Ⅱ‐Ⅳ 王女様のアドバイス
「—————【シュグアレール】」
手慣れた手つき私は光の斬撃を山のように繰り出し、虎型の魔物に食らわせた。
魔物はうなり声をあげながら、一撃で地に倒れていった。
その横で美咲も水を螺旋状にさせ、魔物に突き刺していた。
「———うん。だいぶ慣れてきたかな」
遠征に出てから数日が経ち、私たちはフォティア王国東部の辺境の地にいた。
今回の遠征は、ただ魔王軍本拠地をつぶしに行くのではなく道中の魔族の討伐及び安全な経路を確保も目的としている。
でもって第一回の派遣は王国の東側の安全確保、すなわち東部遠征とのことだ。
五王国との国交が回復したと言っても、まだ道中には魔物や魔族がたくさんいる。
その脅威を少しでも減ららすのが第一優先らしい。
ミラさんの様子を見ている感じ、今回はあんまりすぐに魔王を倒す~とは思っていないっぽいし。
だって———
***
「ところで皆さんは、向こう側で戦闘訓練を受けていたことはありますか?」
1週間ほど前、王都に向かう道中でミラさんとお茶をしていた時、不意に王女様が聞いてきた。
「いえ、まったく。ぶっちゃけ私達ただの一般人だったので」
ミラさんはちょっと驚いた顔になったが、すぐさまいつもの笑顔に戻った。
「・・・・・・戦われるのは、怖くないのですか?」
「———どうなんだろ?私は『生き延びたい!』て気持ちでいっぱいいっぱいだったからなんとも・・・・・・」
「あんたはね?私は普通に怖かったんだから・・・・・・ただ、魔王を倒さないと、結局私たちは元の世界に帰れないと思うので、私は戦いに参加しようと思いました」
「真面目だね~渡邊さんは。私はいろんな生き物見てみたいからかな~」
雨宮が出されたクッキーをつまみながら話に入ってきた。
・・・コイツもだいぶ変わってるな。
「—————そうですか。・・・そうすると、すぐには・・・・・・」
ミラさんの真剣に悩んでいる姿に、私たちは彼女の真の“想い”に気づくことはまだ、できなかった。
***
「まぁ、すぐ魔王倒してこいって言われても無理としかいえなけどね~」
「もー、無駄口叩いてないで手を動かす」
隣では、倒した美咲が魔物の後処理をしていた。
この世界では、倒した魔物を放置するとまたそこに魔物が集まる習性になるらしい。
魔族の場合は特にないが、魔物は死体から発せられる“何か”吸い寄せられている・・・・・・というのが、司祭者さん達の見解らしい。
・・・・・・ぶっちゃけお国柄のせいか、宗教はちょっと怖い。
まあそれ以外にも理由はあるんだけど・・・
ちなみに死体の処理方法は、一か所に魔物を集めて神官が祈り捧げるらしい。
そしたら灰になって消える。
魔族も殺した後は同様だ。
何度か見ているうちにわかったけど、灰になって消えていくのを見ているとちょっと寂しく思う。
“彼らも生きていた”
そんな彼らの命を奪っていると考えると、胸に何も刺さらないわけがない。
それでも、私たちの危害を加えるのなら————殺す。
「————クレハさん。ちょっといいですか?」
「なんですか?ミラさん!」
私は軽鎧についた汚れをはたいて、ミラさんのもとへ近づいた。
余談だが、異世界転移者は皆衣食住をミラさんに面倒を見てもらっている。
今回の遠征での装備もすべて第一王女であるミラさんの派閥———第一王女派から支給されている。
ちなみに衣服と鎧は自分たちで選んだ。
丸一日使ってショッピングした。
あのときの男性陣の疲労っぷりはえぐかったなぁ。
いつまで続くの?て顔になってたし。
「クレハさんは魔法を放つとき、どのような術式を使って魔法を放っていますか?」
・・・ん?
「えっと・・・女神さまから教わったときは、“想えば”すぐ使えるって言われて・・・そのまま今までやってきたんですけど・・・・・・」
「・・・それは、他の方々もですか?」
「は、はい・・・・・・」
あんの女神・・・
嘘言ったのか?
「———それは、すごいですね。最初から疑問だったんです。魔術師になるのは基本、10年ほどかかります。なのにあなたたちは異世界転移し、女神の加護を得ただけで魔法を使えるようになったということですね?」
「は、はい。そうですけど・・・」
「この世界では、魔法を放つためには細かな術式を知ることが必要です。それを感覚で放つことができるなんて前代未聞です!!」
そ、そうなんだ・・・
ミラさんの目が輝いている・・・
「えっと、それで・・・・・・話って・・・」
「———!失礼しました!つい夢中になってしまい・・・それでですね?クレハさん、今斬撃状に魔法を連発しているじゃないですか?それを大きな一撃に変えることはできますか?おそらくそちらのほうが消費魔力を少なくできると思います」
なるほど。
今までのやり方だと効率が悪いってことか。
「ちょっと試してみますね?————【シュグアレール】!」
そうすると、私が想像した通り、大き目な三日月状の斬撃を放つことができた。
確かに、魔力の消費量も少し少なくできた。
「おぉぉぉ!ありがとうございますミラさん!!また何かあったら教えてください!!」
さぁて、楽しくなってきたぞ♪
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