ギャル文化への対処法ってなんですか
第10話
昨日のことのせいで寝不足です。足元もフラつきますし、足取りが重い気がします。
早く行かないと、遅刻なんてしたら大変です。
学校近くの通りに足を踏み入れると、聞き慣れた声が聞こえてきました。
あの……朝イチですよ。
「慧理先輩〜〜!! 今日もビジュ最高です!!
昨日の会話を私が見ていたなんて微塵も思っていないのでしょう。
いつもと変わらぬギャル文化が、花蓮さんの口から飛び出します。
でも、もう、いつもの光景じゃなくなってしまいました。
「はいはい……」
そう返事をしましたが、心臓は全く落ち着いてくれません。
自分でも分かるぐらいドッドッドと激しく鳴っているのが分かります。
ああ、もう、否定することができません。
「あれ、塩度が低いですね。付き合ってくれるんですね!」
本当にこの子は、人の気持ちも知らずに。
……それが花蓮さんですけど、今となっては本当に複雑な心境にならざるを得ません。
「……」
なっ、何をみてきてるんでしょうか。
いつもに増して近い……気がついてないからって……
「先輩顔がマジで赤いです! 保健室行きましょう」
「え?」
思わず声を出してしまいました。
自覚がなかったのです。
自分の顔の変化に。
自分の顔に触れてみると熱い。
「担ぎますよ」
前に一瞬で回り込んできたと思えば、一瞬で背負われ……ちっ近すぎます。
「はっ、走れますから」
花蓮さんの方が小柄。
絶対に重いに決まってます。
それに私は走る元気があります。
転んでしまいます。
身長的に考えて私の方が重いに決まってるのですから。
「ダメです。もうすぐ着きますから」
景色を見たらそんなのわかります。
それに、校庭から保健室はすぐそこってことぐらい分かってます。
重いに決まってるっていう理由は言い訳です。
私が落ち着けないだけなんです。
花蓮さんのことだから深い意味はないのでしょう。
ギャルならではの距離感からきているのは、考えなくてもわかります。
でも、期待しちゃうじゃないですか。
ありえないのに、なんて愚かなんでしょう……
「先生っ!! 先輩熱出したのでお願いします」
ああ、意識が朦朧としてきました。
熱のせいでしょうか。
視界が滲んできます。
「秀豊さん珍しいわね、分かった小鳥谷さんは教室行きなさい」
「はっ……はい……」
待って、まだこのままでいてほしい……。
行かないで欲しいです……
「先輩下ろしますよ」
いつもと違う、それだけは、確信できる花蓮さんの声が心に染みていきます。
これはギャルのいい文化なのでしょうか。
私ならこんなことするわけないのですから。
「先輩、ベッドで寝たほうがいいですよ。袖、離してくださいよ〜」
そんなわけない。
そう思って、ゆっくり視線を動かして自分の手を見てみると、本当に言われた通り花蓮さんの袖を握っていました。
慌てて手を離すと、ストンとベッドに降ろされました。
絶対こちらの方が寝心地がいいのでしょう。
そんなの回転してない頭でもわかります。
それなのに、あのままが良かったとより強く感じてしまうのは、恋のせいでしょうか。
「あっ……ありがとうございます」
それを発した後、疲れ切っていたのか、スっ、と私は眠りの世界に落ちました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます