで、情報ほぼゼロの状態で街中を探すことになった。


 ちなみにだが、美咲には一度屋敷に戻ってミラさんに報告をしてもらっている。


 これミラさん聞いたら卒倒しないかな・・・


 ある意味国のメンツ?もかかってそうだし・・・


 まあそういうのは私、あんまり詳しくないんだけど。


 ・・・こういうのって、あのガリ勉詳しいかな?


 不本意だけど後で聞いてみよ。


 とにもかくにも、今私は情報が何もない状態でずっとヴァローナっていう青髪の10歳くらい少年を探している。


 ・・・顔もわからないのにどうやって探せって?


 そこはまあなんとか背格好とか顔つきとか髪の色とかの特徴言って。


 そういえば最近知ったんだが、この世界では髪の色によって色々と使える魔法の種類とかがあるらしい。


 あくまでもその傾向が強いというだけらしいが、赤髪が炎系、青髪が水系、茶髪茶目が土系、緑髪が風系、黄髪は雷、金髪系は光系、紫髪は闇系の魔法が得意らしい。


 まあほんとにあくまでも傾向が強いっていうだけで、私なんかは光属性なのに赤髪だしガリ勉も炎属性なのに青髪だ。


 正直言って当てにならん。


 まああとはごく稀に黒髪も存在するらしいが、その人は大体適性の魔法なしか超越的な魔法を使えるようになるらしい。


 私たちも黒髪のままだったらそうだったのだろうか?


 普通に色ついちゃったからもう関係ないけどねー


 で、話を戻しまして。



 私と睦月は今街のいたるところで聞き込みをやっているんだけど————


「10歳くらいの青髪の男の子?う————ん・・・この街じゃあけっこういるからねぇ・・・似顔絵とかないと・・・あぁ~、すまん。これじゃわからん」


 デスヨネー。


 ダメもとでミランさんのあれ主人の似顔絵を見せてみたが・・・ごめん、おばちゃん無茶振りしたわ。


 どーすんの?!日が暮れちゃうよ?!


 探査型の魔法とかないのだろうか・・・


 あっても使えないと意味がないが・・・


「————あ、紅葉!見つかった?!」


 捜索を始めて1時間。


 私と睦月とミランさんは一度ウォーナット菓子店に集まった。


 結果はもちろん、何の手掛かりもなし。


 そろそろ日が暮れちまうぞ・・・


「ダメだ—。見当たらん。目撃情報すらない・・・」


 ここまで何も情報がないとは思わなかった・・・


 さぁて、どうしたものか。


「————うぅ、私がもっとちゃんと見ていれば・・・」


「ミランさんそんな落ち込まないでください。まずは見つけ出すことに専念しましょう?」


 睦月、ありがとう。


 こういうとき、私はなんも気遣いできないからな・・・


 美咲や睦月がうらやましいよ・・・


 だいぶミランさん、精神にき始めているな・・・


「————これ、逆に賊の線から調べていくほうがいいかもね。ミランさん、その賊ってどんな人たちですか?」


 睦月に渡されたハンカチで涙を拭きながら、涙ぐんだ目で必死に何か喋っていた。


 だがすまん。


 かすれかすれで何も聴き取れん。


 要約すると、丸坊主の大男と、変なとさかみたいな髪型の大男が3人らしい。


 ・・・わかりやすい不良だ。


 しかしスキンヘッドかー。


 懐かしいなぁ。


 中学生の時一回ぶっ飛ばしてお義母さんに怒られたんだっけ・・・


 いやー、懐かしいわ~


「————それじゃあ今度はその賊・・・ていうか族っぽいやつら探しますか!また手分けして探そ?————あ、美咲!」


 お、ようやく到着か。


 となりにはミラさん。


 そして後ろにはミラさん直属の騎士たちがいた。


 ・・・街中の騎士団が総動員されると思ってたんだけど、そこまでしないの?


「———ミランさんですね?フォティア王国第一王女のミラ・フォティアです」


「アグア王国ヴァローナ・アグア第四王子侍従兼護衛のミランです。本日はこのようなことになってしまい誠に申し訳ごz————」


「———申し訳ございません!」


 み、みらさん?


 どうしたの、いきなり?


 ミランさんも困惑してるよ??


 あとあんたら名前すごい似てるね。


「———実は領内に海外勢力と密約を結んだ貴族がいるようで・・・おそらくそれが原因でこのような事態になってしまいました。国を代表し、深くお詫び申し上げます!」


ミラさん・・・



「顔をお上げください、ミラ王女!もとはと言えば、隣町で滞在のはずの我々がこの街に来てしまったのが原因です。ですので、王女は何も悪くはありません!」


「ですが———」


「あのー」


 二人とも、根が真面目過ぎる。


 いや、いいことなんだけどさ・・・


「ひとまず、ヴァローナさんを見つけ出すことを優先しましょう?・・・誰が悪いかはその後でもできるはずです」


「————そうですね。ありがとうクレハ。まずは王子を探し出さなくては」


「————王女・・・ありがとうございます!」


 ひとまずこれで時間のロスは減らせそうだ。


 さぁて、今度こそ見つけ———


「ねぇ、紅葉」


 後ろから、美咲が神妙な顔つき近づいてきた。


「どったの、美咲たん?」


「その呼び方やめぇい・・・蒼琉君が街に買い物に出かけたっきり帰ってこないらしいんだけど・・・・・・街で見てない?」

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