噴火するやつ
@112423809650
第1話
僕の名前は田中勝、つい1週間ほど前から窮屈な実家を抜け出してこの自然豊かな島へ引越しのんびり暮らしていた。
が、
今から僕の越してきた島の火山が噴火するらしい。
唐突にこんなことを言われて困惑するだろうが僕だってまだ状況を飲み込めていない。
このことを知ったのはつい先程、島中の連絡用スピーカーから慌てた声が聞こえてきた時だった。
「この島に住んでいる皆様へお知らせします!!この島の火山がいきなり活動を初めもう間もなく噴火するようです!!落ち着いて対応してください!!」
そんないきなり噴火することがあるのか普通、前兆とかあるだろ、管理はどうなっているんだと思ったがまずはともかく避難しなければならない。
とりあえずスマホ…財布…等の最低限の荷物を持ち出し家を飛び出したはいいものの慌てていたせいか肝心なことを考えていなかった。
……どこに避難すればいいんだ?
避難場所についての案内を貰ったこともなければ今知らされる様子も一切なかった。
情報を得るためにほかの住民にするが皆恐怖のせいか正気を失ったかのように踊り狂っておりとても話を聞ける状態じゃなかった。
「とりあえず船に乗るって島から出る…べきだよな」
思いついたまま海の方へと走り出した。
走り出してから10分ほど経ち港が見えてきた頃……
ドカーン!!という爆音とともに港の船が爆破されていくのが見えた。
慌てて港に駆け寄り辺りを見渡すと、船を爆破している船員の姿が見えた。
「避難方法を潰すなんて何をしているんだ!!」
思わず声を荒らげて船員に怒鳴りつけた。
するとそいつは
「これが最善だ、こうすれば助かる」
なんて言って踊り出しやがった。
完全におかしくなったのか???
もう時間が無い。話してなんていられない。
僕は次の手を考えながら港から離れた。
避難手段を失った。こうなったら、穴を掘ってその中に隠れるしかない…
それしか思いつかなかった僕は急いで家から大きなスコップを持ち出し一心不乱に穴を掘った。
掘り続け、掘り続け、ようやく僕一人が入れる穴が完成したところで島の火山が噴火した。
急いで穴の中に入りできる限り穴の上を砂で埋め、じっと救助が来るのを待つことにした…
しばらく経ち、声が聞こえ目を覚ますとそこには前と同じ平和な島があった。
助かったのか…いや、さっきのは夢だったのか?と疑問に思いながら隣人に話しかけるとそいつはすごい形相で睨み返してこう言った。
「お前のせいで、みんな死んだんだ」
「お前がしきたりを守らなかったせいで」
「お前のせいで…」
気がつくと僕の周りには鬼のような形相の島民達で溢れかえっていた
「僕が何をしたってんだよ!!!」
そう問い返すと島の長が現れてこう告げた。
「この島では火山が噴火する時、全ての文明の利器を捨て、踊ることで神に祈りを捧げることで鎮ていただくことになっている。お前にそのしきたりを伝えるのが遅れていたのだな……」
………つまり、僕たちはもう火山の噴火で死んでいて、僕がスマホを捨てていれば…踊っていれば……みんな死なずにすんだのか……??
「ごめんなさい…ごめんなさい………」
謝ることしかできないまま、僕たちはそのままあの世へと送られた。
噴火するやつ @112423809650
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