Ⅱ‐Ⅲ 結成!魔王討伐隊——ちょっと恋バナを挟んで——

「では勇ましき異世界転移者たちよ。余はおぬしたちに援助は惜しまぬ。必ずや、魔王を倒してきてくれ」



 数日後。


 私たちは王都につき、フォティア王国国王、ティグリ・フォティアと面会を行い魔王討伐が決まった。


 なんかいろいろ端折られた気がするが、特に気にするな。


 ぶっちゃけ特に何も起こってない。


 ミラさんに魔法の使い方や騎士の人たちに剣の振り方を教わったり、王様やお貴族様に会うから社交マナーを学んだり、ちょっとお茶会(女子会)を行ったり、ミラさんが紅茶を持ってきたつもりでコーヒーだったり、私が騎士たち相手にポーカー(のようなもの)で金巻き上げたり(そのあと美咲にすごく怒られました)、あとは小泉が街に出て片っ端から若い娘に声をかけまくるという現実世界以上の狂気っぷりを見せてくれたり、それを友人の大橋が全力で羽交い締めを食らわせて留めたり、小林さんがなんかいろんな薬混ぜて調合したら爆発が起こって1時間くらいみんな幼児化したり、小鳥遊とあいつとちょっと仲がいい片岡がなんかタッグを組んで騎士団の部隊長らしき人と模擬戦やったら片岡の爆発魔法が強すぎたせいか部隊長さんが隣町まで吹っ飛んで行って王都につくのが遅くなったり、雨宮さんが白い子犬拾ってきて飼いたいって駄々をこねてなんとか許可もらったりとかあったけど、危ない目にはあっていないから特にない。というか時間がないため省略する。


「———ミラよ。そなたを魔王討伐部隊“カタフニア”司令官に任命する」


「————御意」


 ミラさんが総司令官か。


 知らないおっさんが当たるよりも全然うれしい。


 しっかしこのドレスどうにかならない?


 なんか、動きづらい。


「———我慢しなさい。あと少しの辛抱なんだし」


「そうはいっても・・・。やっぱり参加しないを選択すればよかったかなー」


「そういうわけにもいかないでしょ?こういうの、形式上必要なやつっぽいし」


 まあ、全部が全部わかんないわけじゃないんだけどさ・・・


 もう少し簡略化しない?


 鬼塚先生の話ほどは今のところ長くはないからまだマシだけど・・・・・・


「いや、多分こっちの話のほうが断然長いから」

 

 あれー?


 なんか感覚おかしくなってる?


 ま、あれだ。


 話の内容がつまんな過ぎて長く感じてるあれだ。


 この王様の話とかはまだ新鮮味があって面白く感じているのかも。


 逆に言えば、慣れたら飽きる。


「————そこの赤髪の異世界転移者よ、少し来い」


 ん?


 今私の名前呼ばれた?


「は、はい!」


 な、なんだ?私何か失礼なことしたか?


「・・・そこの青い髪の少年も来てもらえんか?」


 そういって王様は小鳥遊を指さした。


 小鳥遊も?


 なんだろう?


 よばれたアイツ小鳥遊も不思議そうな顔をしながら、私の隣まで来た。


 王様はしばらく私たちを見つめていたが、


「————もうよい。すまぬな」


 といって、私たちを下がらせた。


 ま、まじでなんなんだ?


「では、これにて謁見は終了とする。・・・・・・今日はゆっくり休み、英気を養うと言い」



***


「はぁ~、疲れた~」

 

 1時間後。


 ようやく私たちは王国から与えられた豪華な部屋の一室に帰ってきた。


 私は着ていたドレスを椅子に投げかけ、下着姿のままベッドにダイブした。


「こら!はしたないでしょ!」


 ・・・お母さんかな?


 ちなみに、私と美咲は同室だ。


 というか私が頼み込んだ。


 事情はまたおいおい。


「ちょっとくらいいいじゃーん・・・・・・ヘクチッ!」


「ほら、風邪ひくでしょ~、さっさと着替えなさーい」


「はーい」


 ・・・美咲、将来ほんとにいいお母さんになりそうだよねー。


「聞こえてるわよ。心の声が」


 毎度思うが何でわかるの???


「何年に付き合いだと思ってるの?伊達に紅葉友達やってないよ」


 それはもう私達熟年夫婦のような・・・!


「なんでそうなる!・・・それとも、恋バナでもする?しちゃう?」


 しまった。


 変なスイッチ入れてしもうた。


「いや~久しぶりね~紅葉と恋バナなんてするの。最後にしたのは、中二の時だっけ~?・・・あのときは蒼琉君のこと、追っかけてたでしょ?」


「・・・・・・昔の話だよ。今は別にどうでもいい」


 私は拗ねたような顔をしてベッドに潜った。


 本当に、アイツ小鳥遊のことはどうでもいいのだ。


 













 ただ昔仲が良くて


 一緒にゲームして


 喧嘩して


 笑いあって


 私が勝手に小鳥遊に惹かれていただけだ。


 







 今ではもう、過ぎた話だ。


「アイツは今はもう受験のことが一番大切なんだ。私たちのことなんて二の次でどうでもいいんだよ・・・きっと」


 久しぶりに小鳥遊・・・・・・いや、蒼琉のこと話した気がする。


 馬鹿だなあ、私。


 話したところで


「・・・蒼琉君は私たちのことを気にしていないわけではないと思うよ?」


 ・・・そんなわけ———


「今度、一回蒼琉君と話しなよ?————話してみないと、想いは伝わらないし、わかんないよ?」




***


 翌日。



 ついに魔王討伐部隊“カタフニア”メンバーが招集された。


 指揮官にミラ・フォティア王女。


 王国騎士団より派遣された騎士たちが20名。


 地方の貴族たちから招集された腕利きの騎士が30名。


 一般市民で構成された騎士団、ロッシュ騎士団より50名。


 王女近衛兵5名。


 そして———異世界転移者9名。


 総勢115名でティグリ国王による第1回魔王討伐遠征が行われるのであった。

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