第8話「こんなに白くなっちゃった……」
【当日まであと4日】
カナが鏡の前に立つ。
美容室の練習室のように
ズラリと並んだ染料瓶。
髪に、何かを塗り始めた。
手袋をした手が髪を揉みこむ。
キュッ、キュッ。
ツン、と鼻を刺す刺激臭。
あたりに独特の匂いが漂う。
塗布された髪の色が、
徐々に変化していく様子がアップで映し出される。
期待と不安が入り混じった表情のカナ。
フゥ、と息を吐き出す。
塗り終わった後、鏡を見て、
「うわぁ……こんなに真っ白になっちゃった……!」
思わず声を上げてしまう。
その声は、驚きと少しの焦りを含んでいた。
「え、まさか……嘘でしょ?」
カメラが引くと、
カナが自宅で白髪染めの練習をしているのがわかった。
彼女は練習用ウィッグに染料を塗っていた。
ウィッグの髪は、見事に白に近い金髪になっている。
「完璧……のはずだったのに!」
だが、手に染料がついた状態で
自分の髪を触ってしまい、
一部分が思わぬ色に染まってしまったのだと判明する。
鏡に映る自分の髪の一部が、
ウィッグと同じ色に輝いている。
美容師の友人から
「人にする前に、まずは自分の髪でやってみないと」
と言われたことを思い出し、
苦笑いする。
「まさか、こんな形で練習になるなんて……」
カナは染まってしまった自分の髪を
タオルで拭きながら、
「うーん、この色じゃちょっと派手すぎるかな。
もっと自然な感じにしないとね。
あの人は、落ち着いた色が似合うって言ってたし……」
と反省した。
洗面台には、様々な色の白髪染めが並んでいる。
彼女の試行錯誤の跡がうかがえる。
美容道具箱には、
「○○(あの人のニックネーム)様用」と書かれた白髪染め。
その横には、「髪飾りコレクション」と書かれた、
手作りの可愛らしい髪飾りが詰まった箱がある。
あの人のために、腕を磨いておきたい。
だから、もっと、練習しないと。
---
次回予告:
「奥まで届いちゃった……」
暗闇の奥、手探りで進む彼女の棒。
絡みつく埃、そして微かな希望。
果たして、その先に掴む「宝物」とは!?
懐かしい声が、蘇る。
次回、
第9話「奥まで届いちゃった……」
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