第12話「おかえりなさいの合図」
【当日】
ユイ、ミサキ、サキ、ハナ、アカリ、レイ、ナナミ、カナ、アヤ、ヒナタ、コハル。
それぞれ異なる場所で、個々に奇妙な行動をしていた彼女たちが、
今、一つの家のリビングに集まっている。
カチャカチャ、料理の音が響く。
皆が協力し、楽しそうに飾り付けや料理の最終準備を進めている。
「もうすぐ、時間だね!」
ユイの声が弾む。
「サプライズ、成功するかな!」
コハルが、ピョン、と跳ねる。
会話が弾む。
部屋の壁には「HAPPY BIRTHDAY」のバナー。
キラキラと輝く。
年代ごとの写真が飾られた年表が、
壁一面に広がっている。
パタパタと、風で写真が揺れる。
リビングには、各話で登場したアイテムが
自然に、しかし意味ありげに配置されている。
プレゼントの山には、
ユイがラッピングした足ツボ器。
庭には、ミサキが直した柵の隣にベンチが置かれている。
テーブルには、サキの漬物。
ヒナタが選んだ煎餅も並んでいる。
新しい眼鏡が置かれたサイドボードには、
ナナミが書いた「大切に!」の付箋が貼られている。
ソファの横には、アヤが見つけた絵本。
窓からは、コハルが磨いたスプリンクラーと
手入れされた花々が見える。
彩り豊かな花々が、風に揺れる。
カナが笑いながら皆に囁く。
「いやー、私たち、今までやってきたこと、
もし誰かに見られてたら、
絶対変な誤解されてたかもね……。
でも、全部ぜんぶ“ただの準備”だったんだからね?」
クスクスと、皆が笑い合う。
レイが温かい目でその様子を見守る。
アヤが優しい声で加える。
「本当に……○○さん(祖父の名前を伏せた呼び方)のために、
みんな頑張ったんだもんね」
その言葉に、皆の表情が引き締まる。
笑顔の中に、真剣な光が宿る。
ユイが時計を見て「そろそろ、時間だよ」と声をかける。
全員がドアの方を向いて、息をひそめる。
シン……と、静寂が訪れる。
心臓の鼓動だけが、ドクドクと響く。
玄関のドアが、ゆっくりと開く音がする。
ギー……。
緊張と期待が部屋に満ちる中、
杖をついた人物のシルエットが映る。
部屋の明かりが、フッ、と消された。
全員が固唾をのんで見守る。
人物(祖父)が部屋に入った瞬間、
パッ!と明かりが一斉につく。
「お誕生日おめでとう!」
全員で、声を揃えて叫んだ。
そこに立っていたのは、穏やかな笑顔の祖父。
彼は、壁に飾られた手作りの飾り、
テーブルに並べられた料理、
そして集まった家族一人ひとりの顔を
ゆっくりとゆっくりと追いかける。
彼の目には、震えるような光が宿り、
声にならないほどの深い感動の涙が溢れ出す。
ポロポロ、と涙が頬を伝う。
祖父の口元が、かすかに震える。
アヤは祖父に絵本を差し出し、
コハルは庭のスプリンクラーを指差す。
祖父は一人ひとりの顔を見て、
小さく「……ありがとう」と呟いた。
震える手で、アヤの絵本を受け取る。
彼の手には、第9話でアヤが見つけた絵本と同じ、
使い込まれた表紙の本が握られている。
その目が、懐かしそうに本を見つめる。
これまでの全ての「奇妙な準備」が、
彼の誕生日を祝うための、
家族からの愛情のこもった壮大なサプライズだった。
物語は温かい余韻を残してフェードアウトしていく。
部屋中に、温かい光と、家族の笑顔が満ちた。
---
エンドロール:
各話の「見せかけ」のシーンが短く流れる。
その下に「実際の行動」のシーンが小さく表示され、
全ての真相が明かされる。
最後に、画面にメッセージが映し出される。
ぜんぶ、ただの準備。
いつもありがとう。
ぜんぶ、ただの準備。 ~えっちなのは想像だけにして下さい~ 五平 @FiveFlat
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます